dorobouneko!!「どろぼうねこ」~気になるあの子を横取りなんてさせないのです!~
霜月サジ太
第一話 私はこの子にゾッコンなのです!
「neko!?」
「そー、猫。にゃんこ」
おいおいおいおいなのです!こーんなにかわいい私が雷に打たれたように顔を歪めて驚愕の表情で凍り付き飛び出た言葉は思わず
「どどどどどうしたのです!?どこで拾ってきたのです!?」
ドはドラゴンのドなのです!もう、気が気じゃないのです!!
きっと雨の日の午後みかん箱に入れられて無邪気にみーみー鳴いているのをいてもたってもいられなくて連れ帰ってきてしまったけど、反対されて一緒に家出して、空き地の隅で膝を抱えて泣いているのを発見され許してもらってようやく家族に……とか、そーゆーハートフルなお話なのです!
そんな心優しい君が好きなのです!
そーゆーことなら許す……あ、でもやっぱり許せないのです!
「前から欲しいなーって話してたじゃない?そしたらおとーさん里親募集してるのを見つけて。昨日一緒に行って譲ってもらったんだ」
違うんかーい!なのです!
君が、ねー。と抱きかかえた子猫に声をかけると、子猫も、みー。と返事をしたのです。
返事なぞしやがってこのやろうなのです!ドとミに挟まれたらレレレのおじさんなのです!
純白の子猫なのです!美しい君にとってもお似合いなのです!
(未来の)お父様余計なことをしやがってなのです!表に出やがれなのです!
ともかく。
まずい。まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!!!!
ひっじょーにまずいのです!大問題なのです!!
ええ、「欲しいなー」って言ってるのは聞いていたのです!
でもでも、
そ、れ、が!
こんな単騎でかわいいの渋滞を引き起こす生物がいてはかわいい無双なのです!
キミの隣という私のポジションが奪われてしまうのです!!!城はあっけなく陥落するのです!
それだけはなんとしても避けなくてはいけないのです!!
でも。落ち着くのです。焦りを見せたら負けなのです。
まだ慌てるような時間じゃないのです。
きぃぃぃぃぃぃ!!
と歯を食いしばるのは心の中だけに留めて冷静な顔をするのです。
ポーカーフェイスは得意中の得意なのです!えっへん!
だって、だって君に嫌われたら元も子もないのです!!!
はっ。
自己紹介が遅れたのです!
私は大陸魔法協会が設立した
周りからはハイテンションとか空回り真空破とかよく言われるのです!なんのこっちゃなのです!
そして目の前にいるカワイ子ちゃんは私の自慢の幼馴染なのです。
同じ魔導学園に通い
すごいのです!
かわいいのにかっこいいのにかっこいいのにかわいいのです!大事だから二回言ったのです!テストに出るのです!
左にまとめたサイドテールがチャームポイントなのです!サイドテールのいいところは何気ないふりして隣に立って髪の毛の匂いをクンクン嗅げることなのです!
ちなみに私は美少女らしくツインテールなのです!一粒で2度おいしいのです!
ちなみにちなみに「きゅーてーまじゅつし」というのは、平べったく言うと王様お抱えの魔術師ってことなのです!なれたらすごいことなのです!実力者なのです!つよつよなのです!!頭もいーのです!!
つ、ま、り、食いっぱぐれないのです!!ケッコンするならとんでもない優良物件なのです!!
まだなってないけど君は絶対なるのです!!そして私は君と……きゃーなのです!!だから奪われないように今のうちから唾つけておくのです!!うへへへ。
――もうお察しの通りなのです!私はこの子にゾッコンなのです!
食べちゃいたいのです!!
あーんなことやこーんなことをしちゃいたいのです!!
でもでも、まだ何もしてないのです!
ぶっちゃけできないのです!なぜならば!私がタンドリー……じゃなくて怖がりチキン野郎だからなのです!!
なんとかギリギリ、いつも一緒にいるよねポジションを確保しているのです!授業の合間も必死に会いに行ってクラスメイトに認知させまくっているのです!
が、確たる約束は何もしてないのです!!
首皮一枚、吹けば飛びそう窓際族なのです!
でもって。
今の状況はというと、今日は安息日で君と私は一緒に街へ繰り出すべく君の出発する随分前に突撃お宅訪問した次第なのです。眠れなくって陽が上る前から起きちゃったのです!遠足の前の日寝れない派なのです!そしたらこの有様なのです!
キミは子猫を抱っこしながら頭をなでなでしたり喉をくりくりしているのです。
子猫のやろう、気持ちよさそうに目を細めたりゴロゴロなったりいっちょ前なのです!
「ね、抱っこする?」
うぐぅ!
「だだだ抱っこ!?」
唐突に何を言い出すのです!私は君を抱っこしたいのです!抱っこされる側でもいいのです!顔に血が上って耳が熱くなるのです!あ、鼻字でそうなのです。
でも!落ち着くのです!きっと子猫のことなのです!!
「だだだだ、だめなのです!禁忌なのです!かわいい顔をしたあくまなのです!」
そう、かわいい顔をしたあくまなのです!
大事なので心の中で2回目言ったのです!!3回言ってもいいくらいなのです!!
「えー、そんなことないよー? あー、でも、虜になっちゃうって意味では小悪魔だねー」
子猫の顔を覗き込みながら君は言うのです。
クリクリの大きな瞳同士が見つめ合っているのです!
そんなことしたら呑み込まれてしまうのです!!吸い込まれてしまうのです!!君が子猫になったら……飼うに決まってるのです!!買ってもいいのです!!
全財産はたいて借金して借金のかたに体を売ってもいいのです!!!君のためなら惜しまないのです!!
あぁ、でも!やっぱり君意外にあれこれされるのは耐えられない屈辱なのです!そこだけ撤回するのです!バイト4つ掛け持ちして死ぬ物狂いで働いてやるのです。!!
「そうなのです!だから早く魔界に早く送還するのです!」
「あははは。冗談がうまいよねー」
冗談じゃなくて本気なのです!という態度を私は見せているけど君は無反応なのです!
その上君の笑い声はとっても心地よいのです!聴けただけで冗談と思われようが何でもよくなるのです!その上その笑顔!!!!女神なのです!!鼻血が吹き出しそうなのです!!!
「この子には元気に育ってもらって、僕の使い魔になってもらうんだー」
つつつつつつつ、使いみゃ!?
動揺して噛みまくりなのです!!
使い魔といえばいつもそばにお控えして、どっから得たか豊富な知識や偵察で主をサポートしたり、主のピンチを機転で救ったり時には変身とか主に憑依なんかして大活躍するのです!
つーことは、四六時中おそばに置くということなのです!!
猫風情が!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
この私を差し置いて!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
こめかみに青筋が立ちそうなのです。
思わず私が使い魔になると立候補しそうなのです!
落ち着くのです私!!ドン引かれるの間違いなしなのです!!
キミは今度は前足の肉球を触っているのです。私のことはさっきから髪の毛一本触れてくれないのです!!不公平極まりないのです!!
それにしてもぷにぷにさが見た目から伝わってくるのです。うー。ちょっと触りたい。
真っ白い毛に覆われた前脚なのです。
キミのショートパンツから伸びる生足も真っ白ですべすべだから舐めなめしたいのです!!見るたびにドキドキして我慢するのが大変なのです!!
まじまじみると……今日もなんてかわいい恰好をしているのです!Tシャツの丈も短めでおへそチラリしそうなのです!
全くもってけしからん格好なのです!でも眼福なのです!!よだれ出そうなのです!!嗚呼。
すーはーと深呼吸すると君は不思議そうに首をかしげるのです。
「そ、それよりも!今日はお休みだからお出かけするのではないのです!?」
当初の約束をすっかり忘れるところだったのです!!子猫の策略に乗らず思い出した私天才なのです!!
「うん、そーだよー」
「だったら早く行くのです!いい天気なのです!急がないとお店が閉まってしまうのです!」
私は今すぐにでも君を子猫から引き剝がしたいのです!!
気持ちがはやりその場で駆け足の足踏みしてしまっているのです!
トントントントンと床板がいい音を鳴らすのです!ギシギシ言わないのです!さすが宮廷魔術師を目指している君の家なのです!うちでやったらお母さんに怒られそうなのです!!
いい音なので駆け足止めるのもったいないのです!!トントントントトン。
「まだ昼前だよー。そんなに焦らなくても大丈夫だよ。それにね、今日はこの子も一緒に連れて行こうと思ってるんだ」
「!?」
君は子猫を持ち上げてテーブルの上に置いてある木の皮で編んだ手提げバッグにそっと入れたのです。普段は野菜やパンを入れる買い物かごのようなのです。
「だめなのです!そんな小さい子が一緒にいたら、なにかあったら大変なのです!!法的責任は誰がとるのです!!」
「えー?一緒にいたいのになー。大袈裟だなぁ」
大袈裟でも小袈裟でも何でもいいのです!!君はもう悪魔に魅入られてしまっているのです!
坊主憎けりゃ袈裟まで憎いのです!!まとめて袈裟切りなのです!!ってそんなことしたら君まで血みどろなのです!あぁぁぁ!!宿主を盾にするなんて恐ろしいあくまなのです!!
「じゃあ今日はは家でこの子とゴロゴロする?」
「だめなのです!明日からまた学校なのです!お買い物行くなら今日しかないのです!!」
このままでは水入らずのラブラブデートがお邪魔虫付きになってしまぅぅぅぅ!!
どうしたら説得できるのです!?さっきからダメとか否定形で言うから反発されるのです!?でもでもっ!勢いあまってダメってすぐ言っちゃうのです!!
私は表は笑顔を張り付けておきながら心の中で頭を抱えているのです!
必死なのですド畜生!!
神様!どうかわたくしめに知恵をお与えくださいなのです!
「こらこら、子猫は体力もあまり無いし揺れるかごの中でストレス与えるのもかわいそうだから、今日はお留守番にしてあげて?たっぷりお昼寝してもらったら、帰ってきてから遊べるわよ」
奥の部屋から出てきたのはお母さま!お母さまーーーーー!!今日も美しいのです!ロングのサラサラヘアー憧れるのです!!そして最高の助け舟なのです!!地獄に仏とはこのことなのです!!
「そうなのです!!すすすすストレス!子猫ちゃんにとってストレスなのです!!がおーってなっちゃうのです!!」
勢い余って両手を挙げてがおーのポーズをとってしまったのです!!八重歯があるので獣っぽいのは似合うのです!!恥ずかしいけど、きっと君なら受け止めて頭なでなでしてくれるのです!!ほら、撫でて!!早く!!!!
「そっかぁ」
君はなでなでどころか私のポーズなどスルーし残念そうに子猫をお母さまにそっとパスするのです。無視されたのです!!!がおーは行き場をなくしたのです。振り上げた拳はどこへ下ろせばいいのです!?
純白かと思ったら子猫はお尻のほうだけ茶色いのです。変わった模様なのです。でもようやく!ようやく君をあくまから引きはがすことに成功したのです!この調子で連れ出してデートで私の魅力を存分に見せつけてメロメロにして差し上げるのです!!
って、あーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
なんで私はにっくきあくまに向かって「ちゃん」付けなどしてしまったのです!!
こんなにも憎たらしいのにいつの間にか存在を受け入れてしまっているのです!!
君だけでなく私もすでに子猫の手中なのです!?
ならぬ、決して屈してはならぬのですーーーーーーー!!!
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