学園旅行〜ライバルは美人現地ガイド〜
うぅ……まだお尻がヒリヒリする……。
さっき落とされた時に思い切り打ったお尻をすりすりと摩る。
でも先生が受け止めてくれなかったら、こんなもんじゃ済まなかっただろうし、一応感謝しないとね。
それに美しい先生のお顔を間近で拝めたし、眼福眼福。
「騎士科の諸君、カンザキ、ご苦労だった」
「騎士科はもう少し、剣技だけでなく分析力を磨く必要がありそうですね。帰ったら実践訓練を強化しましょう」
ジゼル先生の言葉にビクリと肩を震わせる騎士科の皆。
うん、皆、頑張って。
あれ?
先生の隣にいつの間にか知らない女の人がいる。
ウェーブのかかった黒髪に、アメジスト色の瞳を持った褐色の女性。
珍しいながら、いるにはいるって聞いてたけど、私以外の黒髪を見るのは初めて。
ボン!! キュッ!! ボン!! の美女……!!
……だれ?
皆もそこが気になっているようで、顔を見合わせあって若干ざわついている。
「これから三日間のスケジュールも発表するが、その前に紹介しよう。ラティス・ベルナ殿だ。彼女はこのカストラ村のガイドで、今回同行してもらう。迷惑をかけぬように」
ガイ……ド?
「皆さん、ガイドのラティス・ベルナです。気軽にラティスって呼んでね。何かわからないことがあれば、遠慮なく聞いて」
漏れ出る大人の色気……!!
女版レオンティウス様だ……!!
「ラティスさーん、恋人はー?」
恐れ知らずのAクラスの男子から声が上がる。
勇者か。
普段ジゼル先生やクロスフォード先生の恐怖に直面しているSクラスと騎士科の生徒が尊敬の眼差しで見つめてる。
転校初日に転校生に質問するのと同じノリだけど、よく見て。
先生とジゼル先生の眉間に皺が深く刻まれてるわよ!!
「そうねぇ。今はいないけれど……。あなたたちの旅行中にできる可能性も──あるかもね?」
さらりと横目で先生を見たのを、私は見逃さなかった。
こ、この女……狙ってる……!!
うちの先生を狙ってる……!!
先生が──食われる──!!!!
「ベルナ殿、律儀に答えなくていい。くだらない質問をするな、Aクラス」
「えぇ〜? 大事なことだと思いますけどぉ?」
あぁっ!!
そんなに先生にくっつかないで!!
胸の強調された服を着ているラティスさんは、先生に胸を押し当てるかのように先生の腕に自分のそれを絡める。
イラッ……。
心の中で何かが熱く
「離れてくれ。話はまだ終わっていない」
いつもなら「黙れ」「失せろ」「離れろ」と絶対零度の鋭い睨みを突き刺してくるのに、何その態度!?
イライラッ……。
あれ、そういえばレイヴンがやけにおとなしいな。
こんな美人に食いつかないレイヴンじゃないと思ったんだけど……。
不思議に思ってレイヴンに視線を向けると、レイヴンもこっちを見ていたようで、彼の琥珀色の瞳と視線が交わる。
私に何か用なのかな?
「全日共通して、朝食作りは各自行うこと。日にちごとの日程はあらかじめプリントでも配っている通りだ。1日目は、これからグループごとにテントを張る。張り終わったら昼までは自由行動。それから昼になったら昼食作りだ。調理場は砂浜から村に上がる階段の手前にあるので、グループで協力して作るように。午後からは自由行動だ。村に出て探索するのも良いし、海辺で過ごすのも良いだろう。夕食は村で、村の人が作ってくれた食事をいただくことになっている」
先生がやんわりとラティスさんの腕を話してから説明をする。
ちなみに2日目は魔石加工体験と自由行動。
夜は船上レストランでいただくらしく、3日目は一日自由行動で夜はキャンプファイヤーをするらしい。
前の世界でも馴染み深いキャンプファイヤーだけど、私は育ての両親の死があってから友達もできなくて、自分の殻に閉じこもっていた時期でもあったので楽しめなかった。
ひとまずはドームテント張りと自由行動と、昼食作りか。
ちゃんとした料理なんて久しぶりだなぁ。
作るといえば魔物を捌いて焼くくらいしかこっちの世界ではやってこなかったから、ちょっと楽しみ。
先生とも、少しは思い出作りたいな。
先生にとってはグローリアス学園の教師でいる限り何度も経験することだけど、私はもうこんなこと経験できないし。
ちらりと先生を盗み見ると、やっぱり視線を合わせてはくれない。
隣のラティスさんと何かを話しているようだけど、ここからじゃ何を話しているのかもわからないし。
はぁ……。
なんだろう。
なんだかすごく……胸がザワザワする。
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