異世界転生したら国の英雄として称えられて俺TUEEEEEEEEEEEだった件

あずま悠紀

【1】前篇

名前:中村 梨紗

性別:女性

性格:おっとり、優しい

備考:元冒険者。パーティ『サジタリウス』のメンバーだった。現在は引退している。弓使いの魔法使いという珍しい戦い方をする。その腕前は一流で、『サジタリウス』はAランクまで上り詰めた。優しくて誰にでも親切だが、怒ると怖いらしい……?【ユグドラシル】のリーダーである真也と面識があるようだったが……?

名前:久遠寺

真菜香 性別:女性

性格:明るい、元気いっぱい

備考:元冒険者。パーティ『アンタレス』のメンバーだった。現在は引退している。回復魔法が得意なヒーラーであり、さらに攻撃魔法のスキルも習得しているため万能型といえる存在となっている。明るく人懐っこいが、その裏には熱いものを持っている。また料理上手でもあるようだ。【ユグドラシル】の副リーダー的存在として活躍している。実は……?


名前:伊波 咲良

性別:女性

性格:冷静沈着、クールビューティー

備考:元冒険者。パーティ『スピカ』のメンバーだった。現在は引退しているが、時々ギルドの依頼を受けている。ナイフや短剣を扱い、投擲なども行うため、ソロでの活動も可能だろうと思われる実力を持つ。普段は冷静沈着であるが、仲間思いの性格をしており、ピンチになると本領を発揮するタイプだと言われている。


名前:東雲 結衣

性別:女性

性格:真面目、努力家、頑張り屋さん

備考:元冒険者。パーティ『アルデバラン』のメンバーだった。



今は『ユグドラシル』におり、主に盾役をしている。元々タンク型のスキルを習得していたからこそ出来ることだと思われている。盾役としてはかなり優秀な方であり、『アルデバラン』の面々はみんな口を揃えて彼女を認めていた。現在『アルデバラン』のリーダー代理をしていて、『サジタリウス』の元副リーダーであった美月とは大の親友同士であり姉妹のような関係だと言う。そんな彼女の過去を知る者は数少ない。【ユグドラシル】ではサブメンバー的な役割についていたらしい。

名前:加賀美

詩音 性別:女性

性格:マイペース、ゆるふわ

備考:元冒険者。パーティ『オリオン』のメンバーだった。今は『ユグドラシル』にいるがたまに参加してくれるくらいのレベルに留まっている。あまり目立った行動はないが、確実に力を伸ばしていて『アルデバラン』時代の結衣からは天才だと評価され、『サジタリウス』時代でも同じく天才と言われていたようだ。

名前:桐山

みくる 性別:女性

性格:お淑やかな性格をしている

備考:元冒険者。パーティ『サジタリウス』に所属していた。弓使いであったが、とある事件がきっかけで引退し、その後は専業主婦になっている。

子供がいるらしい……。【サジタリウス】時代にはレイアのパートナーを務めていたこともあり、かなり親密な関係だったようだ。レイアの死後は落ち込んでいたのだが、最近になってまた復帰したとのこと。

名前は適当です笑 この人たち以外にもいるかも!(多すぎかなぁ?)

ただ、これ以外に知っているのは2人いるのですが、そっちの方は全く分からないので省略しますw……あれっ、そう言えばまだ一人いたよな……まあもういっか。忘れちゃってるかもしれないけどさ。

とにもかくにも……これからはこの人たちがメインになるかもしれません!!……ちなみに「え?これメインじゃなくていいのか?」と思ったあなた……その通りですよ??……いやまあとりあえずこの人たちの設定をしっかり書けてない気がするので次回はそのことについて書きます!!! 〜次の日〜 真也が目を覚まして一番に目に入った光景は真っ白い部屋だった。

真白な空間の中でぽつん、と存在するベッドの上に寝ている状態。

その状況を確認した真也の頭の中に一つの声が聞こえた。

(おめでとう。君の願い事は叶ったね。)

唐突すぎる声に疑問を覚えながらも質問をしようと口を開くも上手く喋ることができない。

身体を起こすことさえままならない状態で、どうにか視線だけを周囲に向けると…… そこは、昨日まで見ていた自分の部屋の景色ではなく……なんというか……ゲームの中の世界で見る様な幻想的だが、何処と無く禍々しい雰囲気を纏っている神殿の様なところだった。

そしてそこには見覚えのある人物の姿も見受けられる。

『聖女』と呼ばれている、クレアーレ帝国最強の少女・レイナ。

真也にとっては初めて会った時は、恐怖の対象として見られていたが、最近では多少ではあるが会話が出来るようになった相手。

真也としては仲良くなりたい気持ちはあるのだが中々話しかけられずにいた…… その、彼女が目の前にいるのだ。

しかし彼女は、先程の言葉からすれば既に亡くなっているはずの存在。

(まさか……俺も死んだんじゃ……!?︎)

そこまで考えた所でまた脳内の声が続く。

(いや、違うんだ……ここは、魂が循環する世界。あの時死んだ君は……ここに辿り着いたんだよ。だから大丈夫、死人はいない。ただ君には特別な権利が与えられたんだ。……それは、転生できるっていう特典だよ?僕からのプレゼントなんだ。感謝してくれてもいいんだぞー???)

謎の語り口調の人物によってどんどん話は進んでいく。

そして真也の理解が全く追いついていない中で、さらに話は加速していった。

(それに伴って、今の僕は神様的な存在だね。僕の言うことはちゃんときいて欲しいんだけど、どうだろう?拒否権はないけどね☆)

まるで軽いノリのように話を続ける。

真也としてはあまり納得がいっていないものの、一応話を聞いてみることにする。

(そうだねぇ。まず今の状況を説明しよう。

僕は『創造神オルキニス』…… まぁそんな感じの神様的存在です。

さっき言ってたことは嘘じゃないよ。本当さ。

でだ、ここから本題なわけだけれど、君は、死んだ。死因はまあ色々あって簡単に説明することはできないし説明するつもりもない。でも死んでしまった。……ここで問題が起こる。このままじゃいけない。だって君を蘇らせることはできない。そこで……提案をする。

異世界に行くというのはどうかな?……もちろん、そのままの意味じゃなくてね? いわゆるファンタジー系な異世界ってことだね。)

いきなりそんなことを言われても真也には理解することができない。

困惑しながら必死に考えている間に、オルキスは言葉を続ける。

(そう難しく考えなくて良いんだよ?つまりはさ……もう一度人生を送り直すのさ!これはチャンスだと思うな。こんなチャンスなかなか無いからね。まあちょっと待ってくれ。……うん、OKだ。よし、なら次へ行こう。)

オルキスが言い終わると真也は意識がだんだん遠くなる感覚に襲われた。

〜1年経過〜 今日で丁度3歳になった。この世界に転生してからというもの、ずっと忙しかった。……まぁ仕方が無いといえばそれまでなのだが。

生まれたのが、王都から少し離れた街だった。

そこからは本当に大変で、生まれてすぐに母親が亡くなったりして……父親はかなり苦労をしていたらしい。

そんな環境にいれば誰だってストレスが溜まる。父親は酒癖が悪い上に暴力もあったらしくて……。俺は前世の記憶があるせいか特に気にならないのだけど、他の家族や使用人たちはかなり嫌っていたみたいだ。

そんな父親の暴力は俺にも当然向けられた。

殴ったり蹴ったりするのは当たり前だったな。しかもそれを父親だけでは無い、メイドやら執念やらも混ざってくる。それに飽きれば今度は母親のところに連れて行かれ、ひたすら殴られる。……まあ、これもまだ我慢できなくもなかったかな。痛いし、何より辛かったのはご飯が無かったこと。

俺がまだ幼いこともあって食べさせてもらえることも無かったし、食べ物なんて与えられなかったから。だからお腹が減ると泣きながら空腹を耐えたりした。それも毎日。でもやっぱり辛いものは辛いもので……。お陰で、ある程度の知識を身に付けたのと同時に、あまり泣かなくなったのかもしれないな。でもその頃にはすでに、感情は殆ど失っていて、自分から何かをすることも無くなっていた。……これが、所謂幼児虐待というやつなのだろうか。

3歳になれば流石に理解できる。自分が受けてきたことが世間一般的に見たら酷いものだと。

ただ、俺の親父は、国王からの信頼も厚い人だった。そしてその妻である母親は王妃だったのだ。だから表沙汰にはなっていないが……裏では相当に酷く虐げられていたとかなんとか……。

ただの酔っ払いだったはずなのに……。

とにかくそんな家庭だった為、俺の生活は地獄そのものといっても良かったのは事実だったと思う。

それからは、色々な意味で勉強漬けの日々が続いた。読み書きに始まり、礼儀作法から戦闘術、剣術に体捌きなどなど……とにかく沢山の事を教え込まれた。おかげで今ではそれなりの自信は持てるようになった。

ちなみに俺は3歳から5歳までの間、ほとんど外に出された事は無かったため、同年代の子と会う機会も無かった。ただ唯一あったとすればこの国の王子……レイア殿下だな。レイア殿下とは、まだ会ったことがないからわからないが、とても優しい人のようで安心しているんだ。いつか会いに行きたいと思っているんだけど、父上も許してくれるかどうかが怪しい。まあ今はとりあえず置いておくとして、今は魔法の勉強の方が優先だからな!……今はもう6歳になるけど。

というか魔法の勉強が楽すぎる! 魔法が楽しい!……いやホント、マジで楽しいんです!だって想像していた通りだし!俺、前世は魔法使いだったんですよ。だから魔法のこと、結構わかるんだよね。この国に来てからはずっと魔法ばっかりやってた。暇があれば魔力を感じるために瞑想したりもしていたな。この身体になってから魔力を感じられるようになったんだ。

今は魔法を使ってる。今は火と風を使っているけど水や雷も練習したいと思ってる。

ちなみに魔法の才能は、前世の俺よりも断然上だ。だって……

・初級無詠唱 これは基本中の基本。

・中級魔法連続行使可能 これも基本。……と言っても、かなり難しいのでは?と自分でも思っている。実際かなり頑張った。

・超級魔法同時発動可能 これはかなり苦労した……。

・神級属性魔法 これを扱える人間はほぼいないと思われるが……実は出来るようになっている……。何故ってそりゃ、この世界の『聖剣』を使ったからだ!聖剣を使うには聖女の魂を体に宿さなければいけないのだ。つまり……俺にも聖女と同じ適性があるのだ!やったぜ! まあ聖女はレイアさんに任せるつもりだから……レイアさん以外の人がこの『聖女』をやることはまずないだろう。……俺以外にできる人は多分いないだろうからね。

でも、今更他の誰かに渡すのはちょっと気が引けるので(面倒ごとが増えそうな気がする)結局は聖剣の所有権は変わらず……俺のものになる予定だ。

そんなことを考えていると扉の外からノックする音が聞こえた気がしたので返事をした。

すると入ってきたのは父上の従者のジラスタと妹のミアナ。

どうやら食事を持って来てくれたらしい。

二人には感謝をしているが、それでもあまり喋ったことはないんだ。というか、そもそも俺が喋らないのもあるんだが。……喋ると怒られるからな。

「本日のお食事をお持ちしました」

「ありがとう。いただきます」

俺はそう言うと早速食べ始めた。……ん?いつもより量が少ない……?それに肉類が一切ないぞ?? まあいいかと思いながらも口に料理を入れ、飲み込んだ瞬間……目の前に光が現れたかと思えばそこには見慣れない女性が居た。

その女性はこちらを見ると、満面の笑みを浮かべ、話しかけて来た。

「お兄ちゃん、お久しぶり!」……ん!?︎どういうことだ……いや、誰だよ……って、あれ?この声どこかで聞いたような……。……そうだ、レイアさんだ。レイアさんの声と似ているのか……。でもなんで……いやそれよりも……誰だ!?︎誰なんだよ!?︎もしかして……神様なのか?でもなんで急に現れたんだ!?︎……分からないことだらけで頭が混乱してきた……が、とりあえず……無視するのはマズいと思った。……話しかけられているわけだから、答えないとダメなはずだからな。

よし……

「どちら様ですか?」と問いかけることにした。

まず最初に言っておきたかったことがある。……それは、俺の名前は真也で間違いないということだ。そして、おそらく転生したということは確かなのだが、転生先がなんの世界でどのような環境になっているのかまではわかっていないのが正直なところなのだが…… 俺の名前については問題なかったようだ。というか普通にスルーされてしまったのは少し悲しい……まあ別に気にしてはないんだけどね。……そして彼女は俺の質問に対して、自分のことについて語り始めるのだが……正直言ってあまり聞いていなかった。だって知らない人……ましてや年上に自己紹介しろなんて無理ゲーじゃん?……というわけで、途中から話を聞いていなかった。

彼女が一方的に話をした後は少し沈黙が流れ、その後ようやく俺の方からも話を始めた……というか質問をしてみる事にした。

「……で?あんたは一体誰なんだ?ここはどこで俺は今どうしてるの?てかどうやって俺の前に現れたの?そもそも俺のことをお兄ちゃんと呼ぶ理由を説明できるなら説明してみて?あぁあと、これから先、俺はあなたを信用できない。……さっきから言っているように知らない人……それも女性の人に『俺の兄になれ』だなんて言われる覚えはないし、それに俺には全くそんな記憶がない。俺の記憶違いでなきゃな……俺はまだ2歳のはずであんたが俺のことを知ってるわけが無いんだが?それについて説明は出来そうかい?おねーさん?」……まあ色々と言いたいことはあったけど、一番は年齢が合ってない。それに俺はお姉さんと関わるのは極力避けて生きていくつもりでいるんだ!絶対にロクなことにはならないと思うんだよね。というかこの女性から漂う雰囲気はなんかヤバいし……。見た目だけなら凄い好みなんだけど……中身がアレじゃねぇ……。ま、まぁまだ子供だからしょうが無いよ……な?うん。まだ俺はロリコンじゃない。……ま、まぁそれは置いておいて。とりあえず、こんな事を言われて黙っていたりするような人ではないだろう。なので……どんなことを言ってくるのか内心ビクビクしながら待っていると…… 少し考える仕草をしながら何かを思いついた様子の女性……俺の母親の妹、つまり俺からすれば叔母に当たるその人が口を開いた 俺としては……まだ2歳でもある程度会話は成立しているのに……

「まあそうよね。うん、わかってたわ。ごめんなさい、私もあなたの気持ちはわかるから責められないけど……。

それに……本当に申し訳ないことをしたと思っているわ……。まさかあんなことになるなんて…… でも大丈夫、私はあなたを守るから……。安心して頂戴! 私の名は……そうね……リセと名乗っておきましょうか。

それで私があなたの前にこうして現れてしまった理由は……実は……あなたが今置かれている状況を簡単に伝える為だったりするのだけど……。

実は……今、この国は戦争状態にある。相手はこの国、そして隣にある帝国、さらには他の国にまで手を回している大帝国の三つ巴状態となっているの。しかもこの世界に存在するほぼ全ての国に宣戦布告をしたの。そして……我が国はその戦争に参加する予定で居るの。そしてその戦争で、この国、もしくは他国のどちらかが滅びればこの戦争は終わりを迎える事になる。……そこでお願いなの。

今からすぐに逃げて欲しい。この国の外には魔獣の生息領域が広がっているけれど、そこは私の加護の力でどうにかなるから……お願い……。

私のせいで辛い思いばかりさせてしまうと思う……。だから……本当に、すまないと思ってる……。どうか生き延びて幸せになってくれ……」……俺は絶句してしまった。

俺には、なぜそんなことになっているのか全くわからないからだ。そもそも、いきなり出てきてペラペラとまくし立てる様に喋られたから頭に入らなかったというのが実情だが……。ただ、この女性が言っている事が事実であるとすれば、かなり危うい状況に陥っている事はわかった。そして俺を救おうとしていることも……。……だからこそ、その言葉の真意を問い質したい衝動に駆られながらも、必死に抑え込む事に意識を割く必要があったのだ。

ただ……この女性が言っている内容からするとこの女性は俺の母さんである可能性が高いということがわかったため……まあ、なんとか頑張って冷静になった。……ただ一つ疑問に思ったことがあった。この世界の戦争のやり方についてだ。この世界の魔法技術はそこまで進んでおらず、剣や槍が主流とされている。もちろん例外はあるみたいだが……。そんな状態で大規模な戦争が出来るものなのか……。

もし、俺の考えが正しいとするならば……この女性は何かを隠しているというか……何か隠したい事があるのかもしれないな。

とりあえず今の段階では何の情報も無いので……保留することにした。

それから俺とリセさんのやりとりが行われた後……最後に……俺の願いを聞き届けた彼女は俺の元を去った。……その時の表情はどこか悲しげだったが、それを指摘したところで何も変わらないだろうと思って口をつぐんだ。……それから1年後……遂にその戦争が始まる事となったのだが、俺は既にこの時、俺なりの最善の行動をしていた。

戦争が始まってから約一月経ったある日の早朝……俺は母と共に戦場に向かっていたのだが……そこに待ち受けていたものは地獄のような光景であった。

そこには多くの血が溢れ、そこら中に屍が転がっており……まるで阿鼻叫喚とも言える様相を呈していたのだ。

そんな中を、俺は父を探していたのだが……。

既にそこには居なかった。どうやら逃げたらしい。そしてこの状況下で、自分よりも弱いであろう息子が生きている保証もなければ生き残る可能性も限りなくゼロに近かったので……。

しかし、俺にはまだすべきこと、やるべき事があったためその場に留まることを決めた。それが何を意味するのか……それは誰にも理解できていなかった……。

この日……一つの大国の終焉が始まったのは、言うまでもない……。

それから数日後、この日も変わらず、戦闘を続けていた時だった。

俺は、敵が一人しか残っていないのを確認した上でその敵の背後を取り、一撃で仕留めることに成功したが……次の瞬間……後ろから何かに貫かれる感覚を覚えたのだった。

痛みを感じた後に視界に移ったのは自分の胸を貫く、真っ黒な刃を持つ剣だった……。……そこからはあまり覚えていないのだが……次に気が付いた時は白い部屋に寝ており、目の前には女神が座っているという状況に陥っていた。

そこで俺は、あの黒い女が言うことが正しかったということを知った。そして……俺はここで死ぬ運命だったということも。……それを知った俺はもう、抗うつもりはない……というより、抵抗するだけの力が無かったという方が正しいだろうが……。

ただ、せめてもの償いとして自分がやれれるべきことをやろうと決め、まず初めに自分の家族を救ってくれと頼んでみることにしたのだ……。結果はダメでもともとのつもりでいたのだが……。……結果を言うと、なんと奇跡的に叶ってしまった。俺の家族は……みんな生きていて、俺のことを心配してくれていたのだ……。その時に聞いた話は、衝撃的だった……。

俺が死んでしまった原因はどうやら、とある国が開発した兵器が原因のようで……。

まず前提として……俺はこの世界をゲームのように考えていた部分がある。そのため俺の知識や常識はこの世界では当てはまらない物だと勝手に思っていた節があったんだ。……それは大きな間違いだったようだ。この世界で、人が死に過ぎる……。それは当然のことなんだ……。なぜなら……この世界では、人の命が軽い。そんな世界で生きていくのなら……俺だって、強くならなきゃいけないのに……。……それに……それに……。この世界でも俺は異端だった。……だから……そんな風に考えているから、この世界の価値観に合わせられなかったのだろうか?俺はそんな考えが頭をよぎった瞬間……ふと思い出したのはリセさんの顔で……リセさんとのやり取りを思い出す度に悔しさを感じずにはいられなくなった……。それと同時に、これから生きていく上で、必要な知識を得ることが必要だと思い直した。そして俺は、あるスキルを手に入れることにしたのだが……。それを習得するためにはかなりの時間が必要だったため、リセさんに会うまでに時間がかかり過ぎたが、結果として俺には強力なスキルを手に入れたため、問題は無かったと言えるだろう。その能力は……『完全模倣』というものだった。これは、俺が持つ能力の中でも、上位に位置するほど強力な能力だと思う。この能力を上手く使いこなせるようになれば……俺でも戦えるはずだ……。……いやまだだ。

今はまだ戦う段階じゃない。もっと強くなる必要がある……。……それに……この戦争で、リセさんの言っていた通りに、国が滅ぶのなら……。……それを救うことが出来る存在が居るとしたなら…… 俺はそいつを殺してやる……。例えこの身が砕けようと……殺さなくてはならない。そうしなければ……俺はきっと後悔することになる……。

そう決めた日からの俺はひたすらに修行に励んだ。この世界で生きていくために必要な力を蓄えることに専念したのだ。その結果……。俺はステータスを確認すると驚くべき成長をしていた……。

九重 真也 Lv 24 職業

『勇者』

HP 2800/2800(+500)

MP 5600(+200+5400000)

攻撃力 2000(+12000)

守備力 1700(+1500+100000)

魔力 4100(±040000)

敏捷 1800(-18000)

運 3900 《固有技能》

・全言語翻訳可能 《称号》 異世界人・聖魔剣士・神魔を狩るものこれが俺の現在の状態なわけだが……。まぁレベルが上がるのに1年以上もかかってる時点で相当出遅れていることがわかる。ちなみに俺の持つユニークジョブは

「 勇者」なのだが……。正直言って……この世界に来る前に俺の持たされていたチートアイテムは、この「 勇者」というジョブを除けばゴミ同然だったので仕方が無い……。……いやむしろ……この俺に与えられたチートは……この世界では破格の性能と言っていいだろう……。その恩恵のお陰か分からないが…… 俺はこの世界の基準では考えられないほどのスピードでの成長を遂げることになったのだ。まあそれでもまだ、遅い方だったのだが……。俺が今目指している目標はただ一つ……。この戦争を止めることだ……。そして俺の大切な人たちを絶対に守って見せる……。その思いだけでここまで頑張ってきたのだ。だが……。……戦争を止めるためには圧倒的な力が居る……。俺がどれだけ努力したとしても……足りないんだ……。……今の俺は……。だから……その力を得るために、今俺に必要なことは……この国の国王になる事だった。

俺がこの世界に転移して約二年が経過しようとしていた。俺は、毎日、朝から晩まで訓練に勤しむ日々を送っていたが、最近、気になっていたことがあった……。俺にはこの世界に友達といえる人物がいなかったのだが……。この王都にある孤児院の子供たちがいつも遊びに来ていたので俺は子供達とも仲良くなりたいと思い始めていたのだが……。

ある日の事である……。いつものように朝の日課をこなしていたのだがそこに見知った顔の女の子が訪ねて来たのだが……。その子はとてもお腹が減っていたらしくてご飯を分けて欲しいと言いに来たようだったが……。しかし……俺はその時ちょうどお腹が空いていたのだ。それでついその事を告げてしまったらその子は泣きながら走って行ってしまったのだ……。その時に気づいたのだ……。自分が今までどれほど辛い思いをしていたのかを。それから俺は自分に言い聞かせた。「俺はもうこの子たちと同じ境遇ではないんだ……。」と。それから俺は、この国に住む子供を引き取ってくれる貴族を探し始めたのだが……。やはり、どこも手一杯なのか良い返ってこなかった……。俺は諦めかけていたのだが……。そんなある日の昼休み……食堂に立ち寄った俺はある一人の女性と偶然目が合ってしまい……。それから俺は彼女の誘いを受けることにしたのだ……。彼女との出会いは……必然だったのか、それとも運命だったのか……。

それは俺にもわからないが……この先も一緒に過ごして行きたいと思わせる人だったのだ。

俺の名前はアルム。元Aランク冒険者で現在はこの王国の兵士として働いております。兵士になってからというものは……まあ、いろいろありました。主に俺の仲間であるリリアーナに振り回されたと言うか……。とにかく、俺が彼女に好意を抱いている事は間違いないでしょう。彼女は俺なんかといるよりももっと別の男の方が幸せになれると俺は思うんですけどね……。

そんな彼女と俺の関係は……一言でいえば主従関係で……彼女が王女で俺は従者です。俺達の関係にはもう一つ付け加える事がありまして……。俺は彼女の事が好きなのは変わりませんが……。その……恋愛感情というわけではないというか……。

簡単に言うなら妹みたいな感じでしょうか。彼女はとても可愛らしい容姿をしているのですが、それに反して言動が少々……いや結構アレな部分があるんですよ。彼女は俺と同じような境遇で生きていましたから。

まあそのせいで色々と大変だったのですが……。

ある日突然現れた少女によって俺の人生は大きく変化しました……。俺達は戦争に行くことになったわけなのですが……その戦争の中で、仲間が次々に殺されていくのを見ているしか出来なかった俺はもう既に生きることに対して疲れてしまっていたのかもしれませんでした。……しかしある時……一人の少女が戦場に現れたことによって事態は急速に変わっていくことになりました。その戦場にいた全ての敵兵をたった一人で葬り去った少女の力は圧倒的でした。……まるで自分の強さを見せつけるかの如く……しかしそこには一切の攻撃意思は無く。ただひたすらに殲滅を繰り返しているように見えてしまいました。

俺はその光景を見た瞬間……体が硬直し、動く事ができなくなってしまったのを覚えています。それほどの恐怖心を抱いてしまったのでしょう……。

そしてその光景は……この国の王が戦意を喪失してしまうほどのものだったのは間違いないことだと思います。俺はこの光景を見て、このまま戦い続ける事なんて不可能だと思い知らされると同時に……。

この国が滅びゆく未来を思い浮かべ、涙が出そうになるのを抑え込むのに必死でした……。そして……あの時の少女とまた会いたいという気持ちが湧き上がってくるのを感じた俺は、もう一度会えたら話をしてみようと決意する。……もし会うことができたなら……何か力になってあげれることはないだろうか?そう思ってはいたものの、結局俺は彼女に声を掛ける事が出来ないまま時間だけが過ぎていく。

俺はそんなことを考えていた矢先の出来事でした。俺達が戦う事になったあの国は俺の生まれ育った国でもあり、友人や知り合いも多い……。俺には……守りたい人達がいるのだ。……だからこそ、この国に害を成すあの国を許せない。俺は……必ずあいつらをこの国から追い出してやる!俺の命に代えても……必ず……。……あの国を追い出された俺はある町へとたどり着いた。そこは……以前住んでいた場所からは少し離れていたが……。

そこで見た光景に驚いた。なぜなら……。そこには……あの時の……リセ様の姿があったからだ。しかも、隣にいるのは……まさかとは思っていたが、リリアさんだった……。そして俺は二人の様子を観察する事にした。俺はこの時初めてリセ様に抱いている印象が変わった気がした。そしてその理由はなんとなくだがわかる……。リセ様は……どこか普通の人とは違った雰囲気を持っているように見えたからな……。

そんな二人の関係が急に変わる事になる事件が起こる……。それが今回の戦争の引き金になったと思われる。そう、リセ様が攫われたのだ……。そしてリセさんを助け出した後に分かったことが二つほどあったのだが……その一つ目はどう見ても人間にしか見えないリセさんの背中から生えているものの正体だった。あれは羽で間違いないだろう。つまり、どういうことかというとだな……。リセさんには翼がついているということになるのだが……。これはあくまで予想なんだが……。恐らくは天使族とかそういう種族だろうと思っている……。その根拠としてはいくつかあるのだがまずはあの見た目で悪魔だとしたら流石にありえないだろうと思ったからなのだがな。

それから2つ目の根拠というのはだ……。そもそも俺のスキルの1つに「超感覚:EX」ってものがあるのだが……。このスキルが反応したということだ。……そう、このスキルは危機回避のためのもので……その効果を信用していた俺は今までこのスキルが外れたことは無かったのだが……。しかし、今回は外れなかったのだ……。ということは、リゼさんを攫った犯人はただ者じゃないのが確かだということだ……。

そしてこの二つの出来事がきっかけで戦争を止めることを決意した俺は、リセさんを助ける為に行動を起こそうとしていた。

俺はこの国を守る為……そして……この世界の平和を守るために行動を開始することを決めたのだ。……俺にとって戦争を止めるということが何より重要な目的になっていた。だが……それと同時に……リリアさんの事も気掛かりになっていることも事実だ……。そして俺は……リリアさんの救出作戦に参加することを決める。……正直言えば不安で仕方がなかったのだが……。リリアさんの事は俺がどうにかしなければならない問題だというのはわかっている。

俺はこれからの事を考えている時、不意に思い出してしまった。リリアーナがこの王都で暮らしていないという事実に気がついたからだ……。まぁ当然と言えば当然の話であるのだが……今更ながらに思ったのだが……。俺が孤児院に連れて来た時から既にこの国の姫だったという可能性すら出てきたのだ……。まあどちらにせよ今の俺には関係ない話ではあるんだけどな……。俺はこの世界に来てからというもの……本当にいろんな人に迷惑をかけまくっていたんだと改めて実感させられていた。俺がこんなことをしているうちに、この国の王は死んでしまっていたという最悪の事態だけは防がなければ……。まぁそうなると……この戦争も意味がなくなってしまっているという事になるわけだが……。俺の目的は一つだけだ。

「俺の仲間を傷つけたこの国を絶対に許さない……。俺はこの国を潰すために力を貸せと言ったんだ!」

(そう……この国は滅ぶしかないんだ……。この国を救いたいとか思っている奴らが多すぎて俺の目的が邪魔されているのも理解している……。)

「だから俺がこの国の王になる!!俺以外の誰にもその席は譲らない……。俺はこの国の全てを支配するんだ!!」

そして俺は宣言をする……。

『 お前たち雑魚にこの国の命運を任せるくらいなら俺が支配してやった方がましだ!』

俺はそう宣言をした。

そして……俺達は今、作戦の決行前に、リリアの奪還作戦を行う事を決定したのである。そしてその日が今日だ……。

俺のこの国の王としての最初の仕事が……。今、始まろうとしていた。……俺の計画は、こうだ。まずはこの城に忍び込み……王女とメイドを引き離すことから始めることにした。それからは計画通り……。

この城の警備体制などを全て調べ上げて、俺は事前に用意をしていた。

そしてこの城の内部構造やら何やらも全て把握した上で行動を開始したのだ。

この城に入るまでは簡単に行くことが出来たのだが……問題はその後だった。この国の王が住んでいるであろう部屋の前までたどり着くまでに時間が掛かってしまったが……。ようやく辿り着く事が出来たのだ。

俺は部屋の前に立っている騎士達に気付かれないよう注意しながら扉を蹴破り、中にいる者に声を掛ける。……この部屋は、謁見の間であり、王の部屋にしては随分とこじんまりとしているようだった……。俺にとっては好都合だったが。この国の現状を考えると……おそらくここの玉座に収まっているはずの男はまだ寝ぼけているのか目を覚まさずにいたのだ。俺はこの隙を逃すまいと、素早く駆け抜けて行き……。リリアを奪い返し、そのままこの城を出ようとしたその時だった。

俺は背後からの殺気に気づいたのだ。咄嵯に振り返りその攻撃をガードすると……そこに立っていたのは先ほどまでぐっすりと眠っていたはずの国王が、目を見開いて俺のことを睨みつけていたのだった……。……そして次の瞬間……一瞬で間合いが詰められたと思うと……俺は壁に叩きつけられてしまっていた。俺は意識を失いそうになりつつも……必死に立ち上がろうとするが……体が思うように動かない。その様子を見つめていたリセが、何かを決意したような顔つきになると、こちらに向けて手をかざし始めた。

「 私だって……戦えるの!もう……逃げてばかりの自分じゃ……無いんだから! 【天罰】」

俺はリゼさんの魔法を受けた瞬間……完全に意識を失ってしまう。俺は……ここで死ぬかもしれない……俺はそう思っていたが……。

リセは俺に攻撃を加える事無く、そのままその場を離れて行く。俺はその様子を見ていたが、何故かは分からないがそのまま眠りに落ちていった。

次に俺が目覚める事になったのは……どうやら、誰かが俺に呼びかけてくれている声によってだった……。

その人物は、あの時見た少女だった……。そして俺は、自分の置かれている状況を確認する……。

リリアが、この国の王女だと言うこと。

そしてリリアが、その事を認めようとしないでいること。……俺が、この国の王に成ろうと考えていた事……。

それを話そうとしたが……リリアはそれを遮り……。

リセさんが攫われた時の話をしてきた……。……そう、リセさんを助けに行った時に、何があったかは知らないみたいだけどな……。それにしてもなんとも思ってないように見えるのだがな……。……そう思いつつ話をしていくと……どう考えても無理をしてるような感じしかしなかったが……やはり心配させないように振舞ってるというところだろうか……。だが……。どうやらそれは違うようだ……。……いや……違わなかったか。リセさんは自分の過去を話してくれたのだ。……そして、この国がリセさんを捨てたと言っていたが、どうにもそうではないようで……。むしろ大切に育てて来たからこそ……この国を出て行ったという話を聞かされていた。……だが、俺はどうしてもリセさんの言う事を素直に信じることが出来なかった……。

俺がリセさんの言葉を聞いて黙り込んでいる間に、リリアは、俺がリリアに対して何を思っていたのか、何故俺に何も相談してくれなかったのかについて問いかけてきた……。俺はその言葉を受けても……特に答えを出すことはなかったのだが…… リリアは、俺を責めたりせずに俺の考えに納得してくれたのだ。……俺はそんな様子を見て疑問を感じていたのだが……。そんなことより、リリアは自分が何者かをまだ明かしてはいないものの、俺に協力をして欲しいということを伝えた上でリリアがさらわれたというのを聞かなければ協力できないと言ったのだ。

それから少しだけ沈黙が続き……それを破ったのはリセだった。

俺は、リセの言いたいことは分かるのだが…… 俺はあえて、その理由を聞いたのだ。……だが俺はそんなリセの気持ちを知ってしまった事で、ますますリリアのことを信じたくなっていたのだ……。だが……それでもリセがこの国の女王になるという意思を変えるつもりがないらしいので、仕方なく俺はこの国でリリアを守る為に戦うことを決意する……。

俺はその決意を示す為……。まずは目の前の敵をどうにかすることにしたのだ。そうしないと話が進まないしな……。俺は少しづつだが、この国の仕組みを理解していく。そうして俺はあることを思い出し……リセに問いただしてみる事にした。

『……ところでさ、あの……この国の王女ってのは誰の事なんだ?』

俺は気になったので質問してみたのだが……。

俺はそこで驚愕してしまう……。この国の王女ってのは…… まさか……あの人だったとはな……俺は……リゼさんのあの態度を見た時から薄々は勘付いていたのだろうが……

『 リリアが……リリアこそが本当の女王だと思っていたんだが……』

俺はリゼさんが言っていた「 お母様とリゼさんがリリアちゃんのお姉さんですよ?」

という一言を思い出していた。……確かに言われてみるとリゼさんもリリアに似ているような気がしたのだ。……そう考えると辻妻が合うような気がしてくる……。俺の中で一つの考えが出来上がっていく……。だがその答え合わせの為には……確かめなければならないことがあった……。

俺が考えているのと同時にリリアの方からも確認するかのような視線を向けられてしまい……。……仕方がなく答えるしかなかった。そう……今から俺がしようとしてることも全てバレてしまった訳なのだが……。だが俺はその事を誤魔化そうとはしなかった……。

リゼの事は知っているが…… 俺は敢えて嘘をつくことにする……。だがリゼには既に知られている情報なので問題はない。だがリセには俺のスキルを使って調べ上げていた事実を伝えていない為に、俺はリリアにこう言ってやったのだ。俺はリセの本心を……リリアに気付かれないように誘導しながら、俺は、リリアにこう言った。

俺達は、リーゼにこの国の真実を聞く事を決意すると……

『とりあえずリリアに聞きたかったことがあるんだけど……。いいか?まず一つ目は、どうして王女だっていう事を言わずに隠し通してたんだ?別に俺には隠す必要はないはずだろ?』……俺は最初に気になっていたことを質問をした。……そして俺の中ではもう既に……答えが出てしまってはいるのだが……

『……私だって、最初から分かっていたわけではありませんよ?私が気付いた理由は簡単ですわ……。この国は昔はもっと平和だったと聞いていましたので。私の家にあった資料を読み漁っていた際に見つけましたからね。でもそれが理由になるんですかね?』

リリアはまるで当然だと言っているかのように話を続けて行く……。その表情を見ていればわかるはずなのに。そしてもう一つ分かった事があるのだが……。恐らくこの話は全部嘘だということだ……。

なぜならこいつは、リリアのことを…… 自分の母親の名前である、リーゼがこの国を仕切る前はリリアの母親はリリアが物心ついた頃には亡くなっていた筈だからだ。だからこそ……今の状況になっているのだが……だが、俺はそれを追求せずに別の話をしていく……。

このリリアの話している内容自体が矛盾している部分がありすぎてもはや何が何なのかが分からなくなってくる程に支離滅裂なものだったが……それを必死に伝えようとしていたのだ……そして……

『そっちについてはわかった……。だが一つ疑問が残っているんだ……。なぜこんな国に生まれておいて王女であることを明かさなかったんだ!?お前だってずっと虐げられていたんだったら嫌だったんじゃないか!?どうしてだ!?俺だったらお前を拾っている!』……そう俺が言うと、リゼさんは顔を真っ赤にして反論し始めた。だが俺の質問はこれだけではない。むしろここからが本番といっても良いだろう……。

『リリアは、自分が生まれつき持っていた力を制御出来ないままこの国に流れ着いて……そのまま誰にも引き取ってもらえず、ずっと一人で生きて来たんだよな……。そして力を制御するためにも頑張って来たけど全然出来なかったからって俺に泣きついて来たんだよな。それで俺がその責任を取って一緒に生活する事を決めたんだ。……そうだろ?』

俺は今までの流れを全て理解した上でこの話をしているのだ。

『 私は、貴方に……いえ。レイ様に拾われ、育てられ、ここまで成長出来たことに感謝しています。……それにあの時助けてくれなかったとしても、私はあの国の姫だとは絶対に名乗りませんでしたでしょう……。……その事に関して……今は感謝の気持ちしかありません。……ただ…… あの国の事だけは……嫌いにならざるを得なかっただけで……その……。えっと……ごめんなさい。……そしてレイ様の仰ったとおり、リセさんに迷惑をかけることになってしまっても……。私はまだ、自分の過去を捨てることは出来なかったのです……。……だって……。私にとってあの国の人たちは……家族だったのですもの……。捨てられる……のですか……』

リリアはその言葉を絞り出した後、俺の目を見て来る。……そう……もう分かっているんだろう……。リゼさんが本当は何を言おうとしているのか……。俺はそれを止めようかと思ったが……。もう止める事が出来ずにいた。そう、これはもうすでに俺とこの子達の問題じゃない。

リリアは涙を零しながらも俺に何かを訴えかけていた……。もう俺にもどうすれば良いのかが分からなくなってきたが……。俺は、この子に自分の本当の気持ちを言える機会を与える事を決める……。そしてリリアの口から出た言葉は……。俺が一番求めていたものだったのだ。

「……私を……一人にしないで……。」

俺はこの言葉を聞いてから少しだけ時間が経った時、俺の心の中に入り込んできていた黒いものが晴れていくような感覚に陥っていた。その言葉は、あの日リリアと俺が交わし合った約束。俺は、それを覚えていてくれていたという事だけでも嬉しかったのだ。

その言葉を聞いた時に俺の中に入っていたものは完全に消えたので、俺はこの子に対して優しく接することが出来たのだ。そして、この子の口から漏れている言葉を聞かずとも分かるくらいにはなったのだ。リリアは自分の感情をぶつけるように、俺に向けて話しかけているのだ。その目からは涙が流れ出ていて、顔中が濡れている。俺は、そんな彼女の頭を優しく撫でながら抱きしめてあげて落ち着くまで背中をさすってあげた。そして、彼女が泣き止むまでの間ずっと、傍に居てやる事にした。この子はきっと寂しいんだと思う。あの日からずっと孤独を感じ続けて生きて来たに違いない……。そう考えると、本当に辛かったのだろう……。だがそれは昔の話で今の状況とは違ったのだ。今は全く違うのに。あの国の人達も悪い人では無かったはずだし……。この子がこうなる前にどうにか出来なかったのか……?この子が辛い思いをする前にどうにかできなかったのか……。それはこの子が決める事では無いと思うが……だがこの子は、もう決めたみたいだし……。

まあそれは置いといてだ……。……まず俺はこれからすることを決めた。それは、この子をもう二度とあんな思いにはさせないという事だ。俺はこの子をもう二度と泣かせたりしないと改めて誓ったのだ。俺はそれからもリリアと会話をして行くうちに……この子の抱え込んでいるものは思っていたよりも重いものだと分かった……。この国に来るまでにどんな経験をしてきたかを想像するととても苦しく思えて来て仕方がなかった。

俺は、リリアの過去を知っているわけではないが俺の勝手な推測でしかないが……リゼさんの話から考えてみれば……俺と同じようにリリアは奴隷として買われたのだと考えることが出来るのだが……だが、そんな考えは一旦置いておくことにしたのだ。そうやって考えていても意味が無いからだ。そう考えたところで何も変わらないのだから……。俺はこの国に来てから初めて自分の意志で人の為に行動することにした……。そしてその相手はもちろんリリアなのだが……。リリアの為に俺ができることは何でもしてやりたいと思っている……。……俺がリリアと話していると、オルキスが割り込んできた。そういえばさっきからいたのだが、俺は気にしていなかったのだ。俺がこの部屋に入ってきた時は確かに驚いていたがその後は普通に話してくれていたので、大丈夫だと思って油断してしまったのだ。……俺としたことが……。

「あのさ、俺……さ、ちょっと外に出てきます!リリアの事は頼みました!」

「 ちょ、ちょっと、どこに行こうと言うんです? それに私達のことも心配していただかなくて結構ですわ。

それよりお話が終わっていないのですから……もう少しだけここにいて欲しいのです。お願いいたしますわ。それに、外に行くのなら私を連れて行って下さいません? 私も……行きたい場所があるのです……。それと、お母様の事はお任せ下さい。お母様の望みを叶えることこそ娘の使命。お父様のお世話は全て娘が致しましょう……」

そう言うのはリゼさんだ。俺達が今話していたことは、聞かれてしまったようだな。俺はリリアにこの事を話そうかどうか迷ったが……。

俺は話すことに決めたのだ。そして俺は……

「……俺は行かなきゃならない所があるんだ……。だからごめんな。俺は、この部屋を出ていくよ……。」

俺がそう言うと、リリアは俺の腕を掴みながら涙を流し始める。俺は……リリアの手を握るとこう言った。

『俺を信じてくれ。必ず帰って来るから……。だからその時は一緒にご飯食べにいこう? だから…… 待っていてくれるか? 絶対に戻って来るよ。約束だ……。……信じてくれるかい?』

俺がそう言うとリリアは笑顔になりながら俺を見つめると小さくコクりと首を振った。俺はそんな彼女を横目に見て、そのまま振り返り、歩き出した。そして、俺の後をリゼさんが追いかけてくる……。

「レイさん、どちらへ行かれるのですか?」

『……俺は……あの子の為だけに生きるって決めてるんだ。あの子と、そしてみんなが笑顔で過ごせる未来を作るために俺は戦うつもりだ。……もちろん君達にも協力してもらうことになるかもしれないけどね……。』

俺の言葉に驚くようにしている彼女。だが俺はその表情を見る前に、目の前にいる彼女に視線を向けたのだ……。俺が今考えている事を話す為に……。そして、その話を聞いた後……俺についてくると言ってくれた……。俺は、俺と一緒に行く事を承諾してくれたリーゼと二人で、俺が最初に目覚めた部屋に向かって歩いている。そして、俺はあの時の話をもう一度最初からすることに……。そうすれば……俺の考えをわかってくれると思ったのだ。

俺は、リリアが俺の事を思い出してくれたあの時から、少しずつ違和感を覚え始めていた。そしてその事に気付いたのは……彼女が俺の名前を呼び捨てにしてくれた時だった。彼女はずっと俺の呼び方に悩んでいた。そう……リリアの言う通りだったのだ。リリアはあの時……自分の名前である『リリー・エルランド』という名前を使ってくれていたのだろう。だが、それだと色々と都合が悪い……。だからこそ、『レイ』と呼ぶ事にしたのだ。だがそれでも……あの時、彼女は俺の名前を思い出せないようだった。なのに……。俺が名前を呼ばれた後に俺も名前を呼んだ時、あの反応を見せたのだ。つまりだ……この世界に来たのは俺だけではなくて……。もう一人いたのでは……。そう考えた俺は、一度、元の世界に戻る方法を模索し始めたのだ。それができれば良いんだが……。だがもし仮に戻れるとしても俺はリリアとリゼさんを置いて戻るわけにはいかない。……二人を残して俺は帰れない。そんなことを考えた俺は……ある決断をする事になる……。そして……俺の考えを話し終えると……。リゼさんがこう言い出したのだ。

「……私も……連れてってください……。」

『え……?でも、君は……。リリアのお母さんなんだよな……。俺は……。』

俺がそう言い切る前に、彼女は言葉を繋げた。

「レイ様の言ってる事はわかります。私が邪魔になる事も。でもいいんです!私はこの子を一人に出来ない……。それに私は貴方の事も……。いえ、それはまた後ほどに。とりあえず私は行きます……。私の身一つなら何の問題も無いはずです。私は私の意思でレイ様の力になりたいのです……。」

そう言っている彼女の瞳には決意が宿っていた。俺はそんな彼女の姿を見ているうちに、一緒に来てくれるのなら心強いと感じていた。それに、正直一人で行動するのには限界を感じていたところもあったのだ。そして俺がこの世界に召喚されて最初に目覚めて見た場所はリゼさんの部屋。その次の日にリゼさんと会えたことで少しホッとしていた自分が居たのは間違いないことだ……。だがそれもつかの間……。あの子と出会い……。もうリリアをこれ以上悲しい思いさせることはできないと感じたのだ……。リリアを悲しませるくらいなら、俺はリリアの傍から離れなければ良い。この子が安心して暮らせる場所を作ってあげれば良いと改めて感じたのだ。そして俺は改めてこの世界で生きていく為に必要な知識を教えてもらうことに……。

それからしばらくリゼさんによるスパルタ授業が続いたが、なんとか理解できるようになってきた気がする……。まあそれは置いといてだ。そしてリゼさんは最後に、こう付け加えた。俺には何か隠し事が有るんじゃないかって……。だが俺はそれを隠さず全部打ち明けることにした。俺がこの国に来るまで何をして来たのか……どうしてこうなったのかを……。

俺は全て話し終えた。そして俺は、今、自分の中にある全ての気持ちを吐き出せた事によって、気持ちがすっきりしているのを感じた。そして、これから先……リリアの事が気になった俺は、彼女に声をかけようとするが、それは出来なかった。なぜならリリアが、俺の顔に両手を伸ばしてきて……俺にキスをしていたからだ……。俺は突然の出来事に驚き、どうする事も出来なかったのだが……。リリアは俺から離れると顔を赤くしながら俯き……小さな声で言ったのだ……。俺も好きになってしまったのかもしれないと……。その言葉を聞いた瞬間、俺は無意識のうちにリリアのことを抱きしめてしまっていた。俺は嬉しかったんだ……。あの子はずっと……孤独に耐えてきたんだと思うと、涙が溢れて止まらなかった。そしてリリアの身体を強く抱きしめていたら、俺はふと……この世界の人たちが皆が笑顔になれるように行動したいという想いが強まっていたのだ。俺はこの子に幸せになって欲しいと本気で思っている。俺の願いを聞いて、ついて来ることを決めてくれたリゼさんの事も同じ様に……。だが……俺がこの世界にやってきた理由を忘れてはいなかったのだ。この子を守るという使命。……俺はその事を改めて心に刻むことにしたのだ。俺は今、俺を慕うこの二人の為に行動しようと思っている。この二人が俺にとってかけがえのない存在となったのだ。そして、リリアを泣かせるような奴がいるとしたら俺は容赦しない……。そしてこの国を救うことができれば……リリアの悲しみを取り除けるようなことが出来るかもしれないと考えている。……リリアがあんな風になっちまったのはこの国の王族たちのせいだ……。あいつらをぶっ潰せばこの国がどうにかできるとは思っていないが……少なくともこの子の心の負担は減らせれるのではないか……と……。俺はそんなことを頭に浮かべながら、リゼさんと一緒に外に出たのであった……。俺の予想していた通りの展開になっているが、俺はその事に特に焦ることはなかった。俺にとってはむしろ望む展開だったのだから……。

俺達が外に行く準備を終えて部屋から出て、扉を開けると、そこにはオルクス王がいたのだ。そして、オルクス王が俺達に言った一言は俺の想定内の言葉だった。

「お主は……この国を変える力を持っているやもしれん。お主に頼めるかの?お主ならきっと成し遂げられると信じているぞ!それに……お主となら楽しくなりそうだからのぉ!」

俺はオルクス王にそう言われるも返事をしなかった。何故なら俺は別にこの世界を救いたいわけじゃないのだ。もちろん困ってる人が目の前にいたら助けるが……。それは俺の心の中を満たしてくれるものなのだから、ただそれを求めているに過ぎないのだ。……俺は、あの時の感覚を再び味わえるならばそれで良かったんだ……。俺は俺を裏切らない人達と一緒に生きて行きたかった……。それを手に入れる為に……。その為だけに俺は動いているんだ。俺を……必要として欲しくて……。誰かの希望に俺の存在がなるのであれば……それでも構わないと思っていたのだ。俺はそう思っていたからこそあの時の質問に対して、答えられなかったんだ。だが、リリアが笑える未来を作り出せるならそれでも良いとも思ったのだ。だから……俺が本当に求めるものが見つかるまでは……。

俺はそう思いながら城から出ようと足を踏み出す。だが、そこに現れたのは……リリアの執事であり騎士でもあるロレンツだった。

「旦那様!どちらへ行かれるのですか?お父様が……呼んでいます……。」

そう言った彼は何故か俺の目をジッと見つめたままだった。俺は……そんな彼に向かって言い放った。俺はもうお前の主ではないんだろう?……俺について来いと言っても……無理に決まっているじゃないか……。俺はもうあの頃の……無邪気に笑ってた俺じゃないんだ……。今の俺は……。俺はそんなことを考えながらその場から立ち去った。だが……後ろからは俺について来るようにと聞こえてくる声がある。だが、俺の事を恨んでいるはずのあの男について行くのだけはどうしても避けたいと思えてしまったのだ。そして俺が歩き出そうとしたら今度はあの子……リーゼとリゼさんの母親が話しかけてきた。

「……あの子を……よろしくお願いします……。」そう言って彼女は頭を深く下げてきたのだ。彼女はリリアの事を心の底から心配しているのだと分かった。そして、リリアが幸せになることを願っているのだとも……。俺は……その彼女の様子に心を動かされてしまったのだ。だが……。

『君達の事を信じていないわけではないが、俺を信用しすぎない方が良い……。』

そう言って俺は彼女の手を取った。

そして俺は……この場から離れようとしたのだ。だがそこで、あの男の叫びが聞こえたのだ。

『レイ様!!私はあなたに命を捧げました!私を連れて行ってください!この先もずっと……私は貴方の為に働きます!私はあの方のために生きているのです!』

俺はそんな彼女の姿を見ると、ため息をつくしかできなかったのだ。あの男は、この世界に召喚されて初めて俺が出会った人物で、俺の専属のメイドになっていた女性だったのだ。名前はアイネと言い、彼女は優秀な回復術師だったが、ある任務の途中で、この国の騎士に殺されたのだ。その後……彼女は、死んだ後も、俺に仕え続けると言ったのだ。だが俺は彼女を仲間に引き入れなかった。なぜなら、俺に仕えると言っても結局はあの女と同じ様なものだからだ。俺はもう同じ轍は踏まないと決めていた。だから俺は……その言葉を聞き流し……再び歩き出したのだ。

そして城の外へ出ると、俺は二人にこの国を出て、まずは他の大陸へ行くことを提案したのだ。そして俺はこの世界での常識を学び始めることになる。この世界にある5つの王国、その1つ【エルドラド】は俺が想像した通りの世界が広がっていた。そして俺達3人はその世界へと歩みを進める……。これから待ち受けるものは一体なんなのか……。この時の俺はそんなこと全く知らなかった……。この世界にはまだ俺の知らないことがたくさん存在しているのだと言うことに。だが俺は……自分の中に秘められた魔力がこの世界でも通用しうるのかを確認するいい機会だと思いながら旅を始めたのである。…………。それから俺はしばらく旅を続けた。途中でリリアと二人で寄り添いながら歩いている時もあったし、リゼさんと一緒にいることもあった。この三人は、お互いを気遣って会話することが少なかったが、不思議と、居心地の悪い雰囲気ではなく、寧ろどこか懐かしい空気に包まれたものだったのだ。だが……そんな俺の旅もそろそろ終わりを迎えようとしている……。この世界の地図を眺めていた俺は……ある事実を告げなければならないと思い至り……。

「二人とも……。ちょっと待ってくれないか……。俺はこの国を離れるよ……。」

「はい……。わかりました。私たちはどうすればよいでしょうか?」

「私たちも付いていきましょうか?まだ私の実力では……」

「ありがとう……。でも俺はこの国に……この世界に残ることにする……。二人は自由にこの国を回ってみて欲しい……。きっとこの国には君の力を必要とされる人がいるはずだから……。俺も出来る限り協力するつもりだよ……。俺はこの国を救うなんて思ってないけど……。二人が笑っている姿を見てみたいって思うからさ……。俺は……リゼさんをこの国に置いていきたいと思うんだ。リゼさんの力が必要な状況が訪れるだろうしね……。リゼさん、この世界で生きるために……色々勉強してくれませんか……?」

俺が真剣な眼差しをリゼさんに向けると、リゼさんは何かを感じたのか俺の目を見てこう言ったのだ。

「……わかりました……。私がどれだけお役に立てるかわからなですが……お手伝いさせていただければと思います。」……こうしてリゼさんはしばらくこの国に滞在することを決めたのだ。これでよかったのか分からないが……。まあそれはそれで良いんじゃないだろうかと俺は思い始めているのだ……。…………だがその時だ!突如として巨大な魔法陣が現れてそこから魔物が現れたのだ!俺は瞬時にそれが危険だと判断して剣を抜き構えるのだが……そこに現れた魔物を見た瞬間、その光景の異様さに言葉を失った。なぜならその化け物は人の身体を持っていたのだから……。

その化け物の名前は、魔王四天王の『魔獣王バアル』、『竜帝アテナ』、『悪魔神ディアボロス』、『精霊王ソロモン』と呼ばれている存在だった。

この世界に来て以来、この世界の人たちの戦闘能力についてはかなり詳しく調べていたが、この四体がこの世界に現れたという話は一度も聞かなかった。つまり……今までこの世界の人々が相手にしてきたどの存在よりも強い相手ということになるのだ。そんな連中をたった一人でどうにかできると思えるはずもなく、俺達は逃げるしかなかったのだ……。

だが俺はこの時思ったのだ。こんな奴らを放置していて大丈夫なわけがない。俺が倒さなければならないと……。それに……リリアの悲しむ姿をこれ以上見たくなかった。だから……やるしかない。たとえ死ぬような目にあっても……。そうして俺は戦うことを決意したのである。

『我こそは真也!この世界を救いにきた者だ!いざ参る!!!』

俺は剣を手に持ちそう宣言したのだ!俺はまず……『竜帝王アテナ』に向かって走り出す。俺は一瞬で距離を詰め切りつけるが……。まるで歯が立たない……いやダメージを与えられてる気がしない! 俺はその後も攻撃を仕掛け続けるが全く効果が見られずにいる。しかも他の連中の動きは異常だった。俺はなんとか攻撃をいなしたり受け流したりするが……隙だらけだった。俺は必死になって戦ったのだ!しかし俺の攻撃は全て避けられてしまう。……俺はこのままでは負けてしまうと判断したのだ。俺は……そうならないように行動しなければならない。だが……そんなことを思っていてすぐに打開策を考えられるわけがなく……そのまま攻撃を受け続けることになってしまったのだ……。

そして俺の命が尽きる寸前……俺とリリアに防御結界を張ってくれていたあの女の子が叫んだのだ。そして俺を……助けてくれたのだ……。俺にその攻撃は直撃してしまった……。その攻撃は一撃必殺と言えるほどのもので、俺は瀕死の重症を負ってしまったのだ……。だが、俺は……あの子の叫び声を聞いて……また戦えるかもしれないという期待が生まれてきたのだった……。だが、あの子はすでに力を使い果たして気絶していた……。だから俺は、その子にリリアを守るように指示すると……俺は意識を失ってしまうのだった……。…………。……んっ?ここはどこなんだ?俺は一体何を……。そう考えているとその少女がこちらを見ていたのだ。俺は彼女にリリアを任せることにしたが、なぜか俺がリリアを連れて行くことになったらしい。俺はまだ頭が回っていなかったせいでその話に了承してしまった。……そう言えばこの子に名前を聞かれて俺が真矢だって答えるのを戸惑っていたんだった……。そして、この子はリゼと名乗ったのだ。この子はこの世界のことをよく知らないようだ。だが、この子は賢いようでこの世界のことを聞きながら俺達の後についてきている。この子がいなかったら俺が今頃どんな目に合っていたかもわからない……。俺はそんなことばかり考えていた。だがそんな俺達も遂に城へ着いたのだ。だがその門の前で立ち止まったままなのだ。そしてリゼは俺に城へ入って欲しいとお願いされた。俺がそれを断ると……リゼが涙をためているように見えたのだ。だから俺はその申し出を受けいれたのだ。俺達はそのあと部屋に入ったのだ。

『リゼちゃん……俺はもう行くからリリアを頼む……。』

『……え?どうして……行っちゃうの……?』

『……ああ……。俺はこの世界を守らなくちゃいけないからな……。』

俺はリゼにそう告げると、部屋の外に出たのだ。だがその瞬間!目の前にあの時の『魔獣王』が姿を現したのである。俺はすぐさま臨戦態勢に入り、攻撃を開始したのだ。

『貴様は先ほど我らに殺されかけたはずだが……。なぜそんなことができるのだ……?やはりその力がこの世界に影響を及ぼすと言うことか……。』

『はぁ!?一体なんの話をしてるんだよ!そんな事より、お前らはここで俺に滅ぼされる運命にある!大人しく死んでいけ!そして、二度と俺の前に現れないでくれるとありがたいんだけど……ダメか……?』

俺の言葉に、『魔獣王バアル』は少し考えると……

『クッ……ハハッ!面白い!貴様を殺す前に……試したいことがある。我と戦わないか……?もし、勝てたら見逃すことを考えよう……。』

俺は、突然の申し出に困惑するが……断れないと直感的に悟ってしまったのだ。なぜなら、その男の殺気は尋常じゃなかったからだ。だが、このチャンスを逃すわけにはいかない。俺はその誘いにのることを決めると剣を構えたのだ。そして……戦いが始まった……。

その戦闘は凄まじかった。俺達は何度もぶつかり合い……お互い致命傷を与えていたのだ。そして、お互いに最後の一撃を食らいそうな時に俺は気づいたのだ。俺の魔力が異常なまでに高まっていることに……。そして、その力を開放すると俺は、奴を吹き飛ばしたのだ。そして……とどめを刺したのだ。その男は俺に倒された直後に消えていき、俺はその場に残されたのだった……。そして俺は……『サジタリウス』の元へ帰還するため歩み出したのだ。……俺はそこで再び眠りについたのだ……。

『ふぅーん……。なかなか楽しめそうだわね。私の力に耐えられるのかしらね。』

『魔王アテナ』と呼ばれるその存在が呟くと同時に俺は目を覚ましたのだ。どうやら俺と彼女は一対一で決闘を行うみたいだ。

『さっきから……お前は一体なんのつもりだ……?』

『あら……あなた、自分の身に何が起こってるか気づいていないのかしら……?』……そうか、さっきから俺の中で溢れ出ているこの魔力が、こいつの言っていた魔力なのか……。なら……この勝負を終わらせないと……大変なことになる……。俺は瞬時に理解したが、どうすれば良いかわからなかった。俺は自分の中にいるもう一人の自分が語りかけてくる声を聞いた。

『私に任せなさい……。私の力は知っているでしょう?私がサポートするから……。貴方はその体を動かせば良い……。』

そう言われてもなぁ……でも……俺もこいつには勝たなきゃならない気がするし……。まあ……いいか。俺は彼女の言葉を信じることにするのだった。

『わかった……。俺はお前を信じてみるよ!だからよろしく頼むぜ!相棒!』……そういうと私は笑い出してしまっていた。私が相棒なんて言われる日が来るなんてね……。……でも……不思議と悪い気持ちじゃない……。

『えぇ!私が貴方の力になるからね!頑張りましょう!二人で一緒にこの世界を救ってみせるのよ!!』……そう言い終わる頃には、二人の精神は完全に入れ替わってしまったのだ。そして、彼女が私の前に立ち、剣を構える……。

『待たせたね……。これから始めるとしよう……。さっさと倒させてもらうぞ……。この身体も長くは持たんだろうからな……。それに……私が負けるなんてありえんことだ……。』

『ははっ!やってみな!すぐに殺してくれる!!』そう言って私達は剣を打ち合った。それはとても激しくて……まるで魂のぶつかる戦いのようだった……。

そうしている間にも彼女の身体からは血が吹き出している……。だがそれでもまだ動けているようだ……。それに……この子の動き……どこかおかしい……。何かが彼女を支えているような感じを受ける。それが一体どういう意味を持っているのかまでは分からないけど……。そんなことを考えていると……また彼女は笑みを浮かべていたのだ……。

『この程度か……。そろそろ終わりにしてくれないか……。お前に用はないんでね……。……まあ……もうすぐ終わるとは思うが……。早くしないと死んでしまうぞ……。』そう言っているが……その顔は笑ってはいなかった……。まるで本心を隠すようにわざとらしく微笑んでいるように見える。そんなことを思っていると……今度は私に話しかけてきた。

「なあ、知ってたか?あんたが使ってるこの力のこと……。まさかこんなに強い相手と闘う羽目になるとは思ってもなかったんだがな……。この力を試せる機会をくれたあいつに感謝しねぇとな。」そんなことを言われたのは初めてだった……。その言葉の意味はわからなかったが、おそらく私の力についてだろう。だけど……こんなところで殺されるわけにはいかない。だから必死に抗った。……その結果は……相打ちに近い状態になり、お互い地面に膝をつくのだった……。

それから暫くの間、意識を失い倒れ込んでしまった……。

俺は意識を失う直前に誰かが駆け寄ってくる音が聞こえた。俺はその人に向かって叫んだのだ。そして俺は再び意識を失ったのだった……。……そして俺が再び意識を取り戻すのに数日かかってしまったのだ。そしてその期間の記憶は一切なかったのである……。ただその間ずっと、この世界には存在しないはずの気配を感じていた。その存在感はとても強く感じることができた。しかし姿を確認することは出来なかったのであった。俺はしばらく警戒していたが何も起こらない為諦めて再び眠りにつくことにしたのである……。そうして俺が起きてから1年程経ったのだ。だが俺はまだ子供のままの姿だった……。俺は疑問を持ちながらもこの国のために頑張っていたのだが……ある日を境に状況は変わったのだ。その状況が変わるまでの日々を思い出してみるとそこには一人の少女が現れたことで俺は変わることになったのである……。

あれはいつも通りリリアと訓練をしている時のことだったが……。急に城の扉が開くとそこからは見たことのない女の子が飛び出してきたのだ。その子はこちらを見るなり走り出していたのだ!そしてリリアの元に辿り着くといきなり頭を下げた。その子が何者か分からず混乱していた時だった……急にリリアが大声で叫び始めたのだ!……いや、叫びながら泣き始めていたのだ!その時に俺はその子に何かをされていたようで体が動かなかった!

「真矢さん!!!助けに来てくれてありがとうございます!!」

リリアは涙を流しながらこちらに抱きついてきてそう言ったのだ!俺は、リリアが泣いている理由はわからなかったが、その子が俺を抱きしめてくれたことが嬉しかった。そう、この子がリリアの大切な人で間違いなさそうだった。そのあと、俺はようやく動くことが出来るようになり話を聞くことができたのだった。

まずこの子のことからだが……。どうやら彼女はレイアさんの知り合いらしい……。この国の第一王女で名前はアイリスというそうだ。リリアの幼馴染でありリゼちゃんの姉でもあるらしい。その容姿はまさにお姫様そのものと言ってもいいくらいの可愛さを誇っていた。そしてその容姿だけではなく性格も良かった。そして……なぜかこの世界のことを知らなかったのでリリアから教えてもらいつつこの世界のことを説明し終えた時には既に空が暗くなっている時間になっていたのだ。

俺はこのままリリアの家に泊まるつもりだったが……。どう考えてもこの子に迷惑をかけてしまうと思ったのでリリアに断ろうと話しかけたのだ。

『リリア、すまない……。この子は君の大事な人なのかもしれないが、今日だけは君の妹の部屋を貸してくれないか?……流石に俺も男だからな……。年頃の男女が一緒に寝るのはマズいと思うんだよ……。だから俺の事は気にしないでこの子と仲良くしてほしい。』そう言って俺はその場から離れようとしたが……服が掴まれていることに気がつき、後ろを振り返ると……涙目で上目遣いをしながらこちらを見つめるアイちゃんがいたのだ!俺は、それを見ただけで……理性が崩れ去りそうになるのを抑えるので精一杯になってしまっていてどうすればいいかわからないのであった……。だが、その時俺は、この子を泣かせたくないと何故か思ったのだ。なので……仕方なくだが……俺の方からお願いをしたのだ。そのお願いは、もし良ければ今度俺とも遊んで欲しいと言うことだった。……もちろんその願いは受け入れてもらえることになった。そしてその日は、結局その二人と同じベッドで寝たのであった……。翌朝起きた時の光景は……見なかったことにしておこうと思う……。……俺はその次の日から城に通い出したのだ。アイちゃんも一緒についてきており、護衛も兼ねて一緒にいたいと言っていたが……それは丁重に断ったのだ。

俺は、城に出入りをしてから数日が経ちある事件が起こったのである……。それは俺が王と会話をしていた時に王からの一言から始まった。それは……

『真也よ。そなたに頼みたいことがある……。この国に滞在する間だけで良いから、そなたに騎士団に入って貰いたいのだ。そなたならこの国でも十分通用する実力を持ち合わせていると思っている。そして……この国からは勇者がいなくなった以上戦力の強化をしなければならないのじゃ……。そなたには、その力を振るう場を与えたいと考えておる……。そしてそなたにとっても、この国は安全とは言えない場所になってしまう。そこでじゃ……。』

そこまで王が言うと俺は言葉を遮るように口を開いたのだ。俺は、正直この話を断ろうと考えていたのだ。なぜなら俺はこの国が嫌になっているからだ。そんなことを考えている俺に対し王は……『もちろん報酬は与えよう。この国の王女を好きにする権利を与えよう。』その言葉を聞いた瞬間、思わず耳を疑ってしまった。俺は今までこの王様の事を信頼していてこの人に着いていこうと思っていたが……。それはもう過去の事だと決めつけていた。だけど……今は違ったのだ……。この人は俺を利用しようとしている。それはなんとなく理解できた。この人と話す前からこの人が何か隠していることは分かっていたが……。俺はその提案を受けることにしたのだ。俺には断ることができなかったのだ……。俺だって死にたくはない。

そしてこの日を境に俺は騎士となり、この世界で最強の部隊の一員になる。だが俺は、この時のことを後に後悔することになる……。

それから暫くはアイちゃんと訓練を行いつつ平和な日々を送っていった。だがそんなある日の事だ……。その日俺は珍しくアイと一緒に訓練を行なっていたのだ。その理由というのは……あの時の王の言葉である……。俺は、王の言葉がずっと頭の中に残っておりモヤモヤした気分を抱えていたのだが、それを紛らわす為にひたすら体を動かして汗を流したかったのだ。そして、そんなことを考えながらもいつも通りのメニューをこなそうとしている時だった。ふと見覚えのある顔を見つけてしまったのだ。そうして俺は咄嵯に身を隠し様子を伺った。

「ねぇ!そこの騎士さん!私達とお手合わせしてくださらない?」そこには4人の女性達がいたのだった。その中のリーダーらしき女性に話しかけられた俺は少しだけ悩んだ末、受けることにしたのだ。

そしてその日の夜。俺は久しぶりにアイに剣を向けて戦っていると突然現れた女性が俺に向かって攻撃を仕掛けてきたのだ。俺はギリギリのところで避けきることができた。俺はすぐに体制を整えその人物を見るが……その姿を見た俺は唖然としてしまった。それはそこに居たのは俺が元の世界で一番大切に思っていた少女だったのだから。俺は、自分の感情が抑えきれずに彼女に抱きついたのである。彼女は驚いてはいるがどこか嬉しそうな表情を浮かべており抵抗することはなかったのだ。それからしばらくして彼女は落ち着きを取り戻し俺に説明を始めたのだ。どうやら彼女達は冒険者でAランクのパーティらしくこの国にやってきた目的が俺たちと同じように魔獣を倒しにきたらしくたまたま出会ってそのまま行動を共にしていたらしい。そして彼女達と別れたあとに俺と出会し戦闘を行ったのだという。その話を俺は黙って聞いていたが……最後の言葉で思わず動揺してしまい、隙が生まれてしまい……攻撃を受けそうになったところで、なんとか回避することができたのだ。

「私ね、貴方とまた会いたかったの……。だからまたあえてすごく嬉しいの……。私は真耶、真矢の双子の妹……。真矢がこの世界にいるはずないのはわかっているの……。けど、やっぱりまた……会いたいと……願っていたの。」そう言い終わると同時に真矢はその場に倒れたのだ。俺は慌てて真矢を抱き抱えて急いで宿まで戻り回復魔法をかけたのである。しかし……。一向に目を覚まさず、いつの間にか俺は寝てしまっていた。そして次の日の朝……目覚めるとそこには……まだ幼いが大人になったら綺麗になりそうな顔つきの少女の姿があり、そして俺は……この子が昨夜出会った少女であることを確信したのである。そしてその少女は俺の顔を見て嬉しそうにしていたのである。それから俺が起きるまでの間に色々と話を聞いたのだ。まずこの子の名前はアイリスというらしい。年齢は13歳らしいのだが見た目が5~6歳程度しか見えない為もう少し幼く見えたのだ。そしてこの子がどうしてここに来ていたのかを聞くと、なんでもリリアからこの国の様子を見てくるように言われたのとリリアの様子がおかしかったらしいので気になっていたらしいのだ。その話をしてアイリスが泣き始めてしまって俺はどうしたらいいかわからなくなってしまったのだ。

『大丈夫だよ……。リリアのこと心配してくれてありがとう。リリアと仲が良くて安心したよ。』そう伝えると今度は照れ始めたので……可愛いと思っってしまったのだ。するとアイリスは自分の過去を話し始めたのだ。俺はその話を聞いて驚きを隠せなかった。なぜならその話はリリアに似ていたからだ。その話を聞き終わったあと、俺はその日はアイに別れを告げこの場から去ることに決めたのである。その翌日、俺の予想通りアイリスはこの国にはいなかったのである。俺は、このあとアイリスの代わりの王女の護衛を任されることになる。

アイリスとの一件から一週間程が経った頃だった……。その日は珍しくレイアから呼ばれて部屋に向かうとレイアはなぜか悲しげな表情をしており、何かがあったのだということだけは分かったので俺はレイアに声をかけることはせず、話があると言うレイアに従い部屋に向かったのだ。その部屋では……俺を呼び出した本人であるレイアは、深刻な顔をしているのにも関わらずその口調はとても明るかったのだ。

『まあ、そんなところに座ってちょうだい?……まず先に謝らせて欲しいんだけど……これから言うことは私のワガママでしかないの。だから無理にとは言わないし……嫌ならはっきり言っていいわ。だけど……どうかお願いします……。私のワガママを受け入れてくれないかしら?』いきなりそんなことを言うもんだから何がしたいのかさっぱりわからない俺だが、とりあえず了承する事にしたのだ。そうして、ようやく本題に入ったのである。その内容は……。

俺の力を確かめさせてほしいというものなのだ。そう、つまり模擬戦の相手をして欲しいとお願いされたのであった。もちろん俺としては断る理由はなかったのでその申し出を受けたのだ。そうして、俺はその日に模擬戦を行うことになったのであった。そういえばこの時……なぜか俺には予感めいたものがあり、絶対に勝つことはできないだろうと……なぜかそう感じたのだった。

それからしばらく経ち……遂にその日が来た。その日は特にこれといった予定はなかった為、朝から王城の鍛錬場に向かい準備を行っていたのだ。その準備を行っている際に王と話すことがあったのだが……その時にふと思い出したことを口にしたのだ。そうそれは……俺が初めてこの国に訪れた時に……城の前で警備していた騎士の一人……確か、名前はアルタイルと言ったはずだ。そいつのことを思い出したのがきっかけで……俺の中では一つの疑問が浮かんできたのだ。その疑問というのはなぜ俺に対して警戒をしていたのか……というものだ。その理由を考えていて……もしかしたら俺が勇者じゃないとわかった上で監視をしていたんじゃないかと……。そこで俺は考えた結果、この国に来てからも何度か城の中で見張られている感覚を感じていたので……もしそれが正解だとするならば今回の件に関係があるのではないかと思いその日はずっと考えていたのである。

それから暫くは鍛錬を続けたのである。

それから数時間が経ち王と会う約束の時間になり指定された場所へと向かった俺はそこでアイと出会ったのだ。その姿を見て思わず抱きしめそうになってしまったがなんとか踏み止まったのだった。

それからしばらくして王は俺の元へ来て話しかけて来たのだが、その時に俺にはどうしても許せない事が起こったのだ。なんとその王は、俺の大切な人である真矢……いや、今は真耶か……その名前を汚した挙句、その身体に触れてきたのである。俺は、我慢の限界を超えその行為を止めさせようとして行動に移そうとした時だった……その王が俺を睨みながら殺気を放ってきたのである。そして俺はそこで……恐怖を感じたのだ。その目は今まで向けられたことの無い……まるで……親の敵を見ているようなそんな目をしていて……。俺は……何もできなくなっていた。その時だった……。俺の目の前に一人の人物が姿を現し、王に近づき話しかけてきたのだ。そしてその人物こそが、その王の行為を俺の目の前で止めた人物であった。

その人物こそ、俺の元の世界の知り合いである、久遠真也その人であった。その人はいつも通りの優しい笑顔を浮かべていたがその目の奥には怒りが見えていたのだ。俺は、俺の大事な人に手を出されたことで我を失いかけてしまいその男に攻撃を加えようとしたが……久遠くんどうが俺に話しかけて来るなり俺に向かって何かを言ってきて俺の頭に響いた。そして、俺は意識を失ってしまったのである。その後俺が目覚めたときには全てが終わっていたのだった。それからしばらくして俺のところにやって来たのはアイと真矢の妹であるアイリスであり俺を心配して来てくれたらしいのだが……。その二人と話す前に……俺は自分の力を確認するためにこの国最強の部隊のメンバーがいる場所へ向かおうとした。その道中俺は、久しぶりの真哉と会ったのだが……どうやら俺が知っているよりも性格が変わったみたいだなと少しだけ思っていた。そしてそんなことを考えているうちに、俺は目的地に到着していた。そしてそこにはすでに、最強の部隊のメンバー達が集まっており……俺はそこに一人混じるような形で入っていくと、突然メンバーの一人であるアイラから話しかけられたのである。そして何故かそこからは自己紹介が始まったのだが、正直面倒だったので適当な理由をつけて抜け出し俺は訓練を始めることにした。その最中、他のメンバーの視線を痛いほどに感じる中、そのメンバーの中から突然、俺の背中にナイフが飛んで来たのである。それを確認した瞬間俺はその場から大きくジャンプをした。その俺が立っていた場所にはその投げられたと思われる人物が居たのだ。そしてその人物をみて俺は、言葉を失ったのである。その人物は、アイリだったのだ。そしてそのアイリを見た途端に俺は……頭が真っ白になりその場で動けなくなってしまったのである。するとそこに、久遠くんがやってくるなりアイリとアイリをここまで連れて来て俺を攻撃した奴を捕まえたのである。その男がどうやらアイリスを連れ去って俺達を襲わせたらしく、アイリスも俺達の仲間だということがわかり……俺は思わず涙を流しそうになったが……なんとか耐えることができた。そして……俺は、アイリスから聞いた話を聞いて思わずアイリスを抱き締めたい気持ちに襲われたのだが……俺は必死に抑えてアイリスの身体を支えてやりなんとかその場に立たせることができたのである。

その後は、俺は……この国最強の部隊を纏め上げ、この国を守ることを誓ったのだ。

俺とアイリスは、久しぶりの家族と会い……懐かしさに浸っていた。アイリスの話によると、俺がいなくなってからリリアはかなり変わってしまい、どこか……壊れてしまったかの様な状態になっていたのだという。そんなリリアを俺は放っておけずにどうにかしようと努力していたようだ。俺は、アイリスにそのことを感謝すると……俺の言葉に対して照れ始めた。そして、俺はこれからの行動に関して相談を持ちかけたのだ。そう……この国に滞在しているという勇者の捜索についてと、勇者が現れた場合に備えてのこと、それからアイリスの身辺警護などを頼みたかったのである。アイリスにそうお願いし終えると……アイリスは快く承諾してくれた。そして……俺はそのあとに久しぶりの親子の会話を楽しんだ後、この王城からアイリスと共に離れることにしたのである。

俺達は王城から離れようと移動すると、そこにはアイリの護衛として付いてきてくれたアイリスの姉であるアイがいたのだ。どうやらアイリの事が心配になって探し回っていたらしい。そして俺に気づいたアイリスはアイを見つけアイリスはアイの元に駆け寄り二人で話をし始め、その間に俺が久しぶりの母さん……久遠くんと話すこととなった。すると、母さん……じゃなくて……姉さんから衝撃的な事実を聞かされる事になったのだ。そう……俺が元いた世界の久遠家……つまりは家族全員を皆殺しにしたのが自分の実の父親だったということがわかってしまったのである。しかもそれを指示したのがその父親本人だということで俺は怒りで震え始めた。だがそれと同時に、俺の中にある感情が生まれたのである。それは……父さんへの復讐心ではなく、憎しみでもなく……悲しみの感情だった。なぜそんなことになったのか……どうしてそうなったのかを聞きたくてももう既に父はこの世の中にはおらず俺の中で消化不良気味のまま、とりあえず俺は、今後起こり得る事態に備えたのだ。

それから俺達がしばらく街を見て回っていると……一人の少女と出会ったのだ。そう……その出会った子こそが俺の初恋相手だったアイなのだ。そして俺がその子を見つめ続けていると、なぜかその子は顔を赤らめ俺の目線を逸らすようにそっぽを向いてしまい俺は、なぜそっぽ向いてしまうのか分からず不思議そうに見続けていたのだ。そうこうしているとアイは突然俺の事を抱きしめてきて俺は困惑しながらも……俺はアイを受け入れていた。そしてしばらくした後俺は、そのアイとの抱擁を終えたのだが……。その光景を見た周りにいる人々は微笑ましいものを見るかのような眼差しで俺達の事を見ていて恥ずかしくなった俺はすぐさまその場から離れたのだった。そう……その時俺の顔が真っ赤に染まり、心臓が破裂しそうになるくらい鼓動を早くしていたことに気づかないふりをしながら。

そうしてしばらく時間が経ち、夜が訪れた。

それから俺は、俺達の為に部屋を用意してくれたアイの両親に感謝しながらアイの部屋に通された。そして、その部屋に用意されていたベッドに横になると俺は深い眠りについたのであった。……

「……い……きて……」

ん……?なんだ……俺は寝ていたのか……

「おきて……起きてください……」

俺はその言葉を聞いた途端すぐに目を覚ました。そう……俺に声をかけたのは……その……あれだよ、うん……そう、俺の幼馴染みのアイだった。……いや違うな、今のこの子は、アイリスだったんだ。……でもまあそんな事はどうでもいい、今この場に居るのは俺と、この目の前で心配そうに見ている女の子……アイの二人だけだ。俺はこの世界では久遠家の子供になっているんだろうけど今は、まだそこまでのことは理解できていないからな……。この子の……アイの為だけに生きてあげないと……。それに、俺にはやることがある……。

アイの両親は今日は忙しいとかなんとか言って朝早くから出かけて行き、俺とアイはこの部屋に残されたのだが……俺はアイに、この王城の中を案内してもらおうと思っていた。なぜなら俺は……俺達を守ってくれるこの国の人達と顔を合わせるわけにはいかないのだ。だから俺としてはなるべく早めに、ここを立ち去る必要があるのだが、それをいきなり切り出すのはまずいだろ……と思いアイと話し始めることにしたのだ。

アイの案内で俺達は城の中庭に出るとそこには、たくさんの花が植えられていて俺は、アイと一緒に見渡せるその綺麗な景色に感嘆した。そして、俺とアイはその庭に生えている木の下に移動し、そこでしばらくの間、二人で会話をすることになったのだ。そしてそこでわかったのは、アイが、あの事件以来あまり笑わないようになってしまったという事だった。そんな話を聞いて俺はアイのことを少しでも楽にしてやりたいと思ったのだ。そこで俺はアイと楽しい話をするために色々と話しかけていくうちに俺とアイはお互い惹かれ合い恋をすることになる。そして俺達は互いに名前で呼び合うようになりさらに距離が縮まる中、突然アイが俺に告白をしてきやがったのだ。俺は……その気持ちが凄く嬉しかったのだが俺は……俺はアイに何も答えを出せずにいた。すると……そこに現れたのは、俺の……真矢の兄である真哉だったのだ。その男はアイリを連れてどこかへ行ってしまい俺は、追いかけようとしたのだがアイに止められてしまったのだ。そのアイの態度に腹が立った俺はアイに向かって怒りをぶつけたのだ。だが……アイの瞳に涙が溜まっていることに気づいた瞬間俺の怒りは霧散していき、そして俺はその場から逃げてしまったのである。そして俺が逃げ出した先で俺は、久遠とアイリに出会い俺が真矢だと知った上で話しかけてくれたのだ。俺は、その二人の対応にとても喜びを覚えそしてその二人を信頼できると判断した俺は、俺の目的を話し協力を求めたのだ。そしてその話を聞いた二人は、その俺の計画に協力してくれて、その計画のために行動を開始したのである。そして……俺が考えた作戦がついに実行に移される時がやって来たのだ……。そう……俺は、ある人物に会うため……その人物のところに訪れていたのである。そして……その人物は俺の前に姿を現わすと俺は……言葉を失ったのだ。そしてその人物はそんな俺を優しく抱き締めてくれるなり俺が会いたかった人の名前を教えてくれて……その名前は……久遠だった。そして久遠に俺は抱きしめられたまま涙を流し続け……そして俺は、久遠くんのおかげでなんとか落ち着きを取り戻してから俺はその場を後にすることにした。それから久遠くんは、アイに呼ばれアイの元へ行った。どうやら久遠くんは、アイに好意を抱いているみたいだ。

久遠がアイと話している姿は……正直……見てられなくなるぐらいに辛かったのだが……それでも……二人が幸せになるために俺も、自分のできる範囲でサポートしていこうと思う。そして……久遠がアイを連れ出してどこかへと行く途中、アイは久遠に何やら頼みごとをしていて、久遠はそれを了承していたが……それがどういう意味なのか、その時はわからずに居たのだ。

そして久遠達は俺の前から姿を消すと……俺は……この国で一番偉い奴に謁見を求めようと歩き始めた。そう……この国で最高の地位を持つ奴に会いに行くことにしたのだ。

その後しばらくしてから俺の前に現れたのは……アイリスと久遠の父さんである久遠くんの父親で俺と血が繋がっているであろうその人だったのだ。そう……この国の王である……久城聖哉その人だった。その人が王として君臨していたのは意外と長く、俺は驚いたがその理由はすぐに分かった。

その王城の中にいた人達が全員……アイリやアイリスと同じ……『サジタリウス』の人たちで全員がアイの知り合い……いや家族同然の関係の者たちだったからだ。そしてその事に俺が驚いていると久城王は何やら訳ありな雰囲気を纏いながら俺に話しかけてきて俺は思わずその言葉に対して警戒心をあらわにしていた。

そして、久城王はそんな俺の警戒を解くためか、俺の生い立ちから今までの人生を俺の質問に素直に応えていき俺はそんな久城王を見て少しずつ信頼を置くようになったのだ。そう……俺と久城王の邂逅は、この世界での再会を果たした時に始まったのだった。

そして、久遠とアイがこの国にやってきたのは……この国が滅びようとしていると久城王が感じ取ったからなのだと俺は気づいた。そして久遠は……この国を救うためにアイと二人で動き出したということが分かり、俺もこの国に滞在することを決めると俺は王城の外へと出ることにしたのだ。

そうすると俺の前にはなぜかアイリの姉でアイの母親でもある久城アイが現れたのである。そうして俺の目の前で俺達三人はこの世界のことについて話をするようになっていった。そこで俺はこの世界に俺の知っているゲームによく似た世界観の世界だということが分かったが、俺はあえてこの世界の情報を収集することなくこの国の人たちの事を信用していったのであった。それから数日後……俺は久城王にある相談を持ちかけたのだ。それは、この国から出る手段が無いか?というものだった。その俺の問いかけに対し、この国の人たちは俺と別れることを嫌がり、なかなかこの国から出て行こうとはしなかったのだが、俺はこの国に留まるわけにもいかないのでどうにか説得をしようと試みたのだが…… そうこうしているうちに久遠とアイは二人だけで旅立ってしまったのである。そして残された俺達は久遠たちが帰ってくるまで待つことに決めたのだった。そして……

「ねえ……私と付き合ってくれないかな?」

俺は、アイに突然そう言われ困惑したが、俺はアイの真剣な眼差しを見て俺はアイの告白を受け入れたのだ。そして俺達は互いに名前で呼び合うようになり、その日の夜は、二人で一緒に寝ることになったのである。そして、アイは俺に腕枕を要求してきたのだが俺はアイの要望通りにしてあげるとアイは満足そうに微笑みながら眠りについたのだった。そうして俺はアイの事を好きになったんだ。

それからしばらく経った頃、久遠とアイがこの王城に帰ってきたのだが、なぜかアイは俺のことを睨むようになっていたのだ。それを見た俺は、アイが俺のことを嫌ってしまったのかと思い落ち込んでしまうと、アイは突然俺に謝ってきて、なぜ俺を睨んでいたのかを説明し始めたのだった。そう……俺がアイの告白を受け入れてくれたのにもかかわらず、俺がアイのことを放置し続けたせいでアイが拗ねてしまい、その事が俺に対する憎しみに変わってしまったのだという。そして、アイはその事について謝罪をしてくれたのだ。俺はアイのその態度に嬉しく思いアイのことを抱きしめるとアイは顔を真っ赤に染め上げながらも受け入れてくれて、そしてアイと俺は恋人同士となったのだった。

そして、アイと付き合い始めて数日が経ち、俺はアイにとある場所に連れていかれることになる。その場所は……この国で最も高い塔……つまりは、この国の象徴のような場所である。そして、その最上階に到着した俺達は、そこから見える景色に目を奪われ、アイは俺に、この場所からの景色を見せたかったらしい。そしてアイはその景色を眺めている中……俺に向かって告白をしてきたのだ。そして俺はその告白を受け入れ、俺達は晴れて両想いとなり正式に付き合うことになったのだった。

そして、俺達がこの国に滞在し続けてから数週間が経ち久遠たちはようやくこの国に戻ってきた。その久遠は、アイの両親である久城王に何かを報告していて、その報告を聞いた久城王の顔は青ざめていて……一体何の報告をしたのだろうかと俺は疑問に思ったが、その答えは久遠が教えてくれた。そう……久遠がこの国に訪れた理由は……この国の滅亡の危機を救いに来たからだったのだ。そして久遠はその方法を教えてくれたのだが、その内容を聞いて俺は、久遠がどうしてそこまでしてくれるのかが分からず、久遠にその事を聞くと久遠は……俺のためだと言ってくれたのだ。そして俺はその事を聞いて……涙を流すほど感動してしまった。なぜなら……俺のためにここまでしてくれようとする久遠の行動が……本当に嬉しかったから……。

それから俺は、アイと久遠と一緒に王都観光を楽しむことにし……久城王が俺たちのために用意してくれた宿で一泊することになったのだ。そして次の日になり、俺と久遠とアイは王城へ訪れることにした。その目的は、俺の師匠となる人物に久遠を紹介しようと思ったからだ。そして、俺が王城の中に入るとそこには、アイリスとその両親がいて俺はアイリス達に挨拶をすると、アイリスは俺の方に駆け寄ってきた。

そしてアイリスは俺に向かって突然キスをしてきやがったのだ。そのアイリスの突然の行為に俺は驚き、アイリスを引き剥がそうとするがアイリスは俺を離そうとはせず、そのままの状態で数分が経過していくと、そこに現れたのは久遠だった。そして久遠はアイリスのその行為を咎めるようなことはなく、ただ笑顔でアイリスを見つめていたのだ。そしてアイリスは、その久遠の視線に気づくと俺から離れていき久遠に向かって話しかけたのだ。

そうしてアイリスは久遠を連れてどこかへと行ってしまい、俺は一人で久遠の父親の久城王のところへ向かうと、久城は俺の事を歓迎してくれて、俺に久遠を弟子にすることを勧めてくれたのである。そして俺はその話を受け、久遠を弟子にすることにした。

そして、俺と久遠が王城を後にしようとした時、久城王が俺を呼び止めて俺にこんなことを言ってきたのだ。

「君は……これから先、様々な試練に見舞われるだろう……。だが私は君を信じて、この国の未来を託したいと思っている……。だから……頑張ってくれ」

その久城王の表情は、まるで息子を思う父親のように思えて俺は……その久城王の言葉に涙を流してしまった。そして俺は久遠を連れてこの王城を出て行き、そして久遠と共に旅に出ることにしたのである。

それからしばらくして、俺と久遠は、ある街にたどり着くと、そこでは盗賊団が暴れ回っていたのである。その光景を目にした俺は、久遠とともにその盗賊団退治に乗り出そうとするが、久遠が俺の事を止めに入ったのだ。そして久遠は俺にこう言ったのだ。

「ここは私に任せてください。この程度の相手なら……私でも十分対処できますから……」

そう言って久遠は、俺の制止を振り切り、盗賊団の討伐に向かったのである。そして俺は、久遠が心配だったため、久遠の後を追いかけていった。そして、久遠は、その盗賊団を一瞬にして片付けてしまい、俺はそんな久遠の姿に唖然としてしまい…… そして久遠は、その盗賊たちを縄で縛り上げて街の衛兵たちに引き渡した後、俺の元に戻ってきた。そして久遠は俺の方を見ると突然笑みを浮かべ、そして久遠は俺に抱きついてきたのだった。そして久遠は俺にこう言ってきたのである。

「先輩……私のこと……守ってくれましたよね? 私が危ないって思って……駆けつけてきてくれたんですよね? ありがとうございます。そのお礼として……今夜は、たっぷりと可愛がってあげますからね? 覚悟しといてくださいよ? ふふっ♪」

そう言うと久遠は俺から離れて俺の手を取り、歩き出したのだった。俺はそんな久遠に引っ張られるようにして歩いていくと久遠はある店の前で止まり扉を開けると俺の手を引っ張りながら店の中に入っていき久遠はその店で食事を注文していたのだ。

そうして食事が来るまでの間、久遠と会話をしていると突如として店の外が騒がしくなり俺は久遠に警戒するように伝えると久遠は、俺の腕にしがみついてきやがったのだ。そうしていると、突然店内に誰かが入ってきて、その男は俺達の方を見るなりニヤリと不敵な笑みを浮かべてこう言い放ったのである。

「ほう……? これはまた……珍しい組み合わせじゃないか? 久城聖哉と久遠ちゃんが一緒なんてなぁ? それにしても……久城聖哉? お前さん……久遠ちゃんに手を出したのか? まあ……久遠ちゃんほどの美少女が側に居たらそうなっちまっても仕方ねぇか?」

そう言って俺の元に現れたのは、俺と血の繋がりがあるであろう久城王の弟……久城剣斗であった。そして久遠は久城王弟に対して敵意を向けて、俺を庇うように前に出たのである。そして久遠は、久城王弟に鋭い眼光を向けながらこう言った。

「あなたには関係のないことです。さっさと消えなさい。今すぐにです!」

久遠は、そう久城王弟に向かって叫ぶと、久遠は腰に差していた刀を抜き放ち、構えを取った。すると久城王弟は、苦笑いをしながら両手を上げ降参するようなポーズを取る。そして久城王弟は、ゆっくりと俺達の元へ歩み寄りながらこう言ったのだ。

「おいおい……いきなり物騒なものを向けるんじゃねえよ。俺は別に争うつもりなんかねえんだからな。そもそも俺とあんたじゃ力の差がありすぎるんだ。俺は戦う気はねえからな。大人しく帰るとするぜ。ただ……一つだけ忠告しておいてやる。あまり久城聖哉にちょっかいださないほうがいいぞ? この国はもうすぐ滅びちまうんだからな。それと……久遠ちゃんが俺の姪だってことは黙っとけよ? そしたら……俺は本気で戦わなくちゃいけなくなるからな。そん時は……俺も手加減はしないからよろしく頼むぜ? 久遠ちゃん……いや……久城家の末裔の久遠姫様……?」

そう言うと久城王弟は、俺に視線を向けて……

「久城聖哉……久遠の嬢ちゃんは、お前さんのことが大好きらしいから……大事にしろよ……? 俺の大事な妹なんだからな。それじゃあな」

そう言って久城王弟はこの場を去っていったのだった。そして俺は、久遠の方に視線を向けると、久遠は顔を赤くしながら俯いていたのである。それからしばらくして、食事が届くと、俺たちはその食事を食べ始めたのだが、俺は、先程の久城王弟の言葉が気になっていたため、久遠に聞いてみたのだ。すると久遠は、少し悲しげな表情を浮かべて俺に説明し始めたのである。

「実は……この国の未来は、既に破滅に向かって進んでいるんです。この国を滅ぼそうと企んでいる集団がこの国に潜伏していて……その者たちがこの国を崩壊させようとしています。そして……その者達がこの国を崩壊させる前に……この国の王族である私たちがこの国を守らなければなりません。だから……この国を守るためには……あの人の協力が必要なのです。それが……久城王弟……久城剣斗……つまりは……あなたのお父さんの力が必要なんですよ。だから……私は……この国を救おうとしているんです。お願いします。どうか……協力してくれませんか……? 父のために……この国のために……そして……私のために……そして……私の愛する人のために……私と一緒に……戦ってください! 」

そう言って久遠は、俺に頭を下げて頼み込んできたのだ。その久遠の真剣な態度に俺は……心を動かされたのである。

「久遠……俺は……久遠の気持ちに答えるために……お前と一緒に戦うよ。だから……顔を上げてくれないか……? 」

俺がそう言うと久遠は俺の顔を見つめてきて、そして……俺に抱きついてきたのだ。

「嬉しい……です。私……先輩と一緒に戦いたいと思っていたんですよ。ずっと……先輩と一緒にいたいと思っていました。これからは……二人で一緒に頑張りましょうね。私は、先輩のためにならどんなに辛い修行にも耐え抜いて見せますから……」

そう言って久遠は、俺にキスをしてきやがったのだ。そして、久遠と俺が唇を離すと、突然、俺達の目の前に光の玉が現れ、その光の玉は、俺の体の中に吸い込まれていったのである。そして、その光の玉を吸収した瞬間、俺の体に異変が起き、俺の体が発光し始め、その現象に驚いた俺は慌てて自分の体を確認をしようとすると、俺の全身に魔法陣のようなものが浮かび上がり、そして俺の髪の色が真っ白に染まっていったのである。

そして俺は、久遠の方を確認すると、久遠の体のあちこちに同じような模様が浮き上がっていて、その光景を見た俺は、久遠に一体何が起きたのかを聞くと、久遠は俺の問いに答えてくれた。「これは……先輩と私の魂を繋げるためのものです。これで私たちは……いつでもどこでも……離れていてもお互いの存在を確認できるようになりました。それと……先輩の魔力も大幅に上昇しましたよ。先輩の潜在能力が解放されたようですね。先輩のステータスを確認してみてください」

俺は、久遠に言われるままに自分のステータスを確認した。

「え!? レベルが……300を超えているだと……? それにこのステータスは……どういうことだ? 」

俺は、自身のステータスを見て驚いてしまったのだ。なぜならば、今の俺のレベルは390であり、その数値は、かつて魔王軍の幹部を倒した時のレベルと同じものだったからだ。

そして、そのステータスの内容はというと、まず攻撃力に関しては1000を超えており、防御力に至っては2000を超えていて、敏捷性にいたっては3500に達していたのである。そしてスキル欄には、新たに『神速』と『絶対防御』『聖盾・アイギス』が追加されていて、俺は、その新しい二つのスキルを試してみることにすると、俺の右手に白い光が集まりだし、その光が徐々に形を変えていき、やがては一振りの美しい剣へと変化したのだ。そして、その白く輝く細身の片手剣を手に取った時、『聖剣デュランダル』という名前が表示され、俺は、この武器の名前を知ったのである。そして俺は、その聖剣の切れ味を確かめるべく、俺は、近くにあった木を斬ってみることにした。そして俺は、その聖剣を軽く振った。すると、まるで豆腐を切るかのようにあっさりと切断されてしまったのである。そのあまりにも凄まじい切れ味に俺は驚愕してしまっていると、今度は聖剣が光り輝きだしたのである。

「こ……これは……まさか……? 」

俺は嫌な予感がしたため、咄嵯に身構えると……突然……俺の手の中から剣が消えてしまい……代わりに俺の背後に巨大な壁が出現し、その壁には大きな亀裂が入ってしまったのだ。その衝撃で、俺と久遠は吹き飛ばされてしまう。そして、俺と久遠は、地面に倒れ込むと、その倒れた俺達の側に、いつの間にか聖剣が姿を現していたのである。

俺は、その信じられない出来事に驚きながらも立ち上がり、俺は、あることを確信していた。それは……この聖剣は……俺の意思に関係なく勝手に動き出すということだった。

「先輩……大丈夫ですか? 」

そう言いながら久遠が心配そうな表情をしながら俺の元に駆け寄ってきたのである。

「ああ……なんとかな……。それより……久遠……この聖剣だが……どうやら俺の手に負えない代物のようだな……」

俺がそう呟くと久遠は、真剣な表情になり俺にこう言ってきた。

「確かにそうみたいですね。先輩が聖剣に認められたのは間違いありませんが……この聖剣の力は、おそらく……この世界最強クラスの力を持っているはずですよ。でも……これでは、とてもじゃないけど、あの人に対抗できるようなものではないと思います。それに……この剣は、所有者が危険に晒されると判断した場合、自動で動く仕組みになっているみたいなんですよ。もし……この剣を扱えるとしたら……それこそ……あの人しかいないでしょうね……」

そう言って久遠は、少し悲しげな表情を浮かべながら聖剣を見つめているのであった。

それからしばらくすると、俺と久遠は、その街を離れ、別の町に向かうことにしたのだ。そして、俺達は、馬車に乗り、次の町に向かっている途中、俺は気になっていたことを聞いてみた。すると久遠は、俺の言葉に対して笑みを見せながらこう言ったのである。

「私がどうして……あんなに強い男を好きになったか気になるんですか? ふふっ♪ そんなの先輩には関係の無いことです。ただ……一つだけ言えることは……私にとっての一番の男は……他の誰でもなく……あなたなんですからね? だから……それだけは忘れないでくださいよ? 」

そう言って久遠は、俺に抱きついてきたのだった。

「うわぁ!! なんじゃありゃあ!! 」

私は今、とある国の上空を飛んでいます。そしてその国の上空に突如として現れたのは、全長100mを超えるドラゴンのような生物だったのです。そのあまりの巨大さに私は思わず声を上げてしまいました。「あれは……竜人族……ですね。竜人族は、人間と魔族の混血によって生まれた種族です。そして、あの人達は……竜人の中でも最強の力を持つ一族なんですよ」

「なるほどな。それで……あいつらは何をしようとしているんだ? 」

私は、聖哉さんにそう尋ねてみます。すると聖哉さんは、竜人達がしている行動について語り始めました。「奴等は、我が国に進軍するつもりらしいな。だが……残念だったな。既に我が軍が、国境付近に待機していてな。もうじき戦闘が始まるだろう。だからお前達も急ぐぞ! 」

聖哉さんの言葉を合図にして私達は、空高く飛び立ちました! しかし……聖哉さんが先程までいた場所に、先程の竜人が放ったと思われる炎が直撃します。

「聖哉さーん! 」

私は叫びますが、聖哉さんは無事なようでした。

「安心しろ。問題無い」

私はホッと胸を撫で下ろします。そして私達が向かった先は、先程の町ではなく、隣国の町だったのですが……そこには既に大勢の兵士達が集まっており、そしてその町の真ん中に先程の竜人が現れていました。

そして私は、地上にいる兵士の皆さんに話しかけます。

「私に任せてください! ここは私一人で充分です! 」

私はそう言うと、私一人だけで竜人の元に向かいました。そして私は、竜人と対峙するなり、早速、攻撃を開始しようとしたのですが、その前に私は、聖哉さんに念話を飛ばしておきます。

『聖哉! 私はこれからあの竜人を退治してくるから! 』

『待て。俺が行く』

『え!? いや! でも! 危ないし……!』『お前よりは強い』

『そりゃそうだけど……』

『それに、お前は勇者ではない。お前が行っても足手まといだ。俺が行く』

『そっか……分かったよ。じゃあ……任せるね! 気をつけて! 』

私は、聖哉さんに全てを任せることにしました。だって……聖哉さんならきっと勝てると思ったし、それに聖哉さんなら絶対に負けないって思ったから。

そして聖哉さんは、私の目の前に現れると、そのまま竜人に向けて歩き始めました。そして聖哉さんは、竜人に近付くと、いきなり拳を繰り出したのです。

ドゴォッ!!! その一撃で、竜人は地面に叩きつけられてしまいました。そのあまりに強烈な威力に私は唖然としてしまいます。そして聖哉さんは、そのまま竜人に馬乗りになると、何度も竜人に対して打撃を与え始めました。その光景を見て、私は確信しました。聖哉さんなら大丈夫だと……。そして数分間に渡る暴行の末、遂に竜人は動かなくなりました。聖哉さんは、気絶している竜人から降りると私の方に歩いてきます。そして聖哉さんは、私に声をかけてきました。「終わった。帰るぞ」

「うん!」

こうして、聖哉さんの活躍により、無事にこの国は救われたのでした。

「先輩……お疲れ様です。今日も……かっこよかったですよ」

「ああ……ありがとう。久遠も……頑張って修行して強くなったな」「はい。先輩と一緒に戦えるように頑張りました」

俺は、久遠と二人で宿屋のベッドに腰掛けながら会話をしていた。すると久遠が突然、俺にこんなことを言ってきたのである。

「先輩。実は……話があるんです」

「何だ?」

「はい。それは……私と先輩が出会った時のことです」

「ああ。それがどうかしたのか? 」

「いえ……実を言うと……私と先輩が初めて会った時、先輩は既に今の私と同じくらいの強さを持っていたんです」

「は? それは一体どういうことだ? 」

俺は、久遠の言葉に驚いてしまった。なぜならば、久遠は俺と出会う前から、今の久遠と同等の強さを有していたと言うからだ。

「はい。先輩と初めて会った時、先輩は、既に私よりも遥かに強かったんです」

「それはつまり……どういうことだ?」

「はい。簡単に言えば……先輩は、元々この世界の人間ではなかったということです」

「はぁ? 」

俺は、久遠の言葉に驚いてしまった。なぜならば、この世界の住人でないということは、俺は異世界から来たということになり、そんな馬鹿げた話が信じられなかったからだ。「おい久遠。冗談はやめてくれ」

俺は、久遠にそう言ったのだが、久遠は真剣な表情をしているだけだった。すると久遠は、俺の目を見ながら再び口を開いたのである。

「信じてもらえないかも知れませんが……本当なんですよ。私は、その時の記憶を思い出したんです。だからこれは本当のことなんですよ」

俺は、どうしたものかと考えていたが……とりあえず久遠の話を聞くことにした。

「まぁいいや。それで……俺がこの世界に来たのは何年前なんだ? 」

「はい……およそ一千年くらい前だと思います。私がこの世界に召喚されたのもその頃ですし……」

「そうなのか……」

「はい。ただ……先輩が元の世界で死んだのは、おそらく十年以上前のことなので……正確には、先輩がこの世界にやって来たのは、もっと後のことかも知れませんね……」

「ふむ……」

正直……あまりピンとは来なかったが、とにかく俺が異世界の者だということだけは理解できた。そして俺は、久遠にあることを尋ねることにした。

「なぁ……その……俺は……どんな奴だったんだ? やはり……変わった奴だったのか?」

「はい。先輩は、とても優しくて、いつも周りの皆のことばかり考えてる人でした。それに……誰に対しても平等に接していて……でも……たまに、ちょっと意地悪で……そんなところも含めて……私は……好きだったんですよ」

「そうだったのか……」

「はい。先輩がこの世界に来てから、この世界は大きく変わりました。まずは、魔王が復活して……この世界は大混乱に陥りました。でも、そんな時に現れたのが……リスタ先生とセルセウスだったんです」

「へぇ。あの二人が……」

「はい。二人は、すぐにこの世界の人々をまとめ上げ、そして新たなる神となったのです。それからしばらくして、聖哉さんがこの世界に現れました」

「ほう……」

「聖哉さんは、この世界に来るなり、私達の仲間になってくれました。それからは、聖哉さんを中心に、この世界を平和にしようと努力したんです。そして……遂には、私達の悲願であった『女神の加護』を得ることにも成功したんです」

「おお……そうだったのか」

「はい。ただ……『女神の加護』を得た後、聖哉さんは、何故か私達の元から離れていってしまいました」

「え? そうなの? 」

「はい。そして……私達は、聖哉さんの行方を捜すことにしました。聖哉さんがいなくなった理由は分かりませんでしたが……それでも、きっと何か理由があって、どこかに行ってしまったんだと思っていました」「ふぅん。そうだったのか」

「はい。ただ……聖哉さんは、結局、行方を眩ませたまま帰ってこず……私達は、聖哉さんの帰りを待つことにしました。そして……今から五年前のある日……私達が住んでいる町に、聖哉さんが現れたのです」

「え? 」

「私達は驚きましたよ。聖哉さんは、本当に何も変わっていなかったから。でも……聖哉さんが帰ってきた嬉しさと同時に、私は疑問に感じました。聖哉さんが何故、この町に戻ってきたのかを。聖哉さんは、私達には何も言わずに姿を消してしまったから……だから、私は聖哉さんに直接聞いてみることにしたんです。どうして姿を消したのかを。すると聖哉さんは、こう言いました」

『俺は……勇者を辞めようと思う』

『は!? 』

『勇者を辞めて……しばらく一人で旅に出たいと思っている』

『ど……どういうことですか! 』

『言葉通りの意味だ』

『そっ! それじゃあ! これから先ずっと会えないかも知れないじゃないですか! 』

『そうだな』

『なっ!……何で! 』

『もう決めたことだ』

『せめて……その理由だけでも教えてください! 』

『……』

『お願いします! 』

『お前のせいだよ』

『え? 』

『お前が、勇者としての力を発現させたからだ。俺は、勇者として、今まで様々な敵と戦ってきた。だが、そろそろ俺が戦うべき相手ではないと思ったのだ。そして、この世界には、俺以外にも強い奴がいることも分かった。だから俺は、もう勇者を辞めて、違う道に進むことに決めたんだよ』

『……』

『では、そういうことだ』

「そう言って聖哉さんは、私達の前から去っていきました。その後、私は聖哉さんの後を追いかけたのですが……途中で見失ってしまったんです」

「そうか……」

「聖哉さんが勇者をやめると聞いた時……私は、凄く悲しかったです。だって……聖哉さんは、私の憧れの人だったから。そして、私は聖哉さんにもう一度会いたいと思ったんです。だから、私は聖哉さんを捜し続けました。そして……聖哉さんがこの国にいることを突き止めたんです」

「なるほどな……」

「はい。聖哉さんは、私の師匠であるリスタ先生に匿われているみたいでしたが、私は、どうにか聖哉さんに会おうとしました。でも……聖哉さんは、私に冷たくて……全然相手にしてくれなくて……そして……私と聖哉さんの間には、大きな溝ができてしまいました。だから……私と聖哉さんは、会うことができなくなってしまったんです」

「……」

「私と聖哉さんは、お互いのことを想い合っているのに……私は、聖哉さんに酷いことを言っちゃったんです。本当は、そんなつもりはなかったのに……聖哉さんに嫌われちゃって……そして、聖哉さんは、私を置いてこの国から去っていったんです」

「そうか……」

「私と聖哉さんの関係は、この国を救った時に終わりました。だから、今更、私が聖哉さんに会うことは許されないと思っていたんです。でも……先輩は、そんなこと関係なく、堂々と私に会いに来てくれたんです」

「そうか」

「そして……先輩は、私のことを受け入れてくれて、こんなに優しい言葉をいっぱいかけてくれた。私なんかの為に、一生懸命戦ってくれて……本当に嬉しくて……」

久遠は、涙ぐみながら俺に微笑んでいた。

「先輩と出会ってから、私の人生は変わりました。先輩と一緒にいるだけで、毎日が楽しくて、幸せで……私は先輩と一緒にいたいんです。先輩と一緒にいて、先輩の力になりたいんです」

久遠は、俺に真っ直ぐな視線を向ける。

「だから……先輩。私は先輩と一緒にいます。これからも先輩のお傍にいたいです。先輩のことが好きなんです」

久遠の言葉を聞きながら、俺は考えていた。俺と久遠の出会いが、この世界を大きく変えたことに間違いはない。俺と久遠が出会ったことで、この国の人々は救われ、魔王軍との戦いにも勝てた。そして、俺と久遠は、この世界で出会った。それは運命的なものなのだと感じる。

俺と久遠の出逢いは、この世界にとって必然だったのだろう。

俺は、大きく息を吐き、そして久遠に言う。

「ありがとう。俺も久遠と一緒にいられて嬉しいよ」

「!! 」

俺の言葉を聞いた久遠は、頬を赤く染める。

「先輩……私、先輩にずっとついて行きます。何処までも」

「ああ。俺も久遠についていくさ」

俺は、久遠に笑顔を向けた。すると久遠は、恥ずかしそうにモジモジしながら尋ねてくる。

「あっ、あの……それで……先輩は、どう思ってるんですか? その……わっ、私と一緒で……いいんですか? 」

「うん。勿論いいよ」「……ほっ、本当ですか? 」

「ああ。久遠の気持ちは、よく伝わったよ」

「先輩……! 」

すると久遠は、俺の胸に抱きついてきた。そして俺を見上げ、照れ臭そうに笑いかける。

「先輩。大好きです」

俺は、久遠の頭を優しく撫でてやった。

「俺も久遠のことが好きだぞ」

「うふふ。先輩、嬉しいです」

「ふふ。可愛い奴め」

「先輩、好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き

「ええっ!? 」

突然、狂ったように「すき」と連呼し始めた久遠に、俺は思わず声を上げてしまう。しかし、久遠の「すき」は止まらない。

「すきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすきすき

「ちょっ……ちょっと待って! 一旦、落ち着こう! 」

俺は、両手を前に出し、何とか久遠を制止した。そして、久遠は正気に戻ったのか、ハッとした顔になる。

「す、すいません!! 私ったら!!」

「いや……大丈夫だけど……一体、どうしちゃったの? 」

「分かりません!! 急に頭の中が真っ白になって、気づいた時には、『すき』という言葉しか出てこなくなってたんです!! 」

「そ、そうなんだ……」

「でも、もう大丈夫です!! 」

久遠は、いつもの穏やかな表情に戻っていた。

「先輩。私は、これからも先輩のお傍にいますね」

「あ、ああ……」

何だか分からないが、とりあえず落ち着いたようだ。すると、

「ところで先輩」

「ん? 」

「先程から気になっていたのですが……」

「なに? 」

「先輩のお隣にいる方は何なんでしょう? 」

「へ? 」

久遠の視線を追うと、俺の隣にはいつの間にかリスタが立っていた。リスタは、ニコニコと笑っている。

「あら、ごめんなさい。気付かないフリをしてあげようと思ったんだけど……やっぱり、我慢できなくて」

「な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な……!! 」

久遠の顔はみるみる赤くなっていく。そして、リスタを指差して叫んだ。

「い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、い、いたたたたたたたたた!!! 」

久遠は俺に近寄りながら叫ぶと、今度は頭をグリグリと押し付けてきた。そして俺は「痛い! マジで痛いっ!! 止めてくれぇ!! 」と悲鳴を上げるのだった。

久遠をどうにか鎮めた俺は、改めてリスタに挨拶をした。

「久遠を助けてくれたみたいで……本当にありがとう。俺も久遠も助かったよ。それでその……君は一体……?」

「私も……あなたに聞きたいことがあるの」

久遠も真剣な顔をしていた。そんな2人を見たリスタは、笑顔で答えた。

「初めまして。私は、リリア・エルバック。よろしくね」

その名前を聞いた瞬間、久遠は目を見開いた。そしてリスタに向かって話しかける。

「わっ、私です。……覚えていらっしゃいますよね?……久遠……いえ……レイラと申します。あの時、私を救ってくれたのは……貴方ですよね? 私には分かるんです。私達のような……亜人を、救おうとしてくださっていたこと……。……私の……大好きなあの方は……今何処におられるのですか?……会いたいんです。もう一度会って謝りたいんです!!……お願いします!!……どうか教えてください!!……お願いします!!」

そう言い切った後で深々と頭を下げた久遠に対して、リスタは何も言わなかった。しばらくした後、ようやく口を開けたかと思うと、信じられないことを言ったのだ。

『私が助けられた命だからね……。仕方ないかぁ』

というわけである。この会話の内容を聞き俺は、「どういう意味なんだ……!? 」と考え始めたその時だった。突如、空間に黒い霧が現れ、それは段々広がっていくと辺り一帯を埋め尽くしていった。俺は思わず口を開いた。

「な、なんだこれ!? 」

しかし、それには答えは返ってこなかった。俺は不安になり、久遠を見る。だがそこには誰もいなかった。

「おい!久遠く……!! 」

呼びかけても返事はなかった。そしてついに久遠のいる場所までも覆いつくしてしまうほど広がろうとしたところで霧は消えてしまったのであった……。


***

ここは……一体どこだろう?……見慣れない部屋だ。

僕は……死んだんじゃなかったのか……?

「おはようございます……」

突然聞こえた女性の声に反応して振り向くと……僕より年上だろうか?大人びた容姿の少女が微笑んでいた。僕は彼女に質問する。

「君は誰だい?……ここは何処? 僕の身体はどうなっているんだい? どうしてこんなことになっているのか教えて欲しいんだ……」

少女はその言葉を聞いても動じずに話を続けた。

「ふむ、やはり記憶を失ってしまっているようでござるね……。まずはこの世界のことから話しましょう。貴方達は、地球とは違う世界に転移させられたのです。……私は神界から来た使者なのですが……。本来なら魂の状態でしか来ることは許されぬところ、特別に来ておりますゆえ、貴方の問いに答えることができるのです。それでは答えさせていただきますぞ。……ここの名は……アルキオーネという世界……貴方がいた日本で言う所のファンタジーな異世界でござる」

「な、何だって!……そんなこと急に言われても困ってしまうじゃないか! 君が神様だっていうことも全然信じ難いのに、魔法だとかいう非科学的な物まで出てくる始末……。これは……夢なのかい?……そうだ!きっと僕は悪い夢の中を彷徨っているんだ!! 早く目を覚まさないと……!!」

「落ち着いてください。私は現実主義者なんですよ……」

「そ、そうなんだね。えーっと、でもね。夢って言うのは自分でコントロールできないはずなのに……。君はどう見ても現実の人間にしか見えないんだよ……」

彼女はため息をつくと話を再開した。

「まあ良いでしょう。とりあえず続きを言いますよ?ここは……剣や魔法の世界で……地球とは時間の流れが違うの。貴方達からすれば10年後といった感じでしょうかね。ちなみに地球での時間は1分たりとも過ぎていないわ」……そんな馬鹿な。これが嘘ではないとしたら僕はとんでもないところに来てしまったようだ。僕はさらに疑問をぶつけた。

「そもそも何で……僕なんかを選んだんだい?他の誰かの方が良さそうに見えるんだけど」

(本当は、僕以外の人間が選ばれていても不思議じゃないはずだけどね……。だってこの子は可愛いし……胸もあるし……。って、僕は何を考えてしまっているんだろう?)

彼女がクスッと笑う。何だか恥ずかしくて、顔が熱くなった。そして彼女は再び語り出した。

「何故、選ばれたのかは……貴方が転生者に選ばれた存在だからなのよ。その証拠として……ほらっ」

そういうと目の前にステータス画面が表示された。そして、彼女の言葉を裏付けるものが書かれていた。

==

名前:八坂真也 種族;人族 性別;男性 状態;普通 Lv.5/50 HP(生命力)

500/100 Hp(体力)

200/300 Mp(魔力)

258/600 Str 10 Vit 9 Agi 5 Int 15 Min 7 Dex 12 Loc 13 +100スキルポイント獲得済み ==……????? あれ……?おかしい。何かが足りない気がした。そして違和感の正体がやっとわかった。年齢欄に表示されていた数値が無いんだ。もしかすると……。いやまさか……。でも……。僕は意を決して聞いた。

「ねえ、一つだけ聞いてもいいかな?」

「はい」

「君の年齢は何歳だい?」

すると……少女は不敵な笑みを浮かべると答えた。

「女性の年齢は詮索するものではありません。まぁ良いでしょう。答えて差し上げましょう。私は今15歳です。……もうすぐ誕生日を迎えるんです。それでですね、誕生日には毎年ある儀式を行うんです。それが……」

「もういい。もう言わないで」

これ以上は聞きたくなかった。つまり、この子のステータスには僕のステータスにはない……

『老化』

があるのだろう……。その事実を知ってしまい……もう頭がいっぱいになった。……そして、頭の中で様々な考えがぐるぐる回るうちに僕は……意識が遠のいていってしまった。


***

真耶は、自分の家にある地下の修練場へと足を踏み入れた。そこでは既に準備を終えた結人が待っており、声をかけてきた。

「おっ! 来たね〜♪」

「……うん」

今日は結人の指導日である。ただ、普段であればその日に修行をするのはほぼ毎日なのだが……今日は少し事情があった。それは真弥の気紛れが原因だった。普段は無口かつ人付き合いも悪く、表情の変化にも乏しい娘であったが……そんな彼女も一応年頃の少女であった。ある日を境に急に変わった娘の様子を母である久遠も気にかけていたのだった。

そんな久遠と久遠が大切にしている結人を結人はとても尊敬していた。久遠と一緒で、心の底から2人を愛していたのだ。だからこそ真矢の気持ちも察することができたのである。そして、久遠には自分が教えるからと言って……たまにこうして2人に付き合うことにしたのだった。

「さてと、始めるとしますかね〜」

真弥は無言でこくりと肯いた。

まずは基礎トレーニングだ。体術と魔術の基本の型を身につける。これは地道に反復練習をして体に染みつかせる。それから型の応用の素振り。これは一通り終えると……実践に移る。実戦に近い形式での訓練だ。相手は勿論結人である。真耶の相手としては、結人もかなりきついものを感じていた。真耶はとにかく強い。しかも、攻撃が多彩すぎる。そのため……一撃でも貰えば致命傷を負う可能性もあった。しかし真弥が戦い方を教えると言い出したのは自分である。それにここで引くわけには行かなかった。真耶は強いが弱点も多いと睨んでいるからだ。特に持久力は皆無で長時間戦うのは難しい。そこを突いて……隙を作り出すしかないだろう……。

真弥が動き出すのを確認してから……結人は拳を握りしめ、構えた。

そして戦闘が始まった……。


***

久遠はリビングの椅子に腰掛け、真也について考えていた。久遠はあの子のことを心配してたのだ。理由は単純だ。あの子は昔からとても優しい。だが、優しすぎたのだ。久遠はあの子を救いたいと常々思っていた。あの子に幸せになって欲しかった。だが、今の環境を考えるとあの子が本当に幸せなのかと疑問を抱くことがあった。今、あの子は元気にしているだろうか……。……ガチャ。ドアの開く音がしたので振り返ると、そこにはあの子が居た。久しぶりの顔に思わず頬が緩んでしまった。私はすぐに話しかけようとしたが、それよりも先にあの子は言葉を口にした。

「久遠くん! 久遠くんは居るかい!?」

あの子は大声で叫んだ。そのあまりの声量に驚き、久遠は一瞬固まってしまう……。そして、慌てて駆け寄ると、何事かを聞こうとしたが……それより前に……

「久遠さん、ちょっと相談したいことが有るんだけど……」……? 何だろう……。真剣な目をしている。それに、私を呼ぶ時も敬語じゃなかった。これは……。

そう思った瞬間、真也の声色が変わって……質問してきた……。

私は、この世界に来てからは色々なことが起きていて……混乱する一方であった。しかしそんな中で……一つの決意を固めた。僕は強くなるために修行をすることにしたんだ……。僕はこれから……冒険者ギルドに行って依頼を受けてみることにしたんだ。僕は弱いままではダメだと強く思い始めていた。この世界の常識を知らないし、そもそもこの世界の知識がない。僕にはまず力が必要だったんだ。……でも正直な所、怖い……。だっていきなりこんなところに来て……知らない人たちに囲まれてるんだから……。だからまず僕はお金を稼ぐことから始めたんだ。僕は、ギルドでお姉さんの言うことを聞いて受付に行った。そして、依頼を受注するために必要なことを聞くことにしたんだ。

「すみません、僕は初めてなんですけど、登録をお願いできますか?あと、どうやったら受けれる依頼ってわかるんでしょうか?教えていただけたら嬉しいです」……そう言って僕は頭を下げて教えてくれるように頼んだ。すると、お兄さんは親切丁寧に色々と教えてくれたんだ。それを聞いて僕はほっとした。そして……ようやく依頼を見ることが出来るようになり……僕はそれを確認していくことにしたんだ。

えっと、これは何だろう?……よくわからないけど、これにしようかな……。報酬がいいし……。よし、これを受けよう。そう思って僕はその紙を持って窓口に持っていったんだ。僕はその時に……初めて自分のステータスを見たんだ。……その時に僕は驚いたよ。……だってステータスのところに『??』っていうのが付いていたんだ。これは多分年齢の事なんだよね……。

僕はこの時になってようやく気がついたんだ。……そういえば僕は何歳で、今までどんな生活をしていたのかっていう記憶がなくなっているっていうことに……。でも何故か知識と言語能力はそのまま残っているみたいだった……。

ステータスを確認したことで分かったことがあるんだ……。ステータスの年齢はそのままの状態で更新されていない。そして僕のレベルが上がっているということと、スキルが習得できているということが分かったんだよ。それでね、スキルの方なんだけど……。……なんと……僕は既に3つも覚えられるスキルポイントを持っていたんだ。でもね……僕は何のスキルを選べば良いのか分からなくなってしまって……。そこでお姉さんに相談したんだよ……。するとね……おすすめスキルって言う一覧を見せてくれて……。それでその中のスキルの中から、どれを覚えれば良いかを教えてくれたんだよ。……それが、この三つなんだ。

1つめはね……

『身体強化』

って名前のやつなんだけど、このスキルがあれば体が丈夫になるから良いと思うよ、って言われたよ! これはすごいらしいよ! これで僕はきっと強くなるよ!! 2つ目はね……

『火属性』

って名前のスキルだよ。これもすごかったよ。なんでも……この炎を使うためのスキルがいっぱいあるんだって。僕でもできるかなぁ? 3つ目はね……

『光耐性(弱)』

っていうスキルなんだけど……これは闇以外の魔法に対して抵抗を持つようになるスキルらしくてね。僕の場合は魔力はたくさん持っているけど魔法を使うことは苦手だから、これを選ぼうと思っているんだ。……僕はこれらのスキルポイントを使って、早速スキルを1つ取得したんだ。そして残りのポイントは4になった。

僕は……とりあえず……まずはお金を手に入れるために……クエストを受けることにした。……でも最初はやっぱり緊張したんだ。

「あ……あれ……これどうやって受けるんだろう?」……うぅ、また失敗したぁ……。誰かがこっちに来る……。もうヤダ……。怒られちゃうかも……。……でも僕は負けないぞ! 頑張れ!……うん、大丈夫! 何とか出来た……。よかった……。

それから、僕は依頼を受けたんだ! 依頼書を確認するとお魚を運ぶ仕事だったよ!……お魚の種類は書いてなくて分からないんだけど……結構大きいのが2匹も運べるんだから楽勝だったよ!

「あれ、君はさっきの……」

そんなことを考えていると不意に声をかけられた。その声の主を見ると、そこには……あの時の人が居た。

そして僕は声をかけたのが真耶であることに気づいた。

私は今、真耶からステータスについて話を聞いている。私はステータスを見ることが出来ないため、その話を詳しく聞くことが出来なかった。なので、私はステータスの話を聞きたいと思ったのだ。

そこで私は真矢にステータスについて詳しいことを尋ねようとしたのだが、そこで真耶が突然立ち上がり、「あっ」と声を上げて……慌て出したのだ。一体、何事なのかと思い真矢の顔を見てみると……。……目が死んでいて、まるでゾンビのように表情が抜け落ちてしまっていた。そしてそのまま……ゆらりと立ち上がると一言つぶやくと……真也は急に動き出し……私の目の前まで来ると、唐突に頭を掴んできたのだ。

「へっ!? ま、真耶ちゃん、ど、どうして急にそんなに怖い顔をしているんだい……?」

「……久遠さん、ちょっと黙っていてください」

そして真也は私を無表情で見据えると……。……そして急に動き出して、どこかに走って行ってしまったのだ。

私が真也の行動を理解出来ず呆然としていると……真矢は真也の後を追いかけていったのだ。

「……久遠くん、少し2人っきりにしてあげましょうか……」

私は久遠にそれだけ伝えると、リビングを出て行った。そして自室に戻る途中にある扉を開けると、そこから結人と真弥が出てくるのが見えた。……やはりあの2人はそういう関係になっていたのね……。……あの子は昔から真弥のことが大好きだったものね……。

真弥が結人を連れて走り去っていくと、久遠は少し悲しげな目をしていた。おそらくあの2人の関係性を理解したのだろう。

だが……久遠はすぐに笑顔になり、「お茶でも入れてゆっくりしませんか?」と言った。その言葉に久遠くんは微笑むと、「ええ」と答えたのだった……。……俺の名は結人。結人は俺の兄だ。今は……真弥様に呼ばれているため……部屋で待機している。そして俺は真弥様の部屋をチラリと見ると、すぐに視線を外した。そして深呼吸をして心を落ち着かせる。……真也に真耶さんのことを頼まれてしまったからだ。しかも、結人は私と一緒に真也を守るんだ、と……。正直に言ってしまえば、今の俺は弱い。真也の役になど立てていないのが現状なのだ。だから俺は焦っていた。このままではいけないと、そう思った。だが……俺が焦っている間に、この世界に来て一年が経とうとしていた。

だがそれでも、何かが変わることはなかった。相変わらずの日常を送っているだけだ。だが今日……真也は遂に動き出す。俺も出来るだけ手伝おうと決めたのだ。そのためにもしっかりと気合いを入れていこう。

そう思っているとドアが開き、その奥から結人と真矢さんが出てきた。……ん? なぜ、結人だけここに……? 真奈はどこに行ったのだろうか? 疑問を抱いたが、今はそのことについては聞かないことにした。それよりも早く報告をした方が良いと考えたからである。そして俺達は全員リビングに向かうこととなった。

久遠は真斗の様子の変化を感じ取っており……心の中では喜んでいたものの顔には出さないように注意を払っていた……。

(真那さんのことが気になっているのかしら?……それともまた別の理由なの?)……真那についてはまだ説明していなかったわね……。私達の世界に来れた理由は分からないのよ……。本当にごめんなさい……。

そして真央にはこの世界で生きて行く為に名前を付けてもらった。……それは、私の真の名ではなく真也が私を呼ぶときに使う名、すなわち……本名である。……この世界に来てからというもの、色々なことがあった。

まず私は真耶という存在として生まれ変わった。……そして前の世界の知識を利用して、なんとか生きる術を手に入れたのである。それからは色々な仕事をしていた。そうやって生活していたある日のことだった。私は真也を見つけたのである。そしてそこで見た彼の瞳は輝いていた……。……そして同時に思ったの。……ああ、この子が私たちの救世主なのだ、と……。だからこそ私たちはこの子を守ろうとしたのだ……。そう、あの日誓ったはずなのに……彼はいつの間にか強くなって、一人で歩んでいったのだ。……そして今回、彼が動いたのは……真那さんを守るため……。つまり……そういうことなのだろう……。ならば……私達もそれに応えなければならない……。この世界の未来の為にも……。

私がそんなことを考えているとリビングにたどり着いたようだ。するとそこには既に真也がいた。……先ほどとは違い……真剣な面持ちであった。そんな彼を見て……久遠くんも真剣に話を聞いていた。そのせいで空気が重くなったが、ここで口を出せる者はいなかった。私はただひたすらに聞き入っていた。すると話が終わる前に久遠くんが立ち上がって部屋を飛び出して行った……。……何があったんだ……一体……。そう考えていると今度は久遠さんが部屋に戻ってきた。そして真矢と2人で話をし始めたのだ。そこで私はふと思ったのだ。そういえば真矢はどうして真耶を真と呼び始めたのだろうと……。……真矢は真を……自分の名前をとても大切にしている。だからこそ、自分の名前は誰にも呼ばせようとしないのだ。……それに気づいた私は慌てて立ち上がり、久遠さんを止めようとしたが、遅かったようで……。もう、遅いのだ。なぜなら久遠さんが口を開いてしまったのだから……。……どうやら、これからが本題のようね……。

真弥たちは、話を終えたあと、今後の事を話し合った。その結果……。真耶に、この国を出てもらい、【サジタリウス】の本拠地に行くことに決めた。

それに伴って……この屋敷も出る予定であり、使用人たちにも事情を説明した。

それから3日後の朝。ついにこの屋敷を出ることになった。荷物は既にまとめてあるので後はこの屋敷から出て行くだけである。ちなみにこの国の人達とは仲良くなれたが、この屋敷から外に出るのはこれが初めてである。そのため……不安があると言えばあった。しかし、真也と共に行動することで安心することも出来るようになり、今は前向きな気持ちになっていた。

「真矢さん。準備が出来たのであればこちらに……」

「はい、わかりました」

そして私はメイドに連れられてこの部屋に来たのだ。するとそこには、私のために仕立ててくれたであろう衣服が置いてあり、それを着替えるように指示をされた。私は早速服を着替え始めると……なぜか服のサイズがあっており……。

私は違和感を覚えながらも、着終えて鏡を見る。……これはどういうことなのか……。……まさかこれは……。……そんなはずがない……。でもこれは……。そんな考えを振り払うために、すぐにその場を後にして真也の元へ走った。

真也の側に着くと……。……真也が急に立ち上がり……そのまま走り出してしまったのだ。

私はすぐに追いかけようとしたが、その時……。後ろから声を掛けられたのでそちらを見ると……。……久遠と目が合った。……その目は決意がこもっており、覚悟を決めているのだと察せられたのだ。その目を見て私は少し驚いたが、すぐにその意図を察して一緒に付いていくことにしたのだった……。そして……。

真也の様子がおかしくなった。そしてそのまま走り出した。そして……私と久遠もその後を追っていったのだった……。

俺と真矢は久遠が居ないことに気づく。……そして辺りを見渡すが久遠の姿がどこにもなかったのだ。だが真也は焦った様子はなく、久遠を探すように言うと再び駆け出したのである。そして俺はそれに続いて走り出す。すると久遠が居そうな場所に辿り着いたのだった。そこは庭であった。そしてその中心にある花畑の前に立っていたのである。そこで俺達が目にしたのは……。

『久遠さん……。なんですかその恰好は……。その……あまりにも破廉恥過ぎますよ!』

そう。そこに居たのは久遠だったのだが、いつもと違う格好だったのだった。その姿を見て俺と真矢が絶句していると……。真矢は恥ずかしさのあまり顔を赤らめながらそう言い放ったのだ。そして……

「ええっ!? 真也様!?……えっ!えっ!」

久遠は突然の出来事に混乱しているようだったが……久遠はすぐに落ち着きを取り戻すと、俺たちに謝罪をしたのだ。

「あ、あの。すみません!私ったら、つい、興奮してしまいましたわ」

久遠くんは、何故か突然服を破きだしたのだ。僕は驚きのあまりに固まってしまい動けなかったが、すぐに意識を取り戻したため止めようとした。……しかし……時すでに遅し。……もう、どうすることもできなかった。僕が必死で止めるがそれもむなしく、僕の目の前では久遠くんは全裸になり……。その美しい体を惜しげもなくさらけ出しているのである。

そして久遠くんは、どこか妖艶な雰囲気を出しており……それがさらに色気を増しているのだ。……こんなことをしていてはダメだ……。そう思い久遠くんに近づくと……彼女は目を細めて僕に近づき耳元でささやくのだ。

「真矢さんの事が好きだってバレちゃいましたね。でも大丈夫です。私はいつでもウェルカムなのですから……」…………なにがウェルカムなんだぁ!! そして僕はそんな久遠くんの声を聞き流し、急いで服を着るように促すと……彼女も渋々と言った感じではあったが服を着てくれたのだった……。そしてようやく冷静になることが出来、今の状況について考えてみることにする……。すると……先ほどのことを思い出すと頭が真っ白になってしまったのだ……。すると隣にいた真也も同じらしく、僕達は二人で悶々としてしまうのである……。そんな状況の中……真也は口を開く……。……そして僕達はお互いに目を合わせると、「まあいいか」と思い……。気にしないことにし……久遠の方を向くのである……。そしてそこで僕は……また驚かされることになるのである……。

私は2人の視線を感じ、振り向いてみると……真也は、真也もこちらを見ていたのだった。その表情は真剣そのもので……とても凛々しく見えるのだ。

「あの……何か私の顔についていますか?」

私はそう尋ねると、2人は気まずそうにして視線を下に向けてしまうのだった。

「久遠。久遠はどうして俺達を追いかけてきたんだ?」

そして真也は真剣な面持ちで言うと……。

『確かに……。久遠は何故私達に付いてきたの?』

私達は久遠がなぜついて来たのかを尋ねてみると……彼女は申し訳なさそうにしている……。

「その……私は真矢さんを守りたかったんです……。だから2人が飛び出したあと、私なりの答えを見つけようとこの花畑にやってきたんです。……すると不思議な声に導かれてこの場に来たのです。するとそこで私の体に……光のようなものが入り込んできたのを感じました……。そしてその光に包まれると、今までに無いくらい心が安らぎました。そして、真也様に対する愛しさが増していったのです。だから私はこの人を守るために生きると決めたのです」……なるほど……。久遠の魂と俺の魔力の相性が良いのが原因なのか? それとも俺が持っているスキルの影響なのか?……どっちにしろこの状態が続くなら、俺としても都合が良いからこのままの状態を維持させてもらおう……。しかし……久遠が聖女なのは予想外過ぎるけど……。とりあえず今はこれしかないからしょうがないね。

真矢さんはこの子の言葉を聞くと納得はしたが、不安が拭い切れていないようだ……。それは俺にも伝わってくる……。だけどここでどうこうできる問題ではない。……そう思った僕は、久遠にどうすれば良いかを尋ねたところ……

「真也様は私を愛してくれればそれだけで十分です……。もし他に好きな女性が現れたりしなければの話ですが……」……それは無理だろうな……。この子以外なんてありえないからな……。それに、俺はそんなに軽い男じゃない……。それにこの子には助けてもらった恩もある。だから俺も誠意を持って接するとしよう。

「わかったよ。久遠を幸せにできるように頑張るよ。それで……久遠は本当に俺のことを想ってくれてありがとう。これからもよろしくお願いします」

そう伝えると……久遠は頬を染めていたのだ。そんな久遠を見た真矢は、自分も真矢のことを守ると決意を新たにしたのだった……。そんな二人の様子を真央は嬉しそうに見つめていたのである……。そしてその様子を影から覗いていた人物がいたが……。そのことに真也たちは気づいていなかった……。

それから数日経った後……。俺達はいよいよリリア奪還作戦を実行しようとしていた……。だが俺と久遠は屋敷を出る前にやることがあり……。その準備のための準備を整えに行っていたのである。そのため現在ここにはいない……。そのやるべき事とは、俺の武器や防具を作る事だ……。この国にいる間は武器などを使って戦わないが、ここから先の旅では必ず必要になってくると思ったので……作ることに決めたのだった。

そして久遠の分は作っている最中だ……。素材が足らないものは久遠自身が集めに行ったりと頑張ってくれているため、久遠が旅に出てからもなんとかなりそうだ……。俺は、その作業中にあることを考えており、そのことについて考えを巡らせていた……。……久遠が、この屋敷に来てからのことだ。俺は、俺をこの世界に連れて来てくれた神様に会いに行く方法を模索し始めたのだ。

しかし今のところその方法は思いついておらず、久遠の力が必要かもしれないと思うと……なかなか踏ん切りがつかない。……だがしかし、久遠に相談してみなければ始まらないのだ……。そんなわけで再び俺と久遠の寝室に訪れることにした……。扉を開けるとそこには……久遠がいて、ちょうど装備の取り付けが終わったようだった……。そしてこちらを見ると久遠は俺の方へと近づいて来て、微笑んでくれる。……その姿はとても綺麗だった。そんな久遠を見ていると自然と笑ってしまう自分がいる……。俺の表情の変化に気づいた久遠は不思議そうにしているので、俺も笑顔を返し久遠の髪を優しく撫でてあげた。……気持ち良さそうにしているが、少し照れているようで可愛らしい。そんな久遠を見て……やはり久遠が好きだという思いを再確認し、抱きしめたくなってしまった……。そんな衝動に駆られるが……今は久遠を抱きしめることよりも重要な話がある……。その大事な話をするべく、久遠に話し掛けた。

「久遠……。久遠がここへ来るまでに何をしていたのかは、大体聞いて理解している……。そしてその上で俺の我がままを聞いてほしい。俺の事を好きでいてくれる久遠ならわかってくれるはずだ。そして、俺はどうしても久遠の助けが必要なんだ……。……久遠にしかできない事なんだ」

俺がそこまで言うと、久遠の体がビクッとなる……。そして久遠の目つきが変わったのがわかる……。

『久遠しかできないこと?』

「ああ。久遠がこの世界で手に入れたものを使う時が来たんだよ……。」

そう言うと久遠は何かを考えるように沈黙してしまった。……すると久遠の目に光が宿り始め……。俺の事を見つめ始める……。

『そうですか……。そういうことでしたら協力いたしますわ。真也様がここまで仰るという事は……。私で無ければダメということですね……。真矢さんのことも心配ですから……。すぐにでも行きましょう!』

俺と久遠は目を合わせてうなずき合うと……。お互いに気合を入れ、立ち上がる……。そして俺は久遠に自分の思いを改めて告げる。

「必ず久遠を助ける。……久遠のためにもこの世界の平和を取り戻す!」

「真也様。私が居ますから大丈夫です! 真也様のそばにずっとおります。ですから私を助けてくださいね!」俺は久しぶりに見る……自信満々で余裕の表情をしている、頼れるお姉さんのような表情をした久遠の顔を見ると……心が落ち着いた。……大丈夫。きっとうまくいく。俺達の絆の強さは誰にも負けないと確信を持てたのだ。……俺達が二人で力を合わせればなんでも出来るはず!

『真矢さん……。今会いに行きますね』

そう言いながら久遠は手を伸ばす。……俺もその手に掴まって立ち上がったのだ……。その手を離すと……。2人の姿が消えていき……一瞬にしてどこかへと転移したのである……。そして目の前に広がる景色に目を凝らすと……。そこは懐かしく感じる……かつて訪れたことのある城の中に居ることがわかった。……そう。……俺たちはこの世界を一度救ったことがある。

久遠に俺の記憶を見せたあの日……。俺達はこの城を訪れていたのだ。そしてその目的はこの城の地下にあったダンジョンの最下層にて……リリアを救う手段を探すためであった。あの時はリリアを救うために行動していたが、今となっては、ただこの国の人を守りたいという純粋な思いが俺の中にあるだけになっていた。

そしてこの場に来ると、すぐにあの神が姿を現した。

『おお。お前さん達か……。随分と久しいのう……。またここに戻ってくるなんて珍しいこともあるもんじゃのぉ……。どうしたんじゃ?』……相変わらず、見た目が怖い……。でも俺にとってはこの方が親しみやすい。……だって怖く見えるのは多分目つきが悪いからだろうからな。……そう言えば昔……父上も同じようなことを言ってなかったっけか?……もしかして俺の気のせいか?……いや、そうじゃ無いような気がしてきた。なんせ、あの時の父上は今にも殴りかかって来そうな感じだったが……今回は、優しい雰囲気が感じられる。俺が気のせいだったんだと安心していると、急に真面目な表情に変わり……。真剣な声で話しかけてきた。

『……お前達には悪い知らせと良い知らせがあるが……。どちらを先に聞きたい?』……悪い方から聞かせてもらうことにする。俺と久遠は無言でお互いの手を握り、これから来るだろう最悪の状況に備えた。……しかし……。一向に神の口から出てくるはずのないその言葉が出てこなくて……。逆にこちらが戸惑ってしまい……どうすれば良いのかがわからなくなってしまう……。すると久遠が、神に問いかけてくれた。するとその言葉を待っていたかのように……神の口元が緩む。

「あぁ。その反応が正しいだろう……。お前達は本当にいいコンビになったものだな……。それこそがお前たちの強みなのかも知れん。……だが……。この話は本当に覚悟して聞くことだぞ? それでも良いのか?」

俺はそんな風に言われると、久遠にアイコンタクトを送り……意思の確認を取る。

「えぇ。構いません……。私たちは真也さんと共に生きることを選びました。ですから、どんな話であろうと受け入れるつもりです。だからお願いします」

俺も同じ意見だと告げると、それを待っていたかのような表情をする。そして俺達に向けて……。

【魔王と聖女による奇跡を起こす】……それがどういう事なのかを説明してくれていたのだった……。俺と久遠は神の言葉を聞くとしばらく黙り込んでしまう。そしてお互いに目を合わせた後に、俺は久遠の手を握る。……俺がしっかりしないとな……。俺は決意を固める。

「わかったよ。ありがとう。……だけど俺一人でやるよ。俺は、この世界に転生して……。たくさんの人たちに会えたんだ。その中には家族のように思える人も沢山いる。その人達を置いて、俺は逃げられないよ。それに……。俺のわがままを聞いてくれてありがとう。俺のわがままを叶える為の力を貸して欲しい……。久遠。久遠にお願いがあるんだ……。俺と一緒に……。いや、俺の側に居て支えてほしい。久遠だけが頼りなんだ。俺と……久遠の力が必要なんだ」俺は本音をぶつけると、今度は久遠が俺の事を抱きしめてくれる。

「もちろんですよ……。真也様が行く場所が私のいるべきところであり、私はどこへだってついていきます。真也様の願いを聞き入れさせていただきます。それに私もお兄ちゃんにお願いがあるの。私のことは真那と呼んで欲しいの。……お願いできるかな?」

そうお願いしてくる久遠を……。真那を俺は抱きしめてあげると……その体を離し……お互いの顔をじっと見つめ合った……。そして、お互いに見つめ合い、お互いに自然と微笑みが浮かぶと……。俺は真耶のことを抱きしめて、耳元でそっと呟いた……。

「ああ。真也お兄ちゃんに任せろ。必ず守ってやるから……。一緒に戦おう……」

そう言い終わると同時に俺の背中から、翼が生え始める。久遠の瞳は、まるで光り輝く天使を連想する色に染まっており、その手からは光の玉が出現させていた。俺が久遠の手を掴んであげていると……。久遠はその手を握り返す。そして……。久遠が、もう片方の手で天に向かって指を指した瞬間……。辺り一面が眩い輝きに包まれ……。そして俺と久遠の姿が消える……。

するとそこには……1人の女性が立って居たのだ。……この姿を見るのは実に二回目である。そう。彼女はリリア……今はリリィというらしい。この国を救った際に出会ったのだが、今はその姿をしていないようだ。そしてこの女性に会うと、まず初めに……自己紹介が始まるのだ。

『久しぶりですね。アルムさんと久遠さん』……そう。俺達は、この人に名前を呼ばれるとなぜか落ち着く。それはこの人がこの世界を創造した神様で……。俺たちの名付け親でもあるからだ。俺はこの人の前に立つと自然と緊張してしまう。だが久遠は、以前とは違いとてもリラックスできているようだった。やはり久遠は凄いな。久遠の適応力は……もはや天才としか言えない。

『お元気そうで何よりですわ。この度は助けにきて頂きありがとうございます』久遠は、そう言って丁寧に頭を下げると……。すぐに笑顔になる。

『真也様は私が絶対に守るのでご安心くださいね! ところで……真矢さんのお姿を見かけないんですけど……。真矢さんはどこにいらっしゃいますか?』そう言うとすぐに真矢の行方について尋ねる久遠を見て俺は思わず笑ってしまった。するとその言葉を聞いた瞬間、リリアは驚いた表情をして……少し悲しげな顔をしながら答え始めた。

『あの方がこの世界に戻ってきた時……。私は、彼の命を終わらせてしまいました。彼はもうこの世界に戻って来る事は無いと思います……。ですからどうか気になさらないでください……。あなた達には酷なことを伝えてしまうことになるのですが……彼から頼まれた伝言をお伝えしますね。……【お前には無理だよ! 真矢には敵わない】これが彼の最後の言葉になります。本当に申し訳ありませんでした。私は彼に全て任せることにしたんですよ……。なのに……。こんな事になってしまって……私のせいで……。でも私は最後まで……彼の味方で居たかった……。私も彼の力になれればと思ったのですが……。結局この様な結果になってしまい……。お恥ずかしい限りです』そう言った彼女の声は……震えていた。

『真矢さん……大丈夫です。必ず私がなんとかしますので、お姉さんとして、久遠の面倒は私がきちんと見ますからね』そう久遠が宣言すると……。

『ふふっ。やっぱり、久遠さんには勝てないわね……。では改めてよろしくお願いね! そして久遠さん……。貴方には、真那の加護がついているみたいだから……。きっと大丈夫だと思うけれど、あまり無茶はしないでね?』その言葉で俺が理解するのは容易かった。俺達が呼ばれた理由……。それが今から分かると言うわけだ。久遠の方を見ると久遠は首を縦に振ると、俺と視線を合わせてくれた……。久遠も同じ気持ちだと確認できた俺は……リリアに質問をすることに決めたのだ……。久遠とのアイコンタクトを終えると俺はリリアに対して質問を始めることにしたのだ。

「はい。もちろん、そのつもりですよ。私たちがここに居る理由はリリアさんを助けるために来たんですから。それで……どうやったらリリアさんを助けられるんですか?」

するとすぐに返答してくれた。その回答とは……。……どうやら久遠の力が鍵を握るらしく、俺達2人でリリアの力を封印する必要があるそうだ。そうすれば俺達の役目は終わり……。後はこの国のみんなが頑張るだけだから、俺達にやる事は特に無いそうだった。だが、それを聞いて俺も

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