第三話 僕達私達の日常です(真)~漆黒の求道者~②

「や、やめてくださいよ! そういうのが一番辛いんですよ!」


 と、魔王様ことクロ。

 彼女が杖を床に投げつけてから数分。


 ようやく落ち着いたらしいクロ。

 いまではすっかり、制服に着替えている。


「それで……どこから見ていたんですか?」


 と、言ってくるのは件のクロだ。

 直江はそんな彼女へと言う。


「溢れだす混沌……のところかな」


「あぁ……勇者が登場したところですか」


「…………」


「…………」


「…………」


「いや、なんか言ってくださいよ!」


 と、バンバン近くの机をたたくクロ。

 彼女はそのまま直江へと言ってくる。


「冗談ですよ! 今のは冗談ですよ! 笑うところでしょうが! あぁもう――ただでさえ、恥ずかしくて死にそうなのに、もう本当に……これ以上、私を苦しめないでくださいよ!」


「あ、いや、ごめん。見る気はなかったんだけど。そ、それにほら……そういうことしたくなる時期もあるよね? 大丈夫、個性っていうか……これからも変わらず――」


「いくらですか?」


「は?」


「いくら渡せば、このことを黙っていてくれますか?」


 どうやらクロ、相当この秘密を知られたくないようだ。

 けれど、友達から金を受け取るわけには――。


「いいですか、直江さん……正直、私は直江さんを信用しています。直江さんはきっと、この秘密を誰にも言わない」


 と、言ってくるクロ。

 そんな彼女は、真面目そうな表情で言葉を続けてくる。


「でもですよ……私は安心するための材料が欲しいんですよ!」


「僕がクロに何か対価として要求すれば、クロは安心できるってこと?」


「社会では金銭のやり取りでそれを行うように……契約とは何かのやりとりから始まる物ですから」


「うーん……」


 クロが言っていることはわかる。

 とはいえ、やはりそう簡単に金を受けとるわけにはいかない。

 

(友達とお金のやり取りって、嫌なんだよね……)


 と、直江がそんな事を考えながら、クロをジッと見ていると。

 クロが突如、自らの身体を抱きしめながら言ってくる。


「ま、まさか……私の体がお目当てですか……っ!?」


「いや違うからね!?」


「べ、別にいいですよ……な、直江さんならその……別に嫌では(ぼそぼそ)」


 なんだか妙なことになってきた。

 この件は早々に解決した方がいい。


「えっと、じゃあわかった。クロはそういう――中二病的なのが趣味なんでしょ?」


「やめてください……中二病って言われると、なんだか落ち込みます」


 と、どんよりしているクロ。

 直江はそんな彼女へと言うのだった。


「まぁ、とにかく。じゃあ、僕もクロの趣味に付き合うよ。それでどうかな?」

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