第29話・魔王が生きていた件
「どうしたのナナ?急に泣き出して?」
「いや、えっと。あのう。私こんなに幸せで良いんでしょうか?」
「何を言ってるんだ、ナナ。幸せにいて良いに決まってるだろ」
「でも。私は私は魔王を殺せてないんですよ」
・・・・・・・・・・・・
「ん?」
【陛下。大変でチュウ。魔王が魔王が生きていることが判明しましたでチュウ】
俺がナナの衝撃発言で驚いていると、ネズミ眷属から念話が来た。何というグッドタイミング過ぎるよ。凄いな。タイミングよすぎるやろ。
【取り敢えず詳しく教えてくれ】
【はいでチュウ。まず魔王は勇者に殺されたと思われたのですが、実は核を魔王城の地下奥深くに隠していたでチュウ。そして時間をかけて身体を再生させて。復活を遂げていましたでチュウ。復活をした魔王は各地に散らばった部下を集めたり蘇生したりして、新しく魔王城を再建していますでチュウ。多分後3週間ほどで再建及び配下集めに蘇生は終わるでチュウ】
【なるほどね。ありがとう。取り敢えず聖教国の動向も調べてくれ】
【分かりましたでチュウ】
「オッケー、ナナ。今俺の眷族から魔王が実は生きていたという情報を聞いた。そんで魔王城の再建及び配下の蘇生等が着実に進んでいて後3週間で終わるという情報も聞いた。多分それが終わったら魔王は本格的に自分を滅ぼそうとした勇者に対しての復讐ひいては隣にある邪魔で仕方のない聖教国に戦争を仕掛けると思う。まあ、どうでもいいな。面倒だし?」
「え?どうでもよくなんて無いですよ。だって、そうなったらたくさんの人が死んでしまいますよ。勇者であるナナが救わないと。ナナが向かわないと。じゃないとナナはナナは勇者じゃないです」
「いや。違う。今の勇者は聖教国の第五皇子様だ。そして民衆が求めている勇者も民衆が救ってくれたと思っている勇者も全部、第五皇子だ。ナナじゃあない」
「ご主人様。どうしてそんなことを言うんですか。ナナはナナは勇者です。そして魔王を倒さないといけない存在です。そして聖教国の民として皆を救わなければ。じゃないとじゃないと。ナナは・・・」
ナナが俺に縋るように。泣きながら叫んできた。
そんなナナに違和感を覚えた。何かこうナナらしくないなと。まあ、そんな一緒にいるわけではないけど。ただま何というか勇者という存在、いや聖教国そのものに縛られているような気がする。
あれ、もしかして洗脳されている?
それも幼少期からの洗脳。
ああ、そう言えば本で読んたことあるな。
聖教国は国民全員に聖教国を敬い神の信者となるような教育をしていると。
多分ナナも小さな村だとはいえ。例にもれず洗脳教育を受けてるんだろうな。
そんで。多分勇者となった時に強めの洗脳をくらったと。
でも、おかしいな幼少期からの教育的洗脳は状態異常ではないから俺の眷族化によるリセットは出来ないけど勇者になってから受けたであろう洗脳ならば解除出来ると思ったけど。
それこそ洗脳に特化した天魔が本気でナナに洗脳を掛けてない限りは。
・・・・・・・・・
あれ?この仮説あってね?
俺はナナの頭に手を置くと本気で手に力を込めて、唱える。
「消滅の天魔である我が望む。この者に掛けられし、洗脳という悪しき力を消滅させてしまえ。洗脳消滅」
パリン
そう音が鳴り。ナナの中の何かが弾けるのが分かった。
ナナは天魔に至ったわけやし普通に簡単に消滅出来たな。ありがたい。
「えっと。ご主人様?もしかしてナナは洗脳されてましたか?」
「ああ。そうだ。その様子だと洗脳は解けたようだな」
「うん。急に今まであった聖教国に対する忠誠心や勇者であるという自信、勇者として人を救いたい魔物を殺したいという思いが綺麗さっぱり消えました」
「それは良かった」
「うん。凄く良かったです。今のナナは他人とかどうでもいいです。ご主人様さえいれば他にはもう何も要りません」
おっと。何か思ったのと違う反応されたな?あれ?ナナもしかして俺への依存度がMAXいってない?まあ大丈夫か。俺に危害を加えることはないだろうし。
「そうか。じゃあケーキ食べようか。途中だったしね」
「うん」
そうして三人で幸せにケーキを食べました。
食べ終わったら三人で同じ布団で楽しくお喋りしながら眠りにつきました。
めでたしめでたし
という感じで平和な日常が送れるわけはないっすね。
まず。俺には今現在3つの面倒事が出来た。
一つ目はナナを専属メイドとして雇うということを父上に報告しないといけないことだ。
まあ、父上のことだ。
ナナが元勇者だとは気が付かないと思うが。天魔だってのはワンチャン気が付きそうである。
もちろん俺の消滅の力で周囲に漏れている聖なる力は全部消滅させて、一般人と同じように見せかけるつもりではあるが。
そう考えるとまあ、多分何とかなるとは思う。
最悪バレても父上だったらどうとても言い訳できるし。
こちらにはイトという天魔がいるのだから、下手につついて反乱でも起こされた詰み確定なんで、大人しく受け入れてくれるだろう。
あ、というか待てよ【探知の天魔】から絶対話きてるだろうからナナが天魔って父上絶対分かるやん。すっかり忘れてた。だからどうしたという話だけどね。
これはそんな悩まなくていいかな?
二つ目は聖教国側の介入についてだ。
まず最初に断言しよう。
あの偽者勇者じゃあ、絶対に魔王を殺せない。
魔王は腐っても魔王であり天魔を余裕で超える存在だ。例え重傷を負ってたとしてもその強さは健在だ。
勇者という魔王に対しての圧倒的優位を取れる存在でなければ勝つのは非常に難しい。
それはもちろん俺とかならば勝てると思うが。いうても圧勝というわけではない。多分ギリギリの勝利だと思う。魔王はそれくらいの力がある。だから勇者の力と言っても勇者の持つ莫大な聖力しか奪えていない偽者勇者じゃあ、魔王に勝つのは絶対に不可能だ。
勇者の圧倒的な力は勇者という神から与えられた力に宿っているのだから。そしてその力は与えられた勇者以外は絶対に扱えないのだから。
つまりどういうことかというと、もし、偽者勇者が魔王に挑んだとしたら、十中八九殺されるということだ。
でもまあ、聖教国も馬鹿じゃないだろうし、その事には気が付くと思う。だから本当の勇者であるナナをどうにかして連れ戻そうと考えるはずだ。
でまあ、呪いは解除したのだが。解除されるまでの行動履歴は聖教国側は把握してると思う。
だからどういう形かは分からないがこの国に何かしらの形でアクションを起こすだろう。
本当に面倒だな。
で、最後の三つ目は魔王だ。
ようはこのままだと聖教国は魔王を倒せないという問題だ。
そんで魔王は人類に対しての明確なる敵であり。人類を憎み怨み憎悪に満ち溢れてる、絶対に和解も出来なければまともに会話も出来ない存在だ。
そんな魔王はまず最初に聖教国を狙って戦争をするのだが。これの理由は超簡単で聖教国が魔王のいる領土に一番近いからだ。
だから魔王が聖教国を滅ぼし終わったら。その近くの国に攻め入るだろう。
そうして色んな国の人間を虐殺して周り。最終的に全ての人類が協力し合い魔王を討ち滅ぼす部隊を結成させて魔王を滅ぼすか、天魔連盟が魔王を抹殺するかの二択になるだろう。
まあ、少なくともその間にかなりの犠牲者が出て世界経済はボロボロ、魔王を倒したとしても内乱やら戦争やらでかなりの数の国が滅ぶだろうな。俺の今いる国、ヤマダ王国だって例外じゃあない。
だからそうならないように神は勇者を作るわけなのだが、ハア、全く持って面倒だ。
特に俺は今この国を気に入ってるわけだし何不自由ない第五王子の身分での生活が凄く楽で好きなんだ。
イトがいて、新しくナナも増えて。適度に友人がいて。大好きな本をたくさん読めて好きなだけ寝てグウタラできるこの環境は最高だ。
もしこの国が戦争に巻き込まれたり。最悪滅ぶってなったら同じ環境を作るのは非常に面倒だ。だから三つ目のは絶対に何とかしないとな。ハア。面倒極まりない。
以上の3つがこれから予想される問題だな。
一つ目とかは結構簡単に終わりそうだな。だって父上に報告するだけだから。最悪イトを使っての脅しを交えながら。
二つ目と三つ目は相当に面倒そうだ。
特に三つ目の問題は相当に面倒だ。最終手段俺が解決するというのはあるが、それは非常に面倒なので出来ればやりたくない。でも放置したらこの国が危うくなるし。俺の好きな本が燃えてなくなったり。本の著者の人が戦争で亡くなるのは辛いし。
あ、良いこと思いついた。何も俺一人で抱え込む必要はないやん。天魔連盟に協力してもらおう。
俺一人、まあイトとナナを連れてくにしても、天魔三人じゃあきつくてしょうがないと思う。
だがしかし天魔連盟から協力者5人位引っ張ってこれれば圧勝できるやろ。そしたら俺の負担もかなり減らせる。
ほんで二つ目の問題はそうだな。どうしようか。多分だけど聖教国側には【洗脳の天魔】がいると思う。
ナナに掛けられた洗脳は消滅させた感じからして相当長い期間を使って洗脳させられたものだった。
天魔は金や物で雇われたりするが。長期的に雇われるってのはほとんど無い。だから聖教国側の陣営に洗脳の天魔がいて、多分だけどナナの勇者パーティーに所属して、ずっと近くで洗脳をし続けていただろう。
そうなると。勇者パーティーの身元全員洗ったら誰が洗脳の天魔か分かりそうだな。
【ネズミよ。新しい命令だ。勇者パーティーに所属していた人を徹底的に調べてこい。多分一人洗脳の天魔、もしくは洗脳系統の能力を持った天魔がいるはずだ】
【分かりましたでチュウ】
取り敢えずネズミ眷族に命令を下す。
これで数日早ければ1日で誰が洗脳の天魔か分かるだろう。俺の眷族は優秀だからな。
そうなれば、後は超簡単だ洗脳の天魔を殺すなりすれば、ナナを洗脳して自由な駒にするということが出来なくなる。
また、ナナが天魔だと知れば、触らぬ天魔に祟りなしよいうわけでこちらへの干渉は無くなるもしくは控えると思う。
そんで魔王を倒すために他国へ救援を要請したりして忙しくなって余計にナナに構ってられなくなるだろう。だって下手につついて暴れられたら魔王と戦う前なのに甚大な被害が出るのだから。
最後は締めに魔王を天魔連盟と協力して殺した後。俺が天魔連盟の同盟者として適当に名乗って、聖教国側にナナは俺達の仲間だから手を出すなとでも警告をすれば絶対に干渉はせんくなるだろう。
うん。完璧かな。
少し。いやかなり面倒ではあるが。
この通りにやれば多分上手くだろう。まあ可愛らしいナナの為だ怠惰な俺だが少しくらいは頑張りますよ。出来る限りは動きたくないが。
さて、じゃあ考えもまとまったことだし寝るか。
俺はそう結論を出すと。
眠くなってきたのでいっぱい食べてそのまま疲れたのか俺のベットで心地の良い寝息を立てて寝ているナナを抱き枕代わりに優しく抱きしめながら寝むりについた。
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補足説明
設定としてはナナが主人公ことグレンの眷族になった時は怠惰でグウタラに生きたいと言っていたのに急に泣き出して魔王が生きてる事を告白した理由は心に余裕が出来たからです。
ナナはグレンと会った時は死にかけで力もほとんど奪われた状態でした。そんな状態で他の事に気を回すなんて出来ません。
でもグレンの眷族となり天魔として覚醒しグレンという主を得て美味しいご飯をたくさん食べてお腹いっぱいになってきたら自分以外にも気を回せるようになり。そして心残りだった魔王を倒せてないという事実が急に頭に浮かび泣き出し告白をしたって感じです。
因みにナナが何故ヤマダ王国で倒れていたかというと、神の導きです。
ナナに勇者の力を与えた神がナナがグレンと出会うことでナナが幸せになると。そして最良の結果を得られると予知し、ナナにお告げをしました。
一応、徐々にナナの力は奪われていくという設定だったので、最初の方は結構勇者の力が残っていた普通に強かったので。かなり魔王城とは距離あるヤマダ王国ですが何とか辿り着いたって感じです。
多少ご都合主義な所はあると思いますが許してください。
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