第47話 魔物退治
とりあえず臆病者のアレスは村に残して、私達は魔物が出たと言う橋の元へと向かう。
感知魔法を使うシャクナは結ったおさげをピンピンさせながら
「感じるよ!もうすぐ!橋の下にいる!あいつらそこから襲ってくんの!」
橋の下から?
私は魔物学で魔物達にも家族や番で巣を作る個体がいて巣に近づく者を警戒して凶暴に襲いかかると習った事があった。
今は冬なので魔物の繁殖期だし橋の下に巣があるのかもしれないとニルス様に耳打ちすると彼も同じ事を考えていたのか、
「多分そうだと思う。よく覚えてたな。イサベルは優秀だ」
と褒められ嬉しい。
「何が?ねぇ、何の話ぃ?」
とシュクナが拗ねる。
「……エイビン…橋の下に巣があるようだ」
「え?…そ。そうなんだ。それで襲ってきた?」
「多分な…。気が立っているんだろう。近づいた者は噛み付かれて当然だな」
「巣を…攻撃したら襲われる…近寄っても…どうすればいい?」
とエイビンが震えている。本当に何故冒険者になった?
「どうすればって…防御魔法は使えないのか?」
とニルス様が言うと
「俺、攻撃専門…」
と言う。一応シュクナにも聞くと
「え?感知だけだよ!」
と信じられない事を言う。嘘でしょ?それだけ?
でも冒険者は学院を出た者ばかりではないし独学で得意分野だけ極める人もいると聞いたことがある。
「どうしますか?ニルス様」
「指輪の防御を期待するしかないだろ」
という。そうだわ。私達の危機に作動する婚約指輪があったわ!
「ギリギリまで魔物を引きつけエイビンが魔法で火を放ち、俺が一撃入れる。シュクナは感知魔法でもう一体を警戒しておくこと!イサベルは下がっているんだ!回復役が怪我をしては危ないからな!後衛に!」
と的確に指示され流石ニルス様と思う。
なんとか行けるような感じがした。
橋の下へと到着すると早速シュクナが反応して
「わ!来る!!一匹!!」
と言う。
見ると目が一つの魔物…あれはイーグルアイかな?一つ目の下に獰猛な牙とカエルみたいな胴体が跳ねて襲いかかってきた!!
「エイビン!!炎だ!!」
とニルス様が叫び指輪の防御魔法で弾きその隙にエイビンが慌てて炎魔法を持っていた杖から放つとイーグルアイが燃えて苦しみそこへ鞘を抜いた剣でニルス様が思い切り振りかぶり斬った!
『グゲエエエ!!』
と苦しんだ先からもう一匹が見えた。
「来るよ!!」
ともはや感知は遅かったがエイビンがえいっともう一匹に炎当て同じ様にニルス様がズバッとかっこよく斬った!!いつの間にかこんなにも成長して!!
「ふう…これで討伐完了か…」
と剣を納めるとこちらを向いたニルス様の背後にもう一匹が飛びかかるのが見えた!
「ニルス様!!」
「わっ!もう一匹いた!!」
とシュクナが遅い反応でニルス様は僅かに身体をずらしたが肩に噛み付かれてしまう!
「うぐっ!!エイビン!!炎を!」
「えっ!貴方が燃えちゃう!」
「今引き剥がして投げるからそこを狙え!」
とイーグルアイを掴み無理矢理引き剥がして上に投げた所をエイビンが炎魔法を放ち、ニルス様が再び斬った!!
「はぁ…」
と膝をつく。
「ニルス様!!」
大変と駆け寄り私は下手くそな回復魔法でとりあえず血を止める。
「もういないか?シュクナ!」
「う、うん!いない!…でも橋の下になんかある!」
と言う。
「恐らく巣だ!それを燃やすんだエイビン!」
「わ、わかったよう!!」
と皆で橋の下へ向かい巣を発見した!
「きゃっ!卵だ!気持ち悪い!カエルの卵でかいバージョン!!」
とシュクナは顔をしかめた。私は魔物の卵が珍しく一つサンプルにと思ったが流石にニルス様に止められエイビンにより全て燃やされた。
「…討伐完了だ!戻ろう!」
と言うとエイビンは震えて泣いた。
「怖かったけど貴方の言うこと聞いてたら勝てた!ありがとうございます!!アレスより余程指示良かったです!!」
「ほんと…アレス役立たず…もうパーティーはギルドに戻ったら解散ね…あいつマジあり得ない」
とシュクナも言うが貴方も感知速度遅かったのでもう少し練習してほしい。
*
村に戻り討伐成功を告げるとアレスは喜び金を受け取ろうとしたけどニルス様が
「これはエイビンとシュクナがわけろ」
と渡した。
「えぇー!?俺の分はないの?」
「参加しなかった奴に報酬はやれんだろ?」
するとエイビンは
「でも、ニルスさんがほとんど…」
と言うと
「俺はいらん!さっさと帰れ。手柄はお前達にしとけよ?俺とイサベルのことは言うな、いいな?倒したのはお前たちだ」
と念を押すとエイビンさんはうなづき、一休みするとギルドのある街へと頭を下げて帰って行った。
「はあ、疲れた。荷物を運んでまた向こうの家に…」
と言うから
「ダメです!ニルス様!これから肩の傷を見ます!!回復魔法は血は止まりましたけど私まだ下手なんで薬草でもう一度手当てしますから!!」
と言うと観念したのかニルス様は
「わ、わかったよ!」
と言いとりあえず借りてる部屋に入りニルス様が上半身を脱ぐ。いつの間にか引き締まった身体に身惚れてる場合じゃない。肩の傷口に噛み跡が有り痛そう。薬草を塗り込むと少し痛い顔をした。
「ごめんなさい我慢してくださいね」
「大丈夫…血は止まってるからな。傷口も数日で治る」
と言うニルス様。
「私が魔法下手くそでニルス様の綺麗な肩に傷がついてごめんなさい!」
「イサベルのせいじゃない…そんな辛そうな顔するな…」
と抱きしめられ赤くなる。
滑滑のお肌が!!直接!!
ニルス様がハッとして離れる。こっちも気付いたのか真っ赤だ。
「すまん、シャツはどこだ?あっ…」
シャツの肩口は当然魔物に噛まれて血も付いていた。
「あーあ…おじさん達のシャツを借りるしかないか…」
と言うのでクスクス笑う。
「おいイサベル笑うなよ!シャツから加齢臭がしても!」
と言うのでおかしくなった。
「ふふふ加齢臭!!」
と笑うと引き寄せられキスされた。ちょっと油断してたから驚いた。
「…可愛いからつい…」
と照れながら見つめられると
「そんな…ニルス様の方が…あのとてもカッコ良いです…」
何せ学園ではモテていたしあのシュクナも目がハートになっていたもの!!
小さな嫉妬にヤキモキしてるとニルス様が小さく
「ご、ごめんな…イサベル…大好きだ……」
と言われ始めて私達はとても深いキスを味わった!
「んっ…ん…」
と何度も何度も貪るように口付けられて頭がホワンとしてきた所でようやく解放される。
「ああ…すまない…つい」
と言い訳される。私は幸せになりニルス様に静かに抱きつき
「いえ…いえ…私達は婚約者ですので…」
と言うと…
「……だから大事にしたいのに…」
と髪を撫でられる。そこへコンコンと音がしてニルス様が慌てて離れた。とりあえずシャツを着て出ると手紙を持った村長がいた。
「邪魔して悪いのう。いつもの手紙じゃよ」
と渡されニルス様が
「ありがとうございます」
と受け取り、中に目を通すと
「イサベル!大変だ!どうやらレオポルト様とバルバラ様が許してくれたみたいだ!!」
と明るい顔をした!
「ええっ!?本当ですか?ついにアルトゥール様が説得を頑張ってくれて…」
と言うとニルス様は何故か苦笑いし
「…アルトゥールお祖父様は…全身骨折で入院したらしい。…レオポルト様がやったらしい。それでどうにか許してくれたというか気が済んだのか俺たちにもいい加減戻ってこいと。…正式に許すそうだ…」
「まぁ!本当ですか?」
「ああ……俺もレオポルト様に骨折の一つくらいさせられるかもしれないが…とりあえずハンの報告によると一応許してくれたみたいだ。まぁ改めて挨拶しないとな」
と少しだけ青ざめてニルス様は笑った。
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