This is Halloweenー大人の私ー
「カンザキ……なのか?」
未だぽかんと惚けた顔で私を見る先生に、もしかしたら失敗したのかと少し不安になって
「先生、鏡出してもらえますか?」
とお願いすると、すぐに先生は魔法で全身が映るほどの大きな氷の姿見を作り出してくれた。
そこに写っていたのは、いつもの幼女ではない。
黒髪と桜色の目はそのままに、少し大人びた顔つき、手足はすらりと伸びて、ぺたんこになってしまっていた胸もちゃんと存在感のある膨らみを持っている。
10歳の幼女ではない。
大人の女性がそこに映っていた。
私は自分の両手をまじまじと見つめてから、ペチペチと自分の両頬を確かめるように触った。
「この顔、この身体、大成功です!!」
これは、20歳の私だ。
目の色は桜色のままだが、顔や身体の作りは見慣れていたはずの懐かしい20歳の私だった。
「どうですレイヴン!! これでもう幼女なんて言わせませんよ!!」
大きく膨らんだ胸を張ってレイヴンを指差すと、彼は頬を真っ赤に染め
「え、まじで、ヒメなのか? おま……なんでこんな……」
と口をハクハクと動かしながら狼狽える。
「ハロウィンなんで、せっかくだから20歳の私をお披露目しようと思いまして、フォース学園長に頼んで、老け薬を作ってもらいました。でも、残念ながら一時的なので、まだまだ完全に戻れなさそうで──って、聞いてます?皆さん」
レイヴンはかろうじて動いているものの、先生とレオンティウス様、アレンは微動だにせず私を凝視していた。
私が言ってようやく我に帰るレオンティウス様とアレン。
「あんた、20歳だとこんな美人に成長するのね。ふふ、ますます楽しみだわ」
そう言って私の頬をスッと撫でる、歩く18禁、もといレオンティウス様の頬もほんのり色づいている。
「本当だね。とても綺麗な──大人の女性だ」
にっこりと微笑んでいるけれど、怪しい雰囲気が漂うのはそのツノのせいだろうか魔王様。
「ヒメ」
不意にレイヴンが私のすぐそばまでやってきて、私の右手を取る。
「とりあえず、一回俺の部屋に来るか。お前の騎士としては、お前に悪い虫がつかないように、俺がつきっきりで元の幼女に戻るまで見守っててやるから」
そう言って手にとった右手に、レイヴンは軽く口付けた。
「ひぁっ!?」
突然の甘い言動に驚いて私の口から裏返った声が飛び出る。
「何言ってんの、あんたのところになんて行かせたら、ヒメの大事なものが一瞬で奪われちゃうわよ。ヒメ、私のところにいらっしゃい。私が、元の子供に戻るまであなたを守ってあげる。副騎士団長だもの」
レイヴンから私を離し、抱きしめるレオンティウス様。
「じゃぁ、僕は元の姿に戻るまで、しっかりとその姿を目に焼き付けておこうかな」
相変わらず楽しそうに見物しているアレン。
だが忘れてはならない。
皆好き放題言っているが、私の元の姿はコレである。
幼女に“戻る”は、なんだか解せぬ。
どうしたものかと考えていると、ぐいっと私の身体が何かに引っ張られるように浮遊し、瞬間、すっぽりと硬く暖かいものに包まれた。
「先生」
そう。
私は今、先生の腕の中にすっぽりと収まっている。
大人の姿になったことによりいつもよりも先生の顔が近くなって、回された硬い腕が身体にフィットして、私の顔に熱が籠る。
「これは私が預かる。君たちは最後までパーティを楽しむといい」
それだけ行ってから、私を強く抱いたまま、私ともども先生は転移した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます