　カクヨムの各フォーマットは、私にとって見やすく、分かりやすく、使いやすいです。使い始めてまだひと月経っていないので、その全容は分かっていませんし、他の小説投稿サイトも良く知らないのですが。

　私の近年のweb上の主な表現の場はFacebookとnoteでしたから、「物語を創作している人がこれほどまでに多かったとは」と驚いています。人を楽しませようと文章を綴る同好の士がこれほどまでに多いというのは、嬉しくもあり、「そんな中で自分の作品が誰かに届いて、その人を満足させるなんていうのは相当にハードルが高いぞ」と恐々としてもいます。

　ただ、異世界転生モノや、それに準じた流行のモノ、タイトルや煽り文句がいかにもライトノベル書籍化、アニメ化に媚びたようなモノが多すぎるのが難点かという印象は持っています。

　恐らくは、そういった流行モノの中にも骨太で読み応えのある作品があるに違いないのですが、カクヨムの流行モノはタイトルも煽り文句(自薦他薦の紹介文)も、流行のテンプレに則ったモノが多く、骨太で読み応えのある私好みの作品に出合うには、中々にハードルが高いのです。川の中でザルをゆすって砂金を見つけるような、そんな作業をするには流行りモノの小説は多すぎるし、表面上(あらすじみたいなタイトルや、テンプレみたいな自薦他薦の紹介文)は見分けがつきにくいんですね。

　ですが、経済原理として、異世界ファンタジーという需要に応える作品が多い事は当然ですし、大ヒットアニメにまでなったらその経済効果は景気高揚にも繋がるかもしれません。それは、素晴らしい事です。

　それが、若者による夢の実現ならなによりも素晴らしい。でも、異世界ファンタジーを書いている人、異世界ファンタジーを享受する人、これらの中の若者の割合ってどれくらいなんでしょうか。

　私はなんとなく、異世界ファンタジーを書いている人も、それらを享受している人も二十代半ばくらいまでの若者なんだろうという認識を持っていましたが、そうとは限りませんよね。私はオッサンですが、【Re:ゼロから始める異世界生活】というアニメは面白いなーと思って見た口ですしね。(リゼロって、小説投稿サイトから生まれたものでしたよね？)

　アニメというのは、多くの人の手が入る事で化学反応のようなミックスアップ効果を生みますから、原作が凡庸なものであってもアニメスタッフの手で傑作になる事もあるのかも知れません。また、そういったアニメスタッフが集結する為には、原作にキラリと光る魅力がなくてはならないのかも知れません。

　でも、有名RPGの二次創作のような借り物の世界観で、読者の予想を裏切らない、安心できる現実逃避の為にあるようなライトノベル異世界ファンタジーを中高年の人間が読んでいると想像すると、日本は随分な斜陽国家なのだと絶望的になります。

「オッサンが生み出しオッサンが消費しているのが、令和の異世界ファンタジーライトノベルだ」なんて私の想像は是非とも的外れであって欲しいものです。

　そんな訳で、私はカクヨムの検索窓をよく使っています。カクヨムのトップページから、私好みの作品に出合う事は難しすぎます。

　検索窓に「砂漠」だとか「バー」だとか「祈り」なんて、その時の気分で適当なワードを思いつくままに入れて検索するのです。そうすると、やっぱりテンプレ煽り文句とあらすじタイトルがそこそこ出てきますが、そうではないモノもそこそこヒットします。そこで、自分なりの嗅覚で自分好みの作品を引き当てようとしているんです。

　そうやって見つけた作品にはステキなモノが多いです。そして、「ん？これって、渋いテーマの作品だけど、書いてるのは若い人なんじゃないか？」と思わされる事も多いです。書籍化やアニメ化に媚びない、「私は私が描きたい事を書き切った。どうか、これが、どこかの誰かに、刺され」という純粋な思いが見えるのです。そして、それは若さかも知れない……と。

【若者=浅慮】ではなく【年長者＝ラノベから遠い存在】でもない。それがカクヨムをはじめとした小説投稿サイトなのかも知れませんね。若者が醸成した秘めた思いを込めた作品に深い哲学が宿っていて、年長者がひたすらに媚びたラノベを書いているそういう事もあるのかも知れません。

　そんな事を思った作品がこれです。

【私があげた毒杯と、もらった嘘について】

( https://kakuyomu.jp/works/16816927860982114588 )

　重いテーマの作品です。文章も文体もしっかりと骨太でした。でも、私は作者の信念に若さの輝きを見た気がするのです。作者の年齢を私は知りませんから、見当違いな事を書いているのかも知れませんが。

　とてもいい作品です。是非ご一読頂きたいと思います。

　－－－

　それでは聴いてください。

　フジファブリックで【若者のすべて】

(良かったら、YOUTUBE等で【フジファブリック-若者のすべて】と検索してみてください)