「先輩と兄貴」

憧れの

忍さんや徹さんの

車に乗り込むのは

ガキながらの

少し誇らしげがあった

中はシトラスの香で

白いファーが敷かれている

後ろのリアガラス

一面には日の丸の旗

新しく買った

忍さんのシーマも

徹さんのクラウンも

全てがカッコよく見えた

"バタン"

とドアを閉めた


『お疲れっす』

と挨拶をすると


徹さんと忍さんが

『流さんどうなった?』

『何もなければ多分来月になります』

『そっか、祝ってあげたいけど

ダメかな?』

『分かんないっすけど、

勝手に何かすると…』

『そうだよな、あの怖え親父さん

は離婚したの』

『あー、離婚しました、

今でも会ってますけど』


『先輩も忍も俺もめっちゃ

ボコられたからな』


『マジで怖かったですね、

兄貴の仲間が俺の目の前で

ボコられてんの小学生で見てて

隠れましたよ、何もしてないのに』


忍さんと徹さんは笑って

『そりゃ陸くんは悪くねーよな?

流さんなんて刺されたろ?』


『あー、あれはヤバかったよな、

親父に刺されたからよー、

入院してるから単車持って来い

って電話きた時引いたわ』


『いやいや、その後があるんですよ、

うちの親戚ってヤバい人しか

いないんですけど、兄貴悪いのと

つるむからって

横須賀のヤバい人の家に

預けましたからね』


『それでも突っ張ってたって

気合い入りすぎじゃね?』

『無理!!もう漫画の

世界じゃねーかよ』


『離婚してなかったら、

俺もボコられてますよ』


『流さんが伝説になるの

分かるよな、1年半以上

入ってるって長すぎだぜ?』


『ああ、普通は半年から1年だな

喧嘩しすぎだろ』


『でも兄貴探してるって

25歳位のヤバい人が家に

押しかけに来ましたよ』


『どうしたのそれ?』

『そん時親父いたんで

ボコられて、

その後どうなったかは

分からないんです、

2度と見なくなったんで』


『!?』


『流さんは親父さんを

殴ったりしなかったん?』


『いや、これも愛情って

分かってたんで、尊敬してますよ、

それは自分も一緒です』


『ほーっすげーな、

でも親父さんかっこよかったよな?』

『ああ、憧れるよ、カッケー親父、

怖えーから無理だけど、

流さんも陸くんも顔立ち

似てカッケーよ』


『いやー、親父には勝てないっす、

モテますけど』


『さすがにぶっとばすよー』


と3人で笑い話と懐かしい

話をしていると

兄貴が戻ってくるのが

リアルに感じた

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