第12話 カポーン

周囲を警戒しながら神殿の階段を登ると巨大な柱が並ぶ空間が現れた。

柱や壁が青白く光っている為奥の方まで見る事が出来た。


「こんな巨大な建物帝国には無いな。光っているのも不思議だ。」

最初はここがオークの根城かとも考えた。入れ替わりで転移したからね。でもオークにこんな建物作れるとは思えないし、そもそも生物の気配も一切ない。

でも油断してはいけない。ここは未知の地だ。


慎重に進んで行くと先の方にある台座が光っている。近付いていくと台座の中心3メートル程の円形の光の輪に異国の文字と模様が浮かび上がっている。


「これって魔法陣?」

しかもこれさっき通ったゲートの模様に似てる。


「転移の魔法陣ならまたどこかに飛ばされるのか。ふぇぇ。」

どうしよう。乗ってみるか?いやでも正直乗りたくない。もう少し探索してみよう。


ー 1時間後 ー


何も無いよ!柱と壁だけだよ!


「はぁ。」

しかし不思議なのは全く風化してないってところだ。普通の神殿なら柱に傷や欠けている部分があって当然なのにこの神殿は、何て言うか出来たて?今から完成式典するよ!みたいな、そんな奇妙な感じがするんだ。


トボトボとまた台座へ戻ってくる。

「乗るしか無いな。この魔法陣に。」

だってそれしか選択肢ないからね。

恐る恐る乗ってみる。


『Dungeon of despair』


うわ!目の前に文字が浮かんだぞ。

『「加護 底辺のゴミ」神話級ギフト確認。絶望迷宮ディスペアダンジョンへの挑戦が可能となります。転移しますか?YES/NO』


無機質な女性の声が頭に響いた後に浮かび上がるYES/NOの文字


「ダンジョンへ挑戦とか言ってたよね?」

いや無理なんだけど。1人で挑戦何て無理なんだけど!

それに気になったのは僕の加護神話級とかいってなかった?

胡散臭過ぎぃ!


躊躇なくNOを選択。

何も起こらない。

魔法陣から出ると文字は消えた。

ここに残るかダンジョン行くかの2択って酷くない?


もう覚悟を決めるしかない。先に進むんだ!


魔法陣ヘ乗るとまた声が聞こえてくる。

表示が現れ今度はYESを選択。

魔法陣が光り視界が一瞬で変わるとそこは、


「これって、大浴場か!?」


帝都で見たことあるぞ。戦士や一般の市民が湯浴みをする場所に似ている。

入っているのは水かな?なんか青い色してるけど。


『ディスペアダンジョンの入り口へ転移しました。ログイン報酬としてスキル「鑑定」が付与されます。』


また声が聞こえたぞ。鑑定とか言ってな。


「鑑定!」

目の前にある水を蓄えた浴槽を見ながらいうと。

【癒しの湯・・・絶望に打ちひしがれた、あなたの心と体を癒します。】

なんとも曖昧な説明だけどまあ大浴場と考えていいだろう。何処からお湯が湧いているのか不思議だが、いちいち驚くのにも疲れたよ。


て言うか鑑定スキルが使えるようになってる!凄いよこれは!上級の一部の神官にしか使えなかったスキルを僕が使えるようになるなんて!ふぇぇ。


よしこの部屋のもの色々鑑定してみよう!

【椅子・・・身体を洗う時に使う椅子】

【石鹸・・・身体を洗う時に使う物】

【布・・・身体を拭く時に使う布】

どう鑑定してもただの大浴場です。本当にありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る