学園旅行〜魔法の世界ってすごい〜
「では各グループ、教員からドームテントを受け取ったら、好きな場所に設置し、荷物を整理してくるように。終わったグループから自由行動。ただし昼には昼食をつくための食材をカストラ村に買いに行くように。食材の費用は学園から出るから、購入の際は学生証を店の者に渡すこと。話はラティス殿が事前につけてくれている。食材が揃ったら調理場で調理をし、食事後は好きに過ごせ。以上。解散」
先生の説明が終わって、グループが一塊になり先生方へとテントを受け取りに行く。
私たちのグループは、私、クレア、メルヴィ、マロー、ラウル、ジオルド君、アステルの7人だ。
「ほれ、こっちが女子3人用。こっちが男子4人用な」
「ありがとうございます、お兄様」
「……」
メルヴィが女子用、ジオルド君が男子用の、テントの元である小さな緑色の魔石が埋め込まれたボールを受け取る。
これがテントになる、らしい。
モノは知ってても使うのは初めてだからよく知らないのだけれど。
「お、あそこの端っこにしようぜ!!」
アステルが一番端の岩場の隣を指さす。
「え? あんな隅っこにすんの?」
「真ん中の方が視界が開けていいんじゃないのか?」
クレアとマローが言うと、アステルはニンマリと笑って「わかってないなぁ」と続けた。
「端っこだと、夜に騒いでも見つかりにくいだろう?」
……あぁ、そう言うこと。
確かに真ん中や密集地よりは気付かれにくいかもしれないけど……そう上手くいくのかな?
私が知ってる先生なら、端の方ほど気を配ると思う。
「なるほどね。じゃ、あの端っこ陣取るわよ!!」
クレアとアステルが砂浜をかけていく。
おぉ、まるで2匹の子犬のよう……。
いいなぁ、若いって。
ついそんな年寄りじみたことを考えてしまう。
ジオルド君が一番端にドームテントを置き、その隣にクレアがドームテントを置いた。
そして2人はそれぞれボール状のドームテントに触れると自分の魔力を流していった。
ぐぐぐぐぐっ──!!
え?
エェッ!?
どんどん広がって大きく膨らんでいくボールは、少しずつ形をドーム状に変え地に根を張った。
あっという間に目の前には大きなドームテントが出来上がってしまった!!
すごい……さすが魔法の世界!!
ハンマーや釘がなくても簡単に設置できるテントって……!!
良い……!!
「おっ、お前らここにしたのか?」
「レイヴン。……と、先生も?」
2人揃ってどうしたんだろう?
って、こら先生、目を逸らすな!!
「どうしたんですの? お兄様」
「ん? あぁ、シリルと俺、同じテントなんだけどさ、シリルが、端の方が危険だろうから、端の方にテントを張った方が良いっつってな」
おぉ。
私の読みが大当たり。
残念だったな、アステルよ。
視界の端でアステルがげっそりとしてる。
どんまい。
「お隣同士、よろしくな」
「はい、よろしくお願いします」
「……」
うん、そろそろ視線合わせようか、先生。
「お前達は荷物整理が終わったらどうするんだ?」
「私たちは水着に着替えて、海で少し泳いでから村に食料買い出しに行く予定です」
まだ時間もあるしね。
「あぁ、前に言ってた、水用の服か!! どんなのか楽しみにしとくから、早く着替えてこい」
……レイヴンに見せたら危険な気がする。
うちのクレアとメルヴィが危ないわ……!!
「よし、んじゃ、中で着替えたら、ここに集合な!!」
そう言ってマロー達男子組は、ぞろぞろとテントの中へと入っていった。
「私たちも行きましょ」
「えぇ」
クレアとメルヴィがテントに入って、私も続こうとすると「あ、ヒメ」とレイヴンに呼び止められた。
「どうかしましたか?」
「あーいや……、お前、大丈夫か?」
「? えぇっと……何が?」
「……いや、大丈夫ならいい。せっかくの旅行だ、楽しめよ」
「……はい」
私はにっこりと笑顔を貼り付けると、クレア達の入ったテントへと続いて入っていった。
うちのワンコは、意外と鼻が聞く。
人の感情の機微に敏感だ。
多分、先生のことでモヤモヤしてる私の気持ちに気づいてるんだろう。
あんまり、心配かけないようにしないとなぁ。
「わぁ……!! 広っ!!」
何これ。
テントの中なのに普通の部屋みたい!!
入ってすぐが広いリビングになっていて、簡易キッチンや木のテーブルが備え付けられている。
そこから各部屋、そしてバスルームにトイレに繋がる扉があって、ここがテントの中っていうことを忘れそうな光景が広がっていた。
本当、魔法の世界ってすごい……!!
「それじゃ、部屋で着替えてきますか!!」
「えぇ、そうですわね」
「はい。じゃぁ皆、また後で」
悩んでいても仕方がない!!
水着姿で先生を悩殺してやるんだから!!
見てなさい!! 大人の色気!!
見てなさい!! ボンキュッボン!!!!
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