世界一大切だった人よ。幸せな世界を

アキノリ@pokkey11.1

それでも輝く世界と

止まらないスピードで地球は廻る

俺は過ごせるだろうか。君の居ないスピードに

世界は何時でも廻っている。

それも止まる事の無いスピードで。

絶対に停止する事はない。


それが止まるのはきっと人類が居なくなった時だ。

春夏秋冬。

何時も止まる事は無い。


ある日の事だった。

俺、霧島拓人(きりしまたくと)20にとても大切な好きな幼馴染の首藤雪姫(すどうゆきひめ)から手紙が来た。

それは、結婚式のお知らせ、という感じの手紙が。


俺はとても悲しく幼馴染の事を改めて想わずにはいられなかった。

後悔しか無かったと思う。

勉学に励んでいたらこの様だ。

幼馴染は高校時代に転校したのだが俺はその幼馴染と連絡を一応、取ってはいたが好きな人が出来たという連絡があって慌てていて今に至る。


雪姫と出会った時は幼い頃だった。

だから俺はそんな雪姫を思って丁度10年ぐらい経つ。

俺は側で成長していく幼馴染を父親の様に見守っていたのだ。


だけどある日の事、転校してしまった。

それは唐突な親の転勤事情。

だから俺はやり取りだけやっていた。

別れを告げて、だ。


幼馴染の事が俺は好きだったと思う。

桜の季節も、暑い季節も、紅葉の季節も、雪の季節もこの先もずっと一緒だと思っていたのだ。

だけど幼馴染は結婚する様だ。

俺は.....越えられなかった。


俺は乗り越えられるだろうか。

この痛みを、と思いながら。

大学と自宅を行ったり来たりしての生活。

そして幼馴染の事を想わずにはいられなかった。


幼馴染の笑顔も。

泣いた顔も。

全部思い浮かべれるから。

先を越された、というか.....結婚が決まった痛みが酷い。


心臓が痛すぎる。

胸が痛い。

全身が痛い。

震える。


俺は呆然と生きながら過ぎ去る世界のスピードを感じていた。

それでも世界は廻る。

時に激しく時に切なく。


そんな感じで、だ。

まるで.....そうだな。

一通り奔る風の様に、だ。


「.....テスト.....結婚式は.....」


そんな事を考えながらの日々。

俺は大学の課題も講義も無い日、自宅の一室で考え事をしていた。

今は3月11日。

結婚式は3月13日だ。

その事を思いながら俺は目の前のガラス窓から外を見る。


もう直ぐ桜も咲く。

全てが桜模様のピンクに彩られる。

だけど俺は何かずっと気分が全く上がらない日を過ごす。


どうしたら良いのだろうか。

このモヤモヤは。

その様な事を考えながら外の春風の吹く世界を見る。

彩られる世界の前の世界を。


プルルルル


「.....?」


その中でスマホに電話が掛かってきた。

俺は、?、を浮かべながらスマホの画面を見る。

その電話は遠山翡翠(とおやまひすい)だ。

後輩の2年生の女子大生である。


読書サークルのメンバーでもあるのだが.....何だろう。

俺は思いながら電話に出る。

すると翡翠が、もしもし、と言ってくる。

その事に、どうした?、と返事しながら電話に出る。

すると翡翠は、先輩。その。お話があります、と言う。


『先輩に大切なお話です』


「どういう話だ?」


『それは近所の公園で待ってますので来てほしいです』


言いながら翡翠は、待ってます、と笑顔で電話を切る。

俺はその言葉に、?、を浮かべて電話を切った。

それから上着を着てからそのまま立ち上がる。

何の話なのだろうか、と思いながら。


阻止て行くと翡翠が立っていた。

その顔は笑みを浮かべている。

が赤くもなっている。

俺はその顔を見ながら、どうしたんだ?翡翠、と笑みを浮かべる。

するとモジモジしていた翡翠は意を決した様に俺を見てくる。


翡翠は本当に翡翠色の髪をしている。

それから真っ直ぐな眼差しと顔立ちが整った美少女である。

俺はその姿を見ながら、可憐だな、などと思っていた。

それは簡単に言えば、儚いながらもシャキッとしている、みたいな。

そんな感じ。


「.....先輩。幼馴染さんの事.....とても残念です」


「そうだな。知っていたんだな」


「そうですね.....小耳に挟みました」


「.....そうか」


俺は少しだけ悲しげな顔をする。

それから翡翠を見る。

翡翠はその事を馬鹿にしに来たとかそんな感じでは無さそうだ。


まあ翡翠に限ってそれは無いだろうけど。

では一体何なのだろうか、と思いながら翡翠を見る。

すると翡翠は俺を赤くなって見上げた。


「私じゃ駄目ですか」


「?.....何がだ?」


「先輩の隣に居るのは私では.....駄目ですか」


「ちょっと待て。それは.....まさか」


俺は翡翠を見る。

翡翠は俺に近付いて来た。

それから俺の手を握ってくる。


そして見上げてくる。

私は幼馴染さんが婚約したと聞いた先輩をずっと見ていました。

とても見ていられないという感じで見ていました、とも。

それから赤い顔でジッと見てくる翡翠。

俺はその様子に赤面した。


「.....何時から.....」


「初めて会った日から好きでした。だから私は貴方の隣に居たいって思いました」


「.....!」


「先輩。私では駄目でしょうか。私なら貴方の痛みを分かち合えます」


「.....良いのか。こんな俺で。幼馴染を忘れられないんだぞ」


先輩。忘れられないのは当たり前です。だから私は貴方の隣に立ちたいんです。それも覚悟で私は貴方の隣に立ちたいです、と真剣な顔で言ってくる。

俺は涙がジワッと浮かんできた。


すると最後に翡翠は、実は幼馴染さんとは交流がありました。以前、と言ってくる。

俺はビックリしながらその顔を見る。

そして翡翠も俺を見てくる。


「3日前、駅で偶然、写真の幼馴染さんに鉢合わせたんです。それで話したら貴方の事を任せられました。貴方の事をずっと幼馴染さんは考えていましたよ。ずっとずーっとです」


「.....そうか。そうなんだな」


「はい。だから先輩。こんな私ですけど.....彼女にして下さい」


「.....ああ」


俺はその日。

翡翠と付き合う事にした。

そして幼馴染の結婚式に出席する。

翡翠と一緒に、だ。


そこで俺は幼馴染の意志を知る。

俺が心から好きだったと。

でも私じゃ全てが釣り合わないから、と。

それで婚約したんだ、という事を.....話をしていた。

悲しかったけど、とも。


「そうだったんだな。.....だから.....」


全部を考えてくれていたんだなお前は。

考えながら俺は目の前の俺を見ている花嫁姿の幼馴染を見る。

それから涙を浮かべた。

金輪際の別れになるわけじゃ無い、と幼馴染は俺に強調する。

そして笑顔を浮かべた。


そうだな、と思いながら俺は幼馴染を見つめる。

有難う雪姫。

俺は幸せになるよ。

お前のお陰で一歩でも百歩でも進めそうだ。

今世界が虹色に色付いた気がする。


fin

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