第25話 初めてのデートは土砂降り
次の休みにデートの約束をしていて何となくソワソワした。私はとりあえず森へ行く準備をした。もしかしたら珍しいキノコが採れるかもしれないと大きな籠を持っていくことにした。後、ランチボックスだ。厨房に入り料理長に少し教わりサンドイッチを二人分用意した。
まぁ服は一応スカートにしてみたけどドレスみたいにふんわりしたものは着ない。普通の白シャツに下はスカートである。山歩き用の頑丈な靴で全くお洒落とは縁遠く、もはやデートなのか山菜採りなのかわからない。
しかしニルス様だって森へ行くと言ったしこれは仕方ないわ。森にお洒落していく方が馬鹿だと思う。
*
そして次の休みになった。空は曇っていた。
ニルス様は…馬を一頭連れてきた。
しかも洒落ていた!!どうしよう!馬鹿がいた!!
しかしニルス様は私の手を取り、馬に乗せると私の後ろに乗り部下達に大丈夫だから付いてくんなと何度も釘を刺してとうとう森へ向かう。一応剣は持ってきていた。
馬に揺られながら後ろからニルス様は
「お前デートなのに少しはお洒落したらどうなんだ!?初めてなのに。後、なんだ、その大きな籠!?」
と馬にくくり付けた籠を見てニルス様がため息を吐く。
「ニルス様こそ森へ行くのになんですか?その格好?もっと動きやすい格好じゃないとキノコとか採れないですよ?」
と言ってやると
「えっ!?キノコ!!?……はあ?」
と予想してなかったのか素っ頓狂な声が聞こえてその後ボソリと
「そうだった。イサベルは研究バカであった……」
とがくりとする声がした。でも馬に乗り背中にニルス様がいてくっ付いてるとドキドキした。
うーん?やはり好きなのかな?
丘の上にある森を目指した。この辺りに危険な動物はいないとニルス様は言い森へと馬でゆっくりと歩いた。小さな湖の近くの木に馬を止めて歩くと森の中に可愛らしい花が咲いており私は其れ等の名前と特徴を話して聞かせた。
「あれがアロガという花で茎が太く春から秋に咲くものです。薬にはなりません」
と言うと
「流石薬師になりたいだけあり…詳しいな!!」
と言う。
「こんなの常識です!」
と私は得意分野でえへんと胸を張ると石につまづき転びそうになったがそれをニルス様が助けて
「危ない!」
て腰を引かれ身体がくっ付き至近距離でニルス様の綺麗な顔が見えた。二人とも赤くなりパッと離れた。
ニルス様は
「危険だから手を繋ぐか?」
と差し出した。私はうなづき手を繋ぐ。
どうしよう。ドキドキする。
やはり好きなのかな?
でも背中に籠を背負っているからイマイチ何か変な感じだ。
少し奥に来ると木の根本にたくさんキノコが生えていた。
「お前の希望地点に着いたな。俺もこれ採るのか?」
「当たり前です!毒キノコはダメですよ?新種は教えてください!」
て張り切って袖をまくる。
「俺にはどれが毒やらわからん。後で仕分けしてくれ。俺はあちらの方を探す。お前も近くのヤツを採れよ?迷子になったら困るからちゃんと俺の目の届く所にいること!」
と注意される。私はうんうんとうなづき早速キノコやらを取りに行く。
ニルス様も私の姿を確認しながらキノコを採った。
*
だいぶ採れたので私は満足するとニルス様は腕まくりして土に汚れた手やらズボンの裾などで綺麗な服は台無しだった。
雨も降り馬を止めてる所にキノコを持ち急いで戻り湖で少し手を洗う。
「ち、不味いな。どこか雨宿りできる所を探すか」
と馬に乗り走ると洞窟を発見しその中へと入る。
馬も一緒に入り岩の出っ張りに引っ掛けておく。
するとビカアと雷が光り私は驚きついニルス様に飛びついてしまった。
「う…おい…平気か?」
「ご、ごめんなさい!」
と離れる。
その後何度か光り雨は土砂降りになった。もうピクニックどころではなくなる。
それに雨に濡れて少し寒かった。
ニルス様も濡れた服やら髪でい、色気が増していた。ドキドキしてたまらない。
あれ?やはり好きなのかな?
「イサベルこの雨じゃしばらく止まないぞ。寒くないか?」
「…寒いです」
と正直にいうと手招きされた。
「……くっ付いてれば少しは暖かいだろ?」
た言われる。ニルス様も私も赤くなるがでもくっ付いて見る。ドキドキしてやはり顔は下を向く。
ニルス様は私の肩を抱きジッとしている。
どうしよう…何を話せばいいの?
「イサベル…俺はキノコとか採るのは初めてだったぞ」
「え?そうなんですか?私はたまに採りに行きますよサラと護衛さんと」
と言うと呆れられる。
「お前の方が森に詳しそうだな。俺は小さい頃父上と狩に来たことがあるが…」
「動物さん可哀想」
と言うと
「わ、悪かった…もう、しない」
と言う。
「ごめんなさい?私といると面倒くさくないですか?」
「なんでだ?俺の気持ちを知っているくせに、そんな事思うかバカ!今だって一緒に居れて嬉しい。キノコ採りも楽しかった。お前といると何でも楽しい…」
そう言うと肩にある手に少し力が入る。
ドキドキして目が合わせられないけどとうとう綺麗な碧の目を見てしまう。
ニルス様は
「お前…いい加減俺のことを好きと口にしたらどうだ?」
と言われる。しかし私は恥ずかしく中々言えずにいるとニルス様は頰に手を添える。
あ…ヤバイ…どうしよう、段々とニルス様が近付いてくるんですけど!
「仕方ない…言うまでしてやる」
と言い
「え?…なんっ」
と言いかけるとキスされる。
急にされてビクっとして少し体を押し離れると追いかけてきてまた引き寄せられキスされた。
ひいいいいい!!
何度も軽く触れては離れる優しいキスをされたがそれだけで死にそうにドキドキする。
「…強情なヤツだな。早く言えよ…ちゅっ」
とキスを口の端にされても、もう限界だと私は観念する。
「わ、わかりました。やめてもう!保たないです!す、好き…認めます。ニルス様が好きです!」
と真っ赤になり言うとニルス様が嬉しそうに笑いギュッと私を抱きしめた。
「ああ…やっと言ったな?どれだけその言葉を待ったと思ってるんだ!バカ!」
と抱きしめながら言われる。
「遅くなってすみません…」
「お前は本当に直ぐに謝るな…。このバカ!」
「ニルス様も直ぐ私のこと悪くいう。バカとか何とか」
「う…それは…わかるだろ?本心じゃ…」
と少しぎこちなく言う。
「はい、ニルス様はいつもいつも照れ隠しでそう言ってるんですよね。マリアの時に散々聞きましたから」
「お前…ほんと…ムカつくな」
と言うと顔をあげられ見つめ合うとニルス様はまた私とキスをした。
雨が上がるまで私たちは洞窟の中でくっ付いていた。
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