第64話 クラスメイト その2

「へぇ~~、松田君もファッションに目覚めたんだ♪」


 誰とでも仲良く話す、二村さんは松田との会話を楽しんでいる。

 それを調子に乗った松田が、一歩踏み込んだ会話を、笑顔で二村さんに話し始める。


「そう、そう。だから、彩織ちゃん!」

「今度の休みに、俺をコーディネートしてくれない。彩織ちゃん♪」

「彩織ちゃんは、ファッションのセンスが有るから~~♪」


(松田の奴…。さり気なく二村さんをデートに誘ってやがる!?)

(それも、“ちゃん”付け!)

(これだから……陽キャラは!!)


 俺は二村さんの返答を気にしながら、少し離れた所で聞き耳を立てていた。

 二村さんと関係は出来たが、俺は松田とは親しい関係では無いからだ。


「ごめん~~。松田君!!(汗)」

「私は其処までファッションに自信が無いから、松田君をコーディネート出来ないよ~~//////」


「また、また~~」

「そう言っちゃって、彩織ちゃん~~♪」


「あはは……//////」


 二村さんは松田の誘いを困った笑顔で断った後、苦笑いしている。

 松田は陽気な口調で、じゃれ合いを求めている。


(二村さんは苦笑いしているが、松田の奴。二村さんを意識しての発言か?)

(まぁ……そうに決まっているよな!!)


 けど、松田は素直に諦めないようだ。


「じゃあさ、彩織ちゃん!」

「今度で無くても良いから、彩織ちゃんに自信がついたら教えて♪」

「僕、喜んで、沙織ちゃんにコーディネートされるから!!」


「その時に成ったらね、松田君!!」


 二村さんは和やかな表情で松田に言うと、それで会話は終わったらしく、松田は自分の席に戻って行った。

 俺が直ぐに二村さんに声を掛けたかったが、松田に目を付けられると、実は色々と不味い。


 松田は陽キャラパワーのお陰で交友関係も広く、学年一のDQNで有る、川本やその右腕、信濃とも関係が有る。

 川本のあだ名は『キッド』と呼ばれており、かなりのやり手で有ると、岡谷君から聞いた。


 信濃の名前は、信濃彗星すいせいと言って、大日本帝国海軍の正規空母で有った信濃と、旧海軍艦上爆撃機『彗星』を連想させて、不沈空母信濃甲板上に並ぶ、彗星編隊を俺の中で描写させた!?


 キッドは拳での会話をのぞむ人だし、彗星は名前の通り、本当に急降下爆撃をする位の瞬発力が良いらしい!?

 俺の名前は武蔵だが、当然勝てる相手ではない。

 実際、弩級戦艦武蔵も航空機に負けた……


 仮にキッドたちと対峙したら、武蔵はろくな攻撃が出来ない内に、彗星から先制攻撃を喰らい、たった数発で武蔵は轟沈するだろう……。完全に俺は名前負けで有る。

 主力の『キッド』は、傍観しているだけで戦いは終わるだろう!!


 そのため……川本・信濃との会敵かいてき・交戦は、絶対に避けなければ成らなかった。

 だが、二村さんを巡る戦いが始まろうとしていた……


 ……


 その休憩時間中に俺は、二村さんに声を掛けることは出来なかった……

 俺の中で、松田は脅威だと感じていたからだ。

 出来れば松田に感づかれること無く、俺は二村さんと関係を深めたいと思っていた。


 次の時間の授業中……


 俺はどうやって、二村さんと接触しようかと真剣に考えていた。

 授業の内容より、二村さんの方が俺の優先課題で有る。

 この時間は現代史の授業なので、多少授業が頭に入らなくても問題は無い!?


(松田が本当に……二村さんに気が有ったら、非常に厳しいな!)

(俺には松田グループに、対抗出来る部隊が居ない!!)


 松田、先ほどの声掛けからして絶対、二村さんに好意を含ませた声掛けで有ることは間違いないだろう。


(……俺と二村さんの親友関係を、10段階で表す事が出来たら、俺と二村さんの親友段階は恐らく、2~3段階ぐらいだろう……)


 松田と二村さんのレベルも、それぐらいだと予測出来るが…、陽キャラは押しが非常に強い!!

 今日は素直に松田が引いたが、今度は松田が女子たちを連れて、二村さんにグループで遊びに行こうと迫ったら、押しに弱そうな二村さんは折れる可能性が高い。


 二村さんは誰とでも仲良く話すが、伊藤さんの様な自我は弱く、押し通そうと思えば、押し通してしまえるだろう……

 俺は早急に作戦を練って、実行しなければ無かった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る