絶望の果て
@kaoru1838
第1話 最低の加護
迷宮都市ミラージュ。
帝国に8つある迷宮都市の中でも初心者向けダンジョン「ミラージュ」を抱える都市だ。
冒険者の登竜門と呼ばれるこのダンジョンをクリア出来ないようでは先は知れている。
商人や冒険者で賑わう大通りを歩きながら将来を夢想する。
このダンジョンを制して一級の冒険者に僕はなる!
「アル、何興奮してんの?キモ・・・」
ブロンドの髪のゆるふわ少女が呟く。
この子は幼馴染のレイナ。魔術師だ。
炎を操った攻撃魔法が得意で中々の威力がある。
正直僕より強い。
「ダンジョン入る前に飯食おうぜ。」
レイナの前を行くガタイの良い奴がハッス。
村1番の力持ちで盗賊職を持つ。
当然僕より強い。
「アルよぉ、じいさんから金貰って来てんだろ?お前の奢りだよな?w」
銀色の長髪をなびかせて僕にたかっているのが剣士のバッカス。態度は悪いが腕は立つ。
ちょっとした回復魔法も使える村の期待の星だ。
その強さは模擬戦で秒で負けた事のある僕が補償する。
そして
「おごり!?いや、そんなには貰ってなくて、無駄遣いしたら怒られるし、ふぇぇ」
この腑抜けがぼくです。
僕は祖父に育てられた。物心着いた頃には両親は亡くなっていて、なんでも帝国兵に追われた魔物が村に逃げ込み村人を襲ったんだとか。
畑で農作業をしていた両親は運悪く魔物と鉢合わせし無惨な姿で発見された。
魔物は帝国兵に倒されたが村の被害は甚大だった。
祖父は深く悲しみ魔物を憎んだ。
祖父の影響か次第に僕も魔物を憎むようになり魔物を狩る冒険者に憧れた。
魔物を倒すには神の加護が必要となる。12歳になると帝国の大神殿へ行き加護を受ける。
ここで人生の方向性がほぼ決まると言っていいだろう。
祖父は僕が冒険者になって魔物を駆逐する事を望んでいる。
はぁ〜気が重い。僕は争い事が大嫌いなんだ。魔物だろうが虫だろうが殺したくない。
ごめんよおじいちゃん。
なんて事を考えながら神官様の前までやってきた。
僕は片膝をつき頭を垂れる。
神官様は何やら呟いたあと透明なプレートを僕の頭の上へ掲げた。すると
プレートがぼんやり光り文字が浮かぶ。
「ぶふぅ!」
!?えっ待って神官様吹いたよね今
肩をプルプルさせた神官様からプレートを渡される。
書いてある文字を見る。
「底辺のゴミ」
えっ!?えっえっ待って何これ職業じゃないよね!
「神官様!これはどう言う加護なのでしょうか!?」
僕は不安と焦燥を抑える事が出来ず神官様に詰め寄る。
「加護に振り回されてはいけません。意味は自分で見つけ・・・ぶふぅ!」
袖で顔を隠し肩を震わせる神官様。
「ふふっあはははははは」
結局2人で笑っちゃったよ。てか笑うしかないよねこれ。
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