第23話 ティナの嫁ぎ先はもう決まっているのかな?
会議室にはコンラートさんの他に四人の男性が立っていて、私たちを見るなり敬礼を始めた。
「構わん。楽にせよ」
「「「はっ!」」」
すごいね。エルマー殿下の言葉に合わせて、みんな手を降ろしたんだけど、それが寸分の狂いもなかった。さすがは軍人さんだ。
「さて、殿下も来られたことだし作戦会議を始めようか。みんな知っているだろうが、カチヤを奪還するように王命が下っている。それでは現在の状況を説明してくれるかな」
「はっ! 現在教皇国の軍勢はカチヤの町を占領し、住民に物資の供出を求めているようです」
こういう情報は、きっとエリスの家とかが送っているんだろうな。
「それで、敵の軍艦はどうなっておる」
「現在、半数が沖合に停泊し、残りは沿岸部にいるようです」
やっぱりデュークが予想していた通りだ。連れてきた半分の兵隊さんでカチヤを占領して、残りは海路を塞がれないようにしているんだろう。
「どうしたらいいと思う。皆の意見を聞かせてくれ」
二人の若者が手を上げた。
「まずは、エリック言ってみろ」
「はっ! 敵は遠方からやってきて疲弊しているはずです。すぐに叩く必要があります」
うん、それはデュークも言っていた。
「最大数の兵士を持ってカチヤを開放すべきです!」
そうそう、たくさん兵隊さんを連れて行ってカチヤを助けて欲しい。
(ダメだね)
(どうして?)
(地形がそれを許さない)
「カチヤに行くには、海以外だといくつもの山を越えなければならない。街道はいくつかあるけど、どれも狭くて大軍を送り込むのは容易ではない。それに町も丘に沿って築かれているから、多くの兵士を展開するのには不向きだと思うよ」
エルマー殿下もデュークと同じ考えのようだ。
「次にキース、お前はどう思う」
「はっ! 私はまずは王国の全艦隊をもって相手の軍艦を
相手の船は結構立派に見えたけど、王国の船でもやっつけることはできるんだね。
(全艦隊持って行けるのならそうして欲しいけど、殲滅しちゃったらダメ)
そういえば、昨日デュークの言うことを話すときも殲滅とかは言わなかったな。
「ねえ、君。軍艦を殲滅しちゃったら、陸に残った敵の兵士はどうすると思う?」
「そ、それは……」
あーあ、みんな黙り込んじゃったよ。
「それじゃ、ティナ。昨日私に聞かせてくれた作戦を言ってくれるかい」
「わ、私ぃ!」
一瞬にしてみんなの注目が集まる。
ここで決める作戦が失敗しちゃったら、カチヤは助けられない。デュークの作戦がうまくいくかわからないけど、ここに軍事の専門家がいるのなら聞いて判断してもらった方がいい。
「ええと、まずは教皇国が兵士を増やす前じゃないといけません。どれだけ早く計画が実行できるかがカギになります」
私は、昨日コンラートさんに伝えたデュークの作戦をみんなにも話した。
「……なるほど、時間差で攻撃するのだな」
「はい、殿下。無理に殲滅する必要はないので、カチヤから出ていってもらうための計画になっています」
「お前たちはどう思った?」
エルマー殿下は先ほど発表した兵士に意見を求めた。
「はっ! その計画ですと、我々が相手に戦闘を仕掛けた後、負けたふりをして相手を引きつける必要があるのですね」
負けたふりをするのは海の部隊だから、キースさんは海軍の所属なのかな。
「ああ、できるか?」
「お任せください! 我々の操船技術と練度の高さを見せてあげますよ」
おおー、キースさんの方は乗る気になってくれたみたいだ。
「私たちの騎士団は、海での戦闘が行われている間に情報屋が使っている抜け道から兵を忍び込ませて、敵の艦隊が見えなくなった時を見計らって奇襲をかける」
「はい、相手を不安にさせることが目的です」
教皇国の兵士の人たちは遠く離れたところから来ているから、帰れないかもと思ったら士気が下がるとデュークは言っていた。ただ、追い詰めたらいけないらしい。
「そして、
エリックさんは騎士団さんなんだね。こちらも問題ないみたいだ。
「エルマー殿下。いかがですか?」
「父上が言っていたことがわかるよ。この計画を奏上することにしよう。ところでコンラート、ティナの嫁ぎ先はもう決まっているのかな?」
「いえまだですが、ティナは今、カペル男爵の代行となっております」
「そうか、それでは何としてでもカペル男爵を助け出さないといけないな。よし、みんな、陛下の許しがすぐにでも出るだろう。いつでも出発できるように準備を整えておいてくれ。それでは解散!」
ちょっと、最後の方は何言っているのかよく分からなかったけど、カチヤを助けるために動いてくれるようになりそうだ。
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