4 いつものカフェで

『なあ、今すごく大事な話があるからさ、いつものカフェ、来てくれねえか?』

いつもの父さんの声。

大事な話ってなんだよ。

「…いいよ」

しょうがねえ。

告白するのは今度にするか。

『よし、すぐ来てくれよ』

「はい」

電話を切ると、ちょうど足積さんも電話を切ったところだった。

「あのね、これから用事があって。何か言いかけてたらしいけど、ごめん、そっち先に行くね。言ってくれるの楽しみにしてる」

「ああ、俺も用事が出来ちゃって、言うのは今度にする」

「うん」

「また明日。じゃあな」

「じゃあね!」

手を振り、足積さんの背中が遠ざかっていった。


いつものカフェとは+777というカフェだ。

いつも俺や父さんは、二人で行っている。

…え?母さんだって?

……知らねえよ。

だって、顔見た事ねえから。

俺が生まれたと同時に、母さんは亡くなったらしい。

もし少しだけ顔を見ていたとしても全く覚えていない。

歩いていると+777に着いた。

チャリンチャリン……。

ドアを開けると、すぐそこに父さんと見知らぬ女の人がいた。

誰…?この女の人。

「達哉、ここに座りなさい」

父さんが自分の隣のところを軽く叩く。

ありがたく座らせてもらった。

「ねえ……父さん、この人誰?」

小声で耳打ちする。

「えっとね…達哉の母さん。といっても、本物じゃなくて、父さんが新しく結婚したんだよ。」

一瞬俺のホントの母さんかと思った。でもこんなに美人だったら俺もう少しイケメンだった気がする。

「ふうん…この人が母さんか……。」

「あのな、この人にも子供さんがいてな。お前に義理のきょうだいができるんだ。」

「きょうだいって……女?男?」

「同い年。誕生日でするとお前が兄。その女の子が妹。だから兄妹。」

へえ。さぞ可愛いんだろうな、俺の妹は。

自慢の妹になりそうだ。


チャリンチャリンチャリン……


……え。


あっちも目を大きく見開いている。


そう、このカフェに入ってきて、目を見開いているのは、今さっき会った、あの人だった。


左手で口元を隠す。

これは驚いた時の足積さんの癖。

壁に凭れ掛かる。

これも驚いた時の足積さんの癖。

え……。

何でここに足積さんがいるんだ……?

いや、分かってる。

答えは一つしかない。


________俺の妹は、足積さんだ。

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