第10話 婚約者は猫アレルギー

それから少ししてニルス様はマスクをして学園に来たり何処かしらに怪我をしていたのでまた生徒の噂になってた。


そしてついに私の教室まで来て呼び出された。


「おい、イサベル。今日の放課後うちへ来い!」

態度全然直ってない。腕を組んでマスク付けて太々しさが増し、目を合わせない。

たぶん私の事が好きだから恥ずかしくてそういう態度を取っている事をもう知ってるのだが、貴方、幽霊のフリしたマリアの忠告を聞けよ!!

と思う。


「ええと…平日は課題が…」

と適当に言い訳すると睨まれた。だから忠告!


「猫飼ったんだよ!見にこい!」

と高圧的に言う。


「それなら休日でもいいのでは?どの道行きますのでいいではないですか?その時でも」

と言うとニルス様は


「いやだめだ!お祖父様は猫がお嫌いなのだ!!アレルギーが出るのだ!だから今日来い!」

と言われるがニルス様のマスク姿もそれアレルギー対策なんじゃないの?ニルス様自身も猫アレルギーなんじゃないの?

と思ったが黙って


「わ、わかりました、放課後ですね…」

と折れるしかなかった。


それから放課後になり生徒会の仕事を済ませたニルス様と公爵家の豪華な馬車に相席させてもらう。反対側にニルス様が座りムスっとしているが


「お前んちの馬車より快適で豪華だろ?凄いだろ?」

と自慢が始まる。たぶん照れ隠しなんだろうな。


「あの…どのような猫ちゃんなのですか?随分と怪我をされてません?」

あちこち包帯だらけなので引っ掻かれているのだろう。たぶん猫はニルス様に懐いていない。


「…灰虎模様の猫だ。メスだがお前より可愛いぞ。我儘だが。名前はシシリーと名付けた」


「シシリーちゃんですか…あ、ちょっと止めてください!」

と言い


「なんだ?」

と首を傾げるが私は馬車から降りて道に生えていた猫が好きそうな草を摘んだ。


「おい…それは…」


「これで猫と遊んであげたら喜ぶんですよ」

と言うと


「は、そんなこと知ってるわ!!」

と知ったかぶりをするニルス様。

絶対知らなかったよね。お坊ちゃんだもんな。

私も令嬢だけど引きこもって本たくさん読んでるから猫の好きそうなものくらい知ってる。


公爵家に着くとニルス様は猫部屋に私を連れて行った。


「ここだ」

と言い、開けるとなんか臭い。


「えっ!!?」

中を除いたニルス様はひっくり返った花瓶やらトイレ砂やらでゴチャゴチャになった部屋を見て青ざめたりくしゃみをしたりでメイドを呼びつけた。


「あら?先程まで綺麗にしてたのにね?シシリー様もどこへ隠れたのかしら?」


「おーい!シシリー!出てこいゴラア!!てめえ!!許さん!!」

と大きな声で怒鳴る。こいつ何も学んでいないバカだった。

私は先ほどの草を動かして暫くしたら影からシュッとシシリーちゃんがやってきた!

そして私の草と遊び出した。


「なっ…何いいい!?」

と本気で驚きそんな事で出てくるのかと言う顔をバッチリ見た。

ハッとしたニルス様は

掃除が終わったメイドを外に出してそっと椅子に腰掛け遊ぶ私と猫を見守った。


私の事を気に入ったのかシシリーちゃんが膝の上に乗ってきたので撫でてやると


「…お前猫に好かれるしか能力ないんじゃないか?」

と言う。どう言う能力よ。他にもあるわよ。

と言いたいが我慢我慢。


「ほら、ニルス様も撫でてあげて?」

と言うと嫌な顔をした。


「俺が撫でると逃げるし噛む、引っ掻く」

と言う。


「怖い顔とかしてるからですよ」

と言うと…


「くっ!…」

と言い無表情でそろそろ近寄りそろそろ手を伸ばして目を瞑り背中を触った。

シシリーちゃんは逃げずに私の膝で眠り出したのでホッとしてニルス様は撫でた。


「やはり魔女だな。イサベルお前。魔女の家系だから猫に懐かれとるんだ!」

と憎まれ口を言う。家系関係なくない?


「とにかく大声をだしてはいけませんよ?優しく接したらシシリーちゃんも懐いてきますから」

と釘を刺してやると


「お前に言われなくても知ってる!」

とふんと首を逆に向けた。


結局猫を可愛がり私は公爵家の馬車に送られて帰宅する事になる。門までぶつくさ言いながらも送ってきたニルス様にお礼を言うと


「別に見たくなったりあのフワッフワな毛をどうしても堪能したくなったら来てもいいんだぞ?魔女め」

と言う。どうしても素直になれないらしい婚約者のニルス様だった。

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