フランス文学。翻訳詩集。月下の旅人

原氷

マラルメ「あらわれ」

月が悲しむ。熾天使たちが泣いて、夢見心地、指には弓を、蒸発していく花々の静けさの中、花冠の蒼穹の上を滑りゆくヴィオロンの白き忍び音を引き出している。

――あれは初めての祝されたキスの日。

私の夢想は自らを苦しめ、悲しみの香りに巧みに酔い、また後悔もなく失望をそのままにして。

それを摘み取る心の中の夢を摘み取っていって。

私はさまよっていた、古くなった歩道の上に目を泳がせ

その時、髪にかかった太陽と、道のさなか、夜の中、君が私の前に笑いながら現れた。

私は見たと思った、光の帽子を被る妖精を

ないがしろにされた子供の美しい眠気の上を

通り過ぎ、不器用に閉ざされた彼らの手をいつもそのままに

良き香りのする星々の白い花束を降らせて

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る