第3話 狙われる私〜救世主〜

「ねえ、瑞君ってカッコイイよねー?」


「本当だよねー。モテモテだから、それだけ人気高いって事でしょう?」


「そうだよねー」



クラスの女子生徒達の会話が嫌でも聞こえてくる。



《まあ確かにイケメンだけど騙されてるよ》

《彼は違う意味でヤバイ男(やつ)だから》



「そんな誰かさんとは正反対!」

「確かに!」


「彼女って目立たないし」

「地味だし」


「絶対、彼氏出来ないし、いたら地球ひっくり返っちゃうって!」


「アハハ…」



《はいはい》

《そうでしょうね》


明らかにわざと私に聞こえるように彼女達は言っているのが分かった。




「ねえ、比羅瀬さん」

「はい?」

「比羅瀬さんって恋した事ある?」

「…恋…?」



《勿論、あるし!まあ、すっごい傷付けられたけど》



「まあ、例えあった所で片想い?」

「クスクス…そうだろうね」

「キスすら経験ないでしょう?」



《勝手な思い込みも困るけど》

《あなた達よりも経験あるかと…》




彼女達に、内心突っ込み入れる。




「ねえ、私が男友達に頼んであげるからさ相手してもらいなよ?」


「えっ…!?」



《そんな事したらバレるし》



「辞めなってー。まず、相手されないって」

「あー、そうかも」

「アハハ…」



私は笑い者にされる中、帰る事にした。




「………………」




教室を出てすぐ、私の前に誰かが立ち塞がる人影。




「………………」



顔を上げる視線の先には



「……!!!」


「…み」



キスで唇を塞がれた。


唇が離れ、スッと私の唇を片手の人差し指で触れると、もう片方の手を自分の唇に触れ、シッ!という仕草をした。



トクン

私の胸の奥が小さくノックする。



グイッと私の手を掴み、近くの教室に移動する。



「あんた、どうすんの?」

「えっ?」

「ヤんの?いや、ヤられるの間違…」



私は打とうとした。



「おいおい、暴力反対!」


「ふんっ!その顔に傷つくってやりたい位だよ!イケメン男子の瑞 零次!」


「好きでイケメンじゃねーし!つーか…友花ちゃんの場合は…ヤってあげる!が合ってるよね?だけど…感じやすい体だから逆に男が燃えるか…」



「………………」



「なあ、あんたさどんだけの男とヤったの?」


「あなたには関係ないでしょう?第一、あんたこそ、どれだけの女の子誑(たぶら)かしてんの?その顔使って」




ガンッ


壁を殴る彼の姿。



ビクッ


「…好きで、この顔に生まれてきたんじゃねーし!お前こそ、どれだけの男騙してんだよ!」


「私は男が信じられないだけだよ!男なんて信じない!私は…」



下にうつ向く。



「………………」



「何だよ」


「何でもない!さようなら!」




スッと行く道を塞ぐと、スッと両頬を優しく包み込むように触れる。



トクン…

胸の奥が小さくノックした。



「…お前…何があった?」



「………………」



「…お前が…比羅瀬 友花が、こうなったのって…過去に…一体何があったんだよ…お前…相当傷付いてねーか?」



「………………」




私は泣きそうになった。


それを察知したのか、彼は私を抱き寄せ、抱きしめた。




「…何もないよ…何も…だから…気にしないで放っておいて…」



私は、軽く押しのけると帰って行った。





「…今にも泣きそうな顔してたじゃねーかよ…アイツ…過去に何があったんだ…?」




俺は思った。



彼女の中に


何か暗い過去を持ってる気がした。



男を騙しているというより


男を恨んでいる感じ?



そうとなれば


俺と同じ類(たぐ)いの人間?



俺は女が嫌いだ!


女は信じられない!と思う経験を


何度もしてきた



もし…彼女を救えるなら


俺は彼女を救いたい



だけど…


それは きっと


俺達の関係が変わり


最初で最後の恋愛に


なるような気がした


お互いの傷を埋め合えるような


関係を築く事になるだろうと――――






ある日の放課後。



「あっ!いたいた!」



3人の男子生徒に囲まれた。




「えっ?あの…」


「地味な女子生徒」

「真面目女子」

「マジ地味だね?コイツ相手すんのってさ、俺達ぐらいじゃ?」




つまり……


それって…相手しろって事…だよね?



私は逃げようとしたが、すぐに捕まった。




「や、やだ!ちょっと離…」



口を押さえられた。



「黙って付いて来いよ!地味子ちゃん」

「誰かに話したらただじゃ済まさないから」



《や、やだ!バレる!》



私は使用されていない体育倉庫に連れて行かれた。




ドサッ

押し飛ばすようにすると、すぐに押さえ付けられた。



「や、やだ!辞めてっ!」



抵抗する私の眼鏡が外れる。



「お、おいっ!」

「ちょ、ちょっと見ろよ!」

「は?同一人物?」



「………………」




3人は顔を見合わせる。



私は、緩んだ隙に逃げようとした。



「残念!」

「簡単に逃がすわけないっしょ?」




再び押さえ付けられ、私の体の中に容赦無く入り込む。




ビクッ


「や…」


「ヤベー…そそる!」

「女友達より良い女じゃん!」


「おいっ!コイツ初めてじゃねーぞ!」

「うっそ!マジ!?」

「な〜んだ。じゃあ俺達の相手してよ」




私は首を左右に何度も振る。




「おいっ!しっかり押さえてろ!迷わず一気にヤるぞ」

「りょ〜か〜い」

「オッケ〜」



ガンッとドアを叩く音が響き渡る。



ビクッ


「なあ…それってさ犯罪じゃね?」

「あ?何だと?」

「こっちに人が行くの見えたから来たんだけど、先生達もすぐに駆け付けると思うけど?」


「何!?…チッ!おいっ!行くぞ!」

「あーあ、残念!」

「運が良い奴」



3人は足早に去った。




「……………」



《…良かった…でも…バレるの時間の問題かも…》




私はゆっくり起き上がる。



フワリと抱きしめられた。



「大丈夫か?」



ドキン…

何故か胸が大きく跳ねる。



《この声…》



私は顔を上げると同時にキスをされ、深いキスをされると、ゆっくりと倒された。


首すじに唇が這う。




吐息交じりの声が洩れた。



はっ!



「…や、ちょっと!」



押しのける。



ドキッ


視線がぶつかる。


その先には奴・瑞 零次がいた。


しかも、制服が、はたけて肌が露わになっている彼の姿が妙に色っぽく見える。



かあああああ〜っ!



「うわっ!何、その反応!ピュアの塊かよ!」

「制服っ!乱れ!エロ過ぎ!」

「クスクス…そういう、友花ちゃんもエロいよ」



私は自分の乱れた制服を整える。



「つーか…助けたあんたが襲ってどうすんの?意味分かんないんだけど!」


「いや…助けたお礼にHさせてくれるかな?と思って」


「は?あのねー!」


「まあ、好きでもない女、抱く気ないけど」


「いや!あんたなら、やりかねない!」



ポンと頭を押さえる。




トクン…


「あんたのような傷心持ちなら尚更抱けねーな」

「…えっ…?」

「あんたを抱くなら大事な女になって、お互いの気持ちが1つになった時」


「瑞…」



微かに微笑む彼。



「少しは俺の事、信じてくれても良いんじゃねーの?ちなみに俺も、少しはあんたを信じたいかな?」


「えっ…?」




片方の頬に優しく触れる。



トクン…



「さあ、帰ろうぜ!アイツらには釘打っとく。バレるには早すぎだろう?」



私は彼を少し信じてみようと思った。



スッと彼の手を無意識に触れる。



「…友花…ちゃん?」

「あ、ありがとう…」




そう言うとパッと離す。



「だけど、あんたは誰からも好かれるモテモテだから、これ以上、私には関わらない方が良いよ。私は、嫌われ者だから、あんたの人生…メチャクチャにしたくないから」




私は走り去り始める。



グイッとすぐに引き止められたかと思うとすぐに抱きしめられた。




「……ちょ、ちょっと!」


「じゃあさ…あんたの人生に俺預けるからさ、あんたも俺に預けろよ」


「…えっ…?」


「俺、あんたの事知りたいかも」

「ちょっと!困る!」


「少しずつ歩み寄れよ!ゆっくりで良いから俺に!男が嫌いなら…まず、俺にだけは本気でぶつかってこいよ!比羅瀬 友花っ!」



「………………」



「お前の過去に何があったかは知らねーけど…俺だって…本当は怖くて不安なんだよ!」


「えっ…?」


「俺は女が信じらんねーんだよ!」




《嘘…》



「かなりのやり手だと思ったのに」

「…おいっ!や、やり手って…」



バッと抱きしめた体を離す瑞 零次。


「ま、まあ…ある意味間違ってないけど…それには理由あるし!お前が、男を嫌っているように」


「そう…」


「とにかく!そう言う事だから!」


「うん…まあ…様子見…お互いの事、深く干渉しない程度に」





私達の関係は


ゆっくりと変化していく……



“信頼”という言葉に


向かって……































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