出会ったからには別れたい
高久高久
第1話
公園で遊び疲れた俺は、ベンチに座った。
――遊び疲れた? いやいやおかしいだろ。公園で遊ぶとか。だって俺
落ちつけ、落ち着け俺。最後の記憶は何だ? えーっと
一人ヘコんでいると、誰かが俺の前に立った気配を感じる。
顔を上げると、そこに
そんな少女がこちらを見ており、顔を上げた俺と目が合う――瞬間、心臓が跳ね上がる。いや、バックバクである。ドキがムネムネ、なんてボケかましてる場合じゃねぇ。心臓の鼓動が
――俺はこの光景を知っている。何度も何度も、プレイしている間見せられた。
――ここ、
んで、目の前の泣いている娘、ヒロインじゃね?
気づいたらエロゲ世界に入っていたでござる。普通なら喜ぶ状況かもしれない。何て言ってもエロゲなんだし、お約束の『ゲーム知識でヒロイン攻略確定やんけ!』となるんだろうが、このゲームはいかんのや。ジャンルに問題がある。
――このゲーム、
『ゲーム知識使えば回避出来るんじゃね?』と思うかもしれないが、ライターの
しかもこのゲーム、ヒロインがこの娘しかいない。更に
最悪な事にこのゲーム、純愛モノとして売り出しやがった。見た目だけならヒロインは
諦めきれないプレイヤーも『何とか回避ルートは無いのか!?』と徹底的にプレイしているが、結局見つかっていない。その結果『無間地獄』と呼ばれることになる。
そんな
――やべぇよ、やべぇ。これどうする? どうすりゃこの
うん、俺別にこの娘好きじゃないんだわ。あくまで見た目的な物が
この娘、大人しい庇護欲を掻き立てられるタイプで、ゲームの主人公はそこで
しかし
さて、穏便な別れの為に状況を整理しよう。今ヒロインが泣いているのは、迷子になったから。引っ越してきたばかりで、帰り方がわからないのだ。
ここで本来の主人公はこの娘に一目惚れし、家を探す手伝いをしている内に仲良くなる。そこから縁が出来て、所謂幼馴染という関係になる。そして成長して他の男に寝取られる――と。
なら『
ちなみに逃げたフリをして
となるとガン無視はあり得ない。だからと言って親切に家を探して(探すも何も知っているのだが)、変に縁が出来ても困る。
色々と考えた。あれこれ悩んだ。無い知恵振り絞った。その結果――警察に任せる事にした。うん、別に俺が手を尽くす必要無いよな。交番も近くにあるし、流石にお巡りさんなら任せても大丈夫だろう。
ヒロインと手をつなぎ、交番へと引っ張るようにしてつれていく。その間ずっと俺は
その後は特に何事も無く交番へ到着。優しそうなお巡りさん(女性警官だったので何事も無いだろう)に彼女を引き渡し、名乗りもせずに立ち去る。彼女は何か言いたそうにしていたが、徹底しての
こうして
「なんでや……」
翌日、友達に誘われ遊びに行った先でばったりと遭遇してしまった。そう、
遭遇して、彼女はすぐに俺に気付いたようで嬉しそうに顔を綻ばせたかと思うと、何か言いたそうにもじもじしている。そんな姿がちょっと可愛いと思ってしまった。いかんいかん、絆されて待ち受けているのは
「あれ、誰その子ー? ともだちー?」
俺の後ろからひょっこり顔を出す友人。ゲーム中に立ち絵のあるキャラで、見た目は女の子(しかも可愛くて性癖にもどストライク)なのだが、騙されてはならない。こいつは男だ。しっかり寝取り野郎にもなるのだが、ネットで炎上し批判されたライターが開き直って『純愛ルートです』とこの友人と
その友人を見て、彼女は
「いや、友達じゃな――」
「そう、友達! 一緒に遊ぶの!」
否定しようとしたら被せられた。そして俺の手を握って、強引に引き摺って行った。抵抗なんてする余裕も無く、ぽかんとする友人を置いて俺は彼女に
何でや。穏便に別れたやないか。アレか? 出会った時点でフラグ成立なのか? それじゃ逃れよう無いじゃん。だって
――その後、彼女の家で何をしたのか覚えていない。最後の方で「私、あなたのお嫁さんになるから!」と
――いやいやいや! おかしいよね!?
――俺は知らない。
この後、ヒロインは寄ってくる数多の寝取り野郎共を、自ら返り討ちにする事を。
『
――
――この時の俺は、まだ知らない。
出会ったからには別れたい 高久高久 @takaku13
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