第13話 人口過多

 日本にいたカップル達は、みんなこんな試練を乗り越えて恋人を作ったのだろうか。

 そうだとしたら、素直に尊敬する。

 俺は普通の人達が普段どういう生活をしていたかなんて殆ど知らないからな。

 まさかちょっと出会いを求めただけで、こんな事態になるなんて思いもしなかった。



 「グラルド様。食糧不足が深刻です。それに家も足りていない。ゴボル達は野営したり狩りをしたりして凌いでいますが、いつまでもこのままでは……」


 俺は朝からヘライオスの家に呼び出されて、おじさん二人の浮かない顔を見せつけられていた。


 「なぜ俺に言う?」

 「あなたが王でしょう」


 ヘライオスに続いて、ビバルは大きく頷いて言った。


 「そうだぞグラルド。どうにかしてくれ。このままじゃみんな飢え死にしちまう」

 「なぜ俺に言う?」

 「だから、あんたが王だろ」


 「家はそこら辺の木を好きに切って建てればいいし、食料は森にある。森は全てを与えてくれる。自然の恵みに感謝しよう」


 俺の十年間を支えてくれた森だ。

 これからも力になってくれるに違いない。森は素晴らしい。


 「何言ってんだ。まあ家くらい自分でなんとかするけどよ。100人分の食料は無理だ。最近じゃ動物も警戒して滅多に姿を見せねえ」

 「肉が無いなら野菜を食えばいい」

 「野菜なんてどこにあるんだよ」


 「それですがね、私たち元奴隷はほとんど農民です。種さえあれば畑作はできます。収穫まで時間はかかりますが」

 「そうか。じゃあ種を探そう。どこにある?」

 「……森にはありませんよ。どこかの農家から買い取らないと」

 「買ってくればいいだろ」

 「金がありません。それにユグルに行けばハースタン軍に捕まる危険が」


 一言で言えば詰んでるんだな。

 まあ、いきなり人口が増えたから仕方がない。森もお手上げだ。

 この世界に詳しくない俺には解決方法なんて思いつきそうもない。ヘライオスに丸投げしてもう一眠りしよう。


 「へライオス。お前を宰相とする。内政はお前に任せた。がんばってくれ」

 「バカなこと言ってないで真面目に考えてください」

 「いい方法を考えてくれ。頼んだぞ。俺は散歩してくる」

 「ちょっと!グラルド様!」


 へライオスを無視して家から出た。

 広場を歩いていると、ゴボル傭兵の一人が慌てて駆け寄ってきた。


 「馬に乗った兵士が来てグラルド様を呼んでいます!」


 

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