夢ひつじのお仕事

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 夢ひつじは、人間の夢に入る。


 そして、疲れた人間に、楽しい夢を見せるのが仕事だ。


 その日も、夢ひつじは、人間の夢の中で、楽しい夢を見せていた。


 だからその人間は、楽しい夢を見ていた。


 仕事も人間関係も忘れて、子供の頃にもどって、故郷の田舎道で友達と遊ぶ夢。


 けれど、楽しくて、楽しくて、楽しすぎてしまうと、夢から覚めたくないと思ってしまうから大変。


 ずっと眠ったままでは、衰弱してしまう。


 だから夢ひつじは、起きたくない人でも起こしてあげなければならない。


「ずっとこの夢を見ていたいよ」


「現実なんていらない」


「この夢の世界で死ねるならよかったのに」


 夢ひつじは、人を楽しませたい。


 けれど、時にはその楽しい夢が人を傷つけてしまう事もあった。


 だから、その夢ひつじは仕事を続けるかどうか悩んでいた。


 けれど。


「楽しい夢を見せてくれてありがとう」


「これからまだ頑張れそうな気がする」


「生きていく気力がととのったわ」


 そういう時になぜか、夢を見せてくれた人間に感謝されるので、夢ひつじはまだまだ頑張っていこうと思えるのだった。


 夢ひつじはこれからも仕事を続けていく。


 現代社会に疲れた人達の心を、楽しい夢で癒していく。






「やれやれ」


 多くの夢ひつじを管理している存在。


 大ひつじは、とある夢ひつじを見て、良かったと胸をなでおろした。


 夢ひつじは人に夢を見せる事ができるけれど、自分で夢を見る事はできない。


 だから上司が、お仕事先を調整して、部下達のストレスがたまり過ぎないように注意しているのだ。


「これからもがんばっておくれよ。お前達」


 ストレスの多い現代社会で、夢ひつじのお仕事はまだまだ終わらない。


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夢ひつじのお仕事 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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