そのすべてが初めてのドキドキで

一陽吉

出会って気づいた

 え。


 銃声?


「危ない!」


 うあっ。


 とびこまれて倒された。


 パン、パン、パン。


「ぐわー!」


 向こうにいる男の人が倒れた。


 手にはサブマシンガンを持っていて、血が出てた。


 だけど。


 ちょっと動いているから、まだ生きているみたい。


 そして、その男の人を撃ったのは、私にとびこんだこの人。


 サングラスをかけ、パンツルックをした人だ。


 右手にハンドガンを持って構えているし間違いない。


「大丈夫かい?」


 流暢りゅうちょうな日本語。


 金髪のショートカットで白い肌をしてるから外国人なんだろうけど、他にもいろいろ精通してそう。


 えっと、こういうのは職業でいうと、エージェント?


 そんなかんじのやつだと思う。


 そういえば。


 E国のお姫様だかが日本に来てるんだっけ。


 確か、このデパートも視察に訪れるって聞いたけど、それは明日じゃなかった?


 予定が変更になったのかな。


 分かんないけど、たぶん私、テロに巻き込まれたんだ。


「は……、はい。私は大丈夫です」


 考えてたら返事が少し遅れちゃった。


「それは良かった」


 サングラスをしているから見えないけど、ウインクをして言ったみたい。


 意外と明るい性格なのかも。


「私だ──」


 その人、視線を移して見回しながら、機器を使わないで誰かに連絡してる。


 ということはナノマシンを使った通信。


 限られた人にしか使えないものだから、それだけで特別なのが分かる。


 あ、警備の人らしい二人組が撃たれた男の人のところへやって来た。


 手当をしつつ確保するようね。


「いちおう、おさまったようだ。立てるかい?」


 先に立ち上がって左手を差し伸べてくれた。


「ええ」


 きれいな手。


 それに、あたたかい……。


「それじゃあ、私は失礼するよ」


 そう言うと、その人はさわやかに去っていった。


「……」


 強さと優しさを持った、紳士的な


 とても素敵だわ。


 そういうのは男子のもので、例えばクラスメイトの貴士君かなとか思ってたけど違う。


 いま分かった。


 私は私と同じ、おんなが好きなんだ。


 あの人とはもう会うことはないかもしれないけど、私、恋愛をするならああいうひととするんだ。


 そう、恋愛を……。


 ああ、どうしよう。


 胸のドキドキが止まらない!

 

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そのすべてが初めてのドキドキで 一陽吉 @ninomae_youkich

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