「いい父親ではなかった」――この一文にすべてが宿っている。
誰かに赦されることも、償えることもない。ただ「間に合わなかった三分」を抱きしめて語る。
戦争文学でありながら、英雄譚ではない。語り手は常に迷い、逃げ、そしてほんのわずかに、誰かの顔を思い出す。
父とは、語りとは、倫理とは何か。
書かれたことよりも、書かれなかった余白にこそ、文学の重みが宿っている。
会えたらいいな、という願いと、会えなかったんだろうな、という絶望。このどちらも読後感に感じられる作品は、なかなか存在しない。
率直に、面白かったです。