彩り

1. LIVE&BAR「BLUE MOON」

 四階建て雑居ビルの地下一階。

 看板は店先にOPEN代わりに置く…。

 LIVE&BAR「BLUE MOON」。

 今では滅多に触らなくなったドラムを叩いていた頃に、よくお世話になった場所。

音楽で幸せになれたら、と。

 そう思って音楽と向き合った筈なのに、大好きだった音楽が嫌いになった…。

 そんな時に、BLUE MOONココの支配人にBLUE MOONココで働かないかと誘われて、店長を始めた…。

「店長っ」

 人間関係にもギクシャクしていたこともあり、この忙しさにも少し救われている。

「店長さぁーんっ」

 自称・十八歳の彼は、実際のところ中学生だと思うくらいの幼い顔をしているのだが…。

「どうした…?」

 支配人からは、彼に深く立ち入るなとお触れがあるので聞かない。

 そうでなくても、立ち入らない…。

 只今、絶賛人見知り中の俺にはそもそもヒトに興味がない…。

「今日は何時にLIVEしますかって問い合わせが来てますっ」

 口コミで来店して常連になっていくお客が多いので、毎日何かしら演奏をしている。

 特に、時間を決めたりしていない…。

 演奏できるヒトが来たら演奏してもらったりもしている。

 ただ、楽しく演奏できる場でありたいと思っている…。音楽は楽しむものだから。

 音楽でなくとも、楽しんで生きたいとは思っている。

「営業時間内はやってますって言っといて…」

 微笑んで、彼を見ると…。

「だってさ、カケルさんっ」

 俺の方に受話器を向けていた…。って、カケルって…。

 もしやと思ったが、既にバイトの彼は固定電話の子機とともに店の中へ入って行った…。

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