第16話 開戦。1000対1
兵の間から赤いマントを靡かせた高そうな服を着たおじさんが馬に乗って現れた。
おじさんは馬を止めると、背筋をスッと伸ばし、まるで天から見下ろすようにこちらを睨みつけた。
「我が名はジョイス・ハーマン。ユグルの領主だ。貴様はイリフ公の治めるこの地で卑しくも建国など宣言しおったそうだな。その罪の重さは貴様の命だけでは償えぬぞ。逆賊は皆殺しだ」
ジョイスは鞘から剣を抜き、天高く太陽に掲げてから切っ先をこちらに向けた。
ジョイスの動きに同調するかのように、兵士達がまた鬨の声をあげる。
これは……。
これは……ちょっとかっこいいではないか。
「我が名はグラルド・ユートリアス。ユートリアス王国の君主である。皆殺しは酷いと思う。お前に人の心はないのか」
真似して格好いい台詞を言おうと思ったが中々どうして難しい。
自分が口下手だという事を忘れていた。
悔しさがこみ上げてきた。
ジョイスは鼻で笑って兵達の後ろに戻っていった。
この戦い、負けるわけにはいかなくなったな。
馬に乗った兵が一人、前に駆け出してきて「かかれ!」と叫んだ。
前列の兵士達が槍を構えて走ってくる。
砂ぼこりをまいあげて突っ込んでくる姿はまるで巨大な波のようだ。
俺は気合いを入れて波動をだした。
人の波が真ん中から割れるように吹き飛んでいく。
いつの間にか、左手から騎馬隊が迫ってきた。
手をなぎ払うと、空気が裂けて落雷のような破裂音が響いた。
馬は驚いてみんな逃げていった。
これは便利な技だ。
歩兵達は起き上がり、二陣、三陣と共に押し寄せてくる。
俺は自分から兵達の中に突っ込んで、再び波動を放った。
輪のように広がった兵士達が、一人、また一人と起き上がり剣を手に斬りかかってくる。
一人一人丁寧に気絶させた。
シエラとの約束だからな。
既に立っている兵は三分の一くらいになっていた。
兵達は遠巻きに囲い込んだままうろうろとし、近寄って来ない。
その時、背後からボウッと音がした。
振り向くと弓矢が足元で燃えていた。
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