有能すぎる医者

@mia

第1話

 地元の病院では余命三年と宣告されていた母さんだったが、州をまたいだ転院後に現在の担当医と出会ったおかげでもう一年近く長く生きている。

 以前の医師は、ヤブだったのかもしれない。

 それまでいた病院ではガラス越しにしか会えなかったが、今ではベッドの横で会える。

 そして何より、母さんが気にしていた飼い犬にも面会できた。

 その犬はもう結構なおじいちゃんだったので、目やにやよだれで清潔とはいいがたい。

 前の病院ではそんな不潔なものを病院に入れるのは言語道断という雰囲気で会わせてあげられなかった。

 でもここの担当医は会わせてくれた。

 母さんは周りの人たちを心配させないようにする作り笑顔でなく、心からの笑顔を見せてくれた。

 そのことが母さんに良い影響を与えたのだと思うし、担当医もそのようなことを言っていた。

 何回か飼い犬に会わせたが、その後の検査結果は少し良くなっている。


 母さんが穏やかに過ごせるのはとてもいいことだが、いいことばかりじゃない。

 はっきり言うとお金がかかる。

 母さんの入院費用だけでも掛かるのに、お見舞いに行く交通費も馬鹿にできない。

 収入と支出を計算したら、後一年前後でお金がヤバくなる。

 それとなく担当医にお金の話をすると、事務の担当者を紹介してくれた。

 低金利の融資があると教えてくれ、いろいろアドバイスもしてくれたので、資料をもらって考えることにした。

 資料を読み込み計算すると、融資を受けても自分がもう少し頑張れば返済できる額なので安心できた。

 

 母さんの容体が急変したと担当医から連絡があり、ギリギリで最期を看取ることができた。

 相談した日から一年後のことだった。


 

 

 

 

 

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