第三章・あなたが教えてくれました。 私の目に映る世界は色鮮やかで美しいと。8
「ハウスト、あの、わたし……」
「大丈夫だ、お前はじっとしていろ。気持ち良いだけだ」
「でも、でもっ、あ……ぅ、うぅ~……っ」
後孔に肉棒の先端が当てられたかと思うと、少しずつ中に入ってきました。
指でほぐされていた筈なのに、それより更に太いものが内壁を広げて押し入ってくる。
奥に挿入されるにつれて背中が反り、体内にいるハウストの形をまざまざと意識させられました。
時間をかけて全て挿入されると、中が馴染むのをまってハウストが腰を動かしだしました。
「あ、あ……んん、ぅ……っ」
ゆっくりと内壁を擦られて揺さぶられる。奥を突かれる度に「あ、あ」と高い声が漏れてしまいます。
どれだけ唇を引き結んでも、熱くて甘い熱に浮かされた体は無抵抗のままハウストに翻弄されてしまう。
「あ、ん……ああっ、ハウス……ト……、はぁ、……んッ」
頭が真っ白になっていきそうです。
淫蕩に浮かされ、体が熱く火照り、何も考えられなくなっていきます。
でも、ハウストを愛おしいという想いだけは際限なく膨らんでいく。ハウストに抱かれているという夢のような現実に心が満たされていく。
幸せで、とても幸せで、こんなに心が満たされたのは初めてで、泣いてしまいそう。
……ハウスト。
声にならない声にその名を乗せる。
抱き締めたくて手を伸ばすと、ハウストはそっと身を屈めてくれます。
嬉しくなってハウストの広い背中にしがみつくと、触れあった部分からじんっと甘い熱が広がる。
私はそれをもっと感じたくて、目を閉じてハウストに身を任せました。
深夜。眩しいほどの月明かりで私の意識が浮上する。
でも初めての情交を終えたばかりの体は酷い疲労感で、意識は浮上するのに目覚めるには至りません。
そんなぼんやりした意識の中で、大きな人影が私を見下ろしているのに気が付きました。
ああハウスト、どうしました? まだ起きるには早いですよ?
ふわふわした意識の中で私はハウストに問いました。
しかしハウストはそれには答えず、私を見つめたままです。
でも逆光のせいでハウストの顔がよく見えません。彼は今どんな顔をしているのでしょうか。願わくば優しい笑顔だと嬉しいです。
「ブレイラ」
はい、なんでしょうか。
ごめんなさい、私、眠たくて、うまく返事ができていませんね。
すぐに目を覚ましますから、もう少し、待って。
「お前にはとても感謝しているが、イスラを奪われるわけにはいかないんだ」
ハウストはそう言うと、眠っているイスラを抱きあげました。
そのまま家の玄関へ向かい、木戸の前でもう一度私を振り返る。
「さよならだ、ブレイラ」
それだけを言ってハウストはイスラを抱いたまま出て行きました。
部屋がシンッと静まり返る。
ああ、これは夢ですね。
ふわふわした意識の中で見てしまった悪い夢。
好きな人と触れあえた幸せに心が満たされたから、世界で一番幸せな気持ちになれたから、もしかしたら神様にいじわるされたのかもしれませんね。私は子どもの頃から神に祈るなんてしませんでしたから。
子どもの頃から思っていましたが、神様って碌でもないですね。やっぱり本当はいないんじゃないですか?
だって、朝になって目が覚めたら、きっとハウストは私を抱き締めてくれている。
朝になるのが待ち遠しいです。
朝になったら、ハウストを起こさないようにベッドから降りて朝食を作りましょう。
イスラの好きな甘いカボチャのスープを作って、柔らかいふわふわのパンを焼きましょう。きっとイスラは喜びます。
朝が待ち遠しいです。
だって、明日からもハウストとイスラと私の三人で、もっと幸せで満たされた日々が続くはずですから。
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