俺にだけ冷たいイケメン女子と俺のことが大好きな悪霊どっちと付き合うって?~チェンジってないですか~
ねぎマイト
プロローグ イケメン女子と幽霊
「ギャルゲーの世界ってどうやったら入れんのかな」
俺は弁当にギチギチに詰められた冷たい米を頬ばる。
「無理。諦めて」
米よりも冷たい返しをするこいつは隣のクラスの
短髪、長身、文武両道、品行方正、ダメ押しの超絶クールな顔面にスラっとしたモデルのような体型。どれをとっても隙がない彼女は生徒から教師陣、果てはPTA会長まで、この学校の全ての人から愛されているスーパー高校生だ。
高校が始まって1年近く経ち、クラスで浮いた存在の俺たちは空き教室でこんな会話を交わしている。失礼、会話ではない。ほとんどが俺の投げた球を彼女が受け続ける一方的なドッジボールだ。
「もしくは美少女転校生とか。うへへ」
「君には似合わない。あとその気持ち悪い笑い止めて」
「きもっ……俺、スキンケアは欠かしていないぞ?」
「今の時代、そんなのは当然」
「当然なのか……俺はもっと世の中の美容に対する普通を勉強しないといけないな……
──ん?それまたファンの子から?」
俺は彼女の後ろに積まれた煌びやかな包装たちを指さした。
どうやら彼女にはファンクラブというモノがあるらしく、彼女の周りにはこの昼休みを除き、常にそのファンクラブ会員の取り巻きがいる。
「バレンタインだから」
「バレンタイン以外でも貰ってるだろ……。いや~でもチョコか~いいな~」
「君はもらったことがなさそうだね」
「ぐっ」
中々いいパンチを持っている。
「もらったことぐらい……あるし」
「強がらなくていい。君がたとえモテない哀れな男子でも私はどうだっていいからね」
「いやほんとだよ!?どうしても俺がモテないことにしたいのか!?」
実際、本当だ。昔、ある女の子からチョコを貰ったことがある。
「……ちなみにいつだい」
「………………幼稚園の頃」
「そうか……すまない。その、ハンカチ使うかい?」
「ありがと」
地獄のような空気を耐え切り、その後は午後の授業を受け、なんとか放課後までありつけた。
俺はいつも通り、自転車置き場から愛車を押して、塩谷へ送られる黄色い声を背に校門を一人でくぐる。
うーん。今日は一段とうるさいな。
「あっ……待っ。ごめんね君たち、少しそこを」
後ろで何やら塩谷が困っているが、俺にはどうすることも出来ない。ごめんね。
「
いつもと変わらない帰り道。
小学校の前を通り、園児が遊んでいる公園を横切って、長い登り坂を汗で流す。そうすると住宅街の中にある古風な家に着く。それが俺の家だ。
「ただいま~」
「おかえりなさい!
家に帰ると女の子が明るく俺を迎えてくれた。豊満な胸にキュッと引き締まったウェスト、極めつけの見るもの全てを引き込むような明るい笑顔を持つこの子は俺の家族ではない。でも、許嫁とか幼馴染みたいなギャルゲーのヒロイン的存在でもない。
彼女は俺の体をすり抜け、後ろから俺の肩に両手を置いた。
「今日も元気に憑りつきますね!」
「やめて?」
彼女は幽霊なのだ。
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