【番外編その1】サナーリアを愛しすぎたシュワルツの偏った思考

私はシュワルツ・ゼルガ。国より侯爵位を賜っている。


我が侯爵領は、魔物の湧き出る暗黒地に隣接しているため定期的に討伐隊が組まれている。大体年に1回の討伐で事足りていたのだが、ある年に、例年とは違う時期に魔物が湧き出ているとの報告が上がった。


領地の騎士団で対応にあたったが、苦しい戦況だった。


王都の騎士団に遠征を願い出てはいるのだが、間に合うかどうか悩ましいところで…我が騎士団員たちはどんどん疲弊していっていた。


そんな中、近隣の侯爵領から助っ人として参上してくださったのが、サナーリアの祖父である『英雄』シン・ガーゾナー侯爵閣下だった。


我が国の英雄であるガーゾナー侯爵率いる騎士団は、さすがの統率力で次々と無駄なく魔物を討伐していった。おかげで、季節外れのスタンピードを収めることができた。


これでもかと感謝の意を伝えたが、侯爵閣下は豪快に笑って旨い酒の一杯でも振舞ってくれればいいと言ってくれた。

早速領内の酒をかき集め、その日は朝まで皆で飲み明かした。




そんなガーゾナー侯爵閣下と再会したのは、社交シーズンのある日に王宮で開かれた夜会会場だった。


閣下は、孫娘だというとても美しい女性を連れていた。私も卒業した貴族学院の4年生だという。サナーリアとはその時初めて会った。


一目惚れだった。


彼女の纏う空気がとてもきれいで、そばにいたいと、私をそばに置いてくれないか、と。気づいたらその場でプロポーズしていた。


私のことを少なからず気に入ってくれていた閣下は反対することなく、婚約はサナーリアの意思で決めることを勧めた。



そしてサナーリアは、私を選んでくれた。理由は、顔が好みだったそうだ。この顔に産んでくれた両親に感謝した。


そんなこんなで出会ってから1年が経った頃に婚約を交わし、彼女の卒業を待って結婚することになった。


心待ちにしていた卒院式だったのだ。


卒業生によるダンスイベントでは、その年の卒業生に加えて、呼ばれれば過去の卒業生も参加することができる。歴代では、親子でペアダンスを踊った年もあったそうだ。

私は、サナーリアとペアダンスを披露することになり、事前にいろいろと試行錯誤して最高のパフォーマンスで彼女の卒業に花を飾れるよう務めた。


もちろん、ドレスも私がプレゼントしたものだ。


私の緑がかったブロンドと深緑の目に合わせたドレスだ。とても美しく仕上がった。サナーリアがこのドレスを身につけるのを、とても楽しみにしていた。


当日、彼女を迎えに行ったとき、その姿を見て思わずため息を漏らしてしまった。


想像以上に美しかった。



「とてもきれいだ」


「ありがとうございます。シュワルツ様。」



そう言って頬を染めた彼女に口づけた。

義両親の前でやめてくれと言われるが、その照れるさまも可愛くておでこに、頬にと口づけていった。


私はまた、彼女に惚れ直した。




そんな極上の気分で参加したサナーリアの卒院式だったが、私以外に彼女の婚約者を名乗る者が現れたり最愛の人を性悪呼ばわりする女が現れたりと、退屈はしなかったが些か不愉快な思いをした。


サナーリアの生家である子爵家自体は、まあどうでもいい。彼女を性悪呼ばわりした女と私を差し置いて婚約者を名乗った男は許せなかった。



「さて、どうしてやろうかな」

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