第42話 作戦の始まり! 

「到着~~♪」


 虹心は元気な声で、バスから“ぴょん”と降りる。

 口は達者な虹心でも、心はまだまだ“子ども”で有った。


 その点、小鞠ちゃんはワンピースの端を抑えながら、ゆっくりとバスから降りる。

 虹心も少しは見習え……

 俺たち三人は、無事にプリンモールに到着する!


「じゃあ、小鞠ちゃん!」

「今から、作戦開始だよ!!」


「はっ、はい!///」

「兄さんのために頑張ります!///」


 虹心が小鞠ちゃんに作戦合図をすると、虹心と小鞠ちゃんは俺の両脇に来てくれる!

 両手に花が形成される!!


「小鞠ちゃん!」

「腕は無理に、組まなくても良いからね!」

「転ぶと危ないし、私もしないから!!」


 虹心は和やかな表情で小鞠ちゃんに言うと、小鞠ちゃんは微笑みながら返事をする。


「はい! 分かりました!!」


 俺は本音を言うと二人に腕を組んで欲しかったが、それをすると『他の人の迷惑に成る!』と、虹心に言われてしまったし、三人横並びでずっと歩くのは、現実的に無理が有るので腕は組めなかった。


「兄ちゃん! 小鞠ちゃん!!」

「では、最初は映画からだよ♪」


 作戦の指揮者は虹心で有り、小鞠ちゃんは参謀、俺はお飾りで有る。

 今から実行される内容は映画鑑賞だが、虹心と小鞠ちゃんのリクエストで、現在大絶賛のアニメ映画『自滅の剣』を見る。

 国内過去最高の興行収入・動員数で有って、更に海外でも人気が有る。


 虹心や小鞠ちゃんは、同年代を主人公にした漫画等が非常に好きだが、俺はこのジャンルは好きでは無い。

 本音を言えば、洋画のB級アクション映画が見たかったが、虹心と小鞠ちゃんに反対されてしまった……


 券売機でチケットを買って、飲み物やポップコーン類の軽食も買って、上映されるスクリーンに俺たちは入る。

 上映まで、まだ時間は十数分有る。


 館内の座席も俺が中心に座り、左側が小鞠ちゃん。右側が虹心で有った。

 俺は先ほど買った、コーラをストローで飲んでいると……


「兄ちゃん、お口を開けて♪❤」


 虹心が嬉しそうな笑顔で言ってきたので、これは『虹心がポップコーンを食べさせてくれる!』と期待していると……


『ぼふっ!!』


 謎の擬音と共に、虹心は手に掴んだポップコーンをそのまま、俺の口に押し込んできた!?

 一気に入れるな! 虹心!!


「どう…? 美味しい?❤」

「大好きな妹からの、ポップコーンのお味は❤」


 館内で吐き出す訳には行けないので、俺はコーラを飲みながら大口で“もぐもぐ”する……。何とか飲み込んで、一安心する!!


「虹心! 一気に入れるな!!!」

「…あと少しで、吐き出す所だったぞ!!」

「せめて、一粒か数粒にしてくれ…。コメディでは無いぞ!!///」


 俺は小声で虹心に注意するが、虹心に反省の色は無い!!

 虹心は笑顔で、ポップコーン食べながら言う。


「でも、こうやって食べるのも美味しいよ♪」


 虹心は俺にした事を実演しているが、俺にした時よりも量は少ない!


(こいつ……絶対、ワザとやっただろ!!)

(これでは俺のためでは無く、普通の仲が良い兄妹に見えてしまうだろ!!)

(まさか! それが虹心の本当の目的!?)


 困った微笑みをしながら、虹心は言い始める。


「はい。はい!」

「じゃあ、今度は普通にするよ!!」

「兄ちゃんがポップコーンでせて、映画を台無しにされる位なら、普通にするよ!///」


 今度は数粒を手で掴んで、虹心は俺の口の中に入れてくれる!


(うん! やはり、こうでなければ!!)


「虹心ちゃん! 私にもください!!」


 俺と虹心がポップコーンを食べている姿を見て、小鞠ちゃんも元気な声でポップコーンを求める。


「小鞠ちゃん!」

「小鞠ちゃんは、兄ちゃんに食べさせて貰う?」


 虹心は“にやつかせ”ながら小鞠ちゃんに言った!

 虹心は本当に、悪戯心を忘れない子で有った!?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る