第2話 私を知る奴
「比羅瀬さん、これ代わってね」
「えっ…?」
「どうせ帰るだけでしょう?」
「そうそう。何の予定もないでしょう?あなたみたいな地味な女(ひと)」
「クスクス…やだ、辞めなってー」
3人のクラスメイトの女子生徒達は、私に色々と好き勝手言うと、掃除当番を押し付け帰って行った。
「…掃除当番…任せられても…つーか…自分でしろっつーの!」
私は掃除を始めようとした、その時。
「本当だよねー」
ビクッ
振り返る私。
「君、この前もしてなかった?相当、掃除、好きなんだね」
「いけませんか?」
「…別に…」
「とにかく!あなたには関係ないんだし帰って下さい!」
「はいはい、分かりました。比羅瀬 友花さん」
そう言うと去り始める。
「あっ!そうだ!俺、瑞 零次(みずき れいじ)。よろしく♪」
「誰も聞いていませんけど?」
「俺が教えたかったから」
「あっそ!」
「それじゃ」
男子生徒は帰って行った。
そんなある日の日曜日。
「ねえ、彼女。1人?」と、男の人。
「はい」
「ちょっと付きわない?」
「良いよ。お兄さんも1人?」
「いや、友達が向こうにいる」
「えー、そうなんだ。残念」
「えー、そう言わないで付き合ってよ」
「どうしようかな〜?じゃあ、条件。後で2人きりで会おうよ」
「えっ…?」
「駄目?」
「…いや…」
「じゃあ決定ね♪」
私は、腕を組み友達の所に行き、楽しい時間を過ごす。
そして、2人とは別々に、こっそり会う約束をし待ち合わせをすると、体の関係を持つと、そのまま別れた。
それっきりという私のやり方。
誰も知りはしない。
私が、そんな女の子だって事。
無理もない。
私は学校では普段眼鏡を掛けて良い子ぶって過ごしているのだから。
そして、ある日の日曜日の次の日。
私は授業中、何度も居眠りを繰り返していた。
その日の放課後。
「おいっ!」
私を揺らす人影。
「おいっ!起きろよ!」
目を覚ます私。
ドキッ ズルッ
目の前にはイケメン男子に胸が大きく跳ねる中、私の眼鏡がズレる。
男の子は勿論大嫌い。
だけど、やっぱり、第一印象、つい目がつくのは顔だ。
寝起きで視界がボンヤリし、眼鏡もズレた感じの状態では良く見えない。
私は見つめる。
「誰?」
「誰でしょう?」
眼鏡を戻す。
「…なっ…!」
ガタガタン…
椅子ごと後退りする。
私の目の前には、瑞 零次の姿があった。
「そんな驚かなくても良いじゃん!友花ちゃん」
「…えっ…?…ゆ、友花…ちゃん…?キモッ!」
「キモッ!って…ハッキリ言われてるけど…そう呼んだら…駄目〜?俺、仲良くなりたくて」
あざとい笑顔で甘えるように言う。
「お断りします!帰って!起こしてくれてありがとうございました!」
私は帰る支度をする。
「そうカッカしな〜い。女の子は笑顔、笑顔」
「友達でも何でもないあなたに向ける笑顔なんてありません!さようなら!」
私は帰り始める。
スッと行く道を塞がれた。
「どいて下さい!」
スッと眼鏡が外される。
「ちょ、ちょっと!」
私は、バッグで顔を隠した。
「か、返して!」
そう言うと、男子生徒に背中を向け、片手を出す。
「眼鏡、早く返して下さい!」
そう言う私の前に男子生徒は来る。
バッグで隠す私。
グイッとバッグを外された。
「見ないで!」と、顔を反らす。
「良いじゃん!」
私の両頬に触れ、振り向かせた。
男子生徒と視線がぶつかる。
「………………」
「眼鏡、いらなくね?」
「…えっ…?」
「眼鏡の理由、全然分かんねーんだけど」
「あ、あなたには関係ないでしょう!?」
眼鏡を掛けてくれる男子生徒。
「訳あり?」
「さあね!」
「だってさ……その雰囲気じや超イケメンの彼氏がいるか…。……もしくは……男を騙しまくっている…魔性の女?…ぐらいしかねーよな?」
《…えっ…?一瞬…変わった…?…よね…?》
「だ、騙すって…ある意味そうかもね…男なんて所詮、女の子を平気で騙す輩でしょう?」
「…お前…本気で言ってんのか!?」
「そうだよ!嘘つく理由なんてない!」
グイッと腕を掴まれ、壁に押し付けられた。
カラン
勢いで眼鏡が外れ、床に落ちる。
「は、離して!」
「じゃあ!聞くけど!女だって平気で男騙してんじゃねーかよ!」
「そうかもね!つまりお互い様って事だよね?世の中、騙し合い。どれだけの人、傷付いてんだろうね」
「………………」
バッと私を彼は離し、私は眼鏡を拾う。
「それじゃ。この事、誰かに話したら、ただじや済まさないから」
私は帰り始める。
グイッと腕を掴まれ引き止められたかと思うと、いきなりキスをされた。
「お互い様だろ?俺の本性、気付いてるくせに」
至近距離で言われた。
すると再びキスをされ熱が唇を割って入ってきた。
《ま、ま、待って!》
戸惑う私に容赦なく、私の体に手が伸びてきた。
ビクッと強張る中、
「……ん…んっ!」
吐息交じりの甘い声が洩れてしまった。
かああああ〜っ!
体全身が熱くなったのが分かった。
唇が離れる。
「へえ〜、やる事やってんのに…案外…恥ずかしがり屋?それとも…」
ドキッ
耳元で囁かれた。
「じゃあな!比羅瀬 友花さん。続きは、また、そのうちな」
そう言うと教室を後に帰って行った。
耳元で言われた言葉がこだまする。
『感じやすい体してんのか…俺の腕が良いのかな?』
そう言うと私の首すじに唇を這わせた。
気付けば私の制服は乱れていて、肌が露わになっていた為、慌てて直した。
「油断も隙もあったものじゃない!手慣れてる!かなりのやり手?」
私は、彼・瑞 零次によって、人生が変わっていくのだった。
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