第22話・剣舞の天魔

 天魔連盟・それは天魔のみが加入することの出来る組織であり。天魔に対して二つ名を付ける組織である。


 人数は12人と連盟という割には少なく感じるが全員が天魔である為下手な大国の倍以上の権限と力を持った超巨大組織。


 主な活動内容としては世界の安定と調和。


 この世界が滅びないように人間という種族が絶滅しないように活動する組織。


 逆に言えば世界が滅びるような事態が起きない限りは新しく天魔になった者に対して勧誘と共に二つ名を授けるという行動しか起こさない組織。


 組織のメンバーの情報も創設者の情報もほぼ全てが謎に包まれており。確かに組織としては存在するが基本こちら側から何かちょっかいを掛けたり。世界が滅ぶような事態を引き起こそうとしない限りは干渉してくることはない。


 いわば不可侵略の組織となっている。


 ――――――――――――――――――


 その日はイトが第一王子との剣術の特訓でおらず。俺一人でいた。


 一応父上からは天魔となったということで。第一王子・第二王子二人の剣術特訓はしなくてもいいと言われているのだが。

 イト曰く、第二王子はやる気がないので、訓練はしませんが。第一王子はやる気がありますし。超一流の剣士にすると約束をしたのでしますって言って今も続けているらしっすね。


 イトってそういう約束事とかは絶対に守るって考え方の持ち主なんだよな。

 まあ俺も約束事は出来る限り守ろうとする人間だから、それが移ったのかもだけど。いうても俺は面倒くさがって約束というもの事態基本しないけど。


 まあ、ようは今はイトがいないということだ。ついでにいえば。俺も思春期の男なわけだしイトも空気を読んで俺が一人になれるように一人の時間を敢えて作ってくれてるのかも知れないけどね。

 うん。別にそういうのは気にせんくてもええのに。面倒くさい。

 まあいいや。でもイトがいないからどうだということもないし。別にいっか。


 そうして俺は一人で聖魔法と神に対する考察という中々に難しいが面白い本を読んでいた時だった。

 懐かしい天魔の気配がこの城に入って来るのを感じた。


 そして思い出す。あ、そういえばイト天魔になったけど。まだ天魔連盟からの使者もといアイツが来てないということに。


 天魔連盟は基本的に新しい天魔が来たらその人に対して天魔連盟に加入をするかの選択肢を聞いた後に二つ名を授けてくれる組織だ。

 二つ名ってのは。俺の場合は【万能の天魔】【消滅の天魔】【怠惰の天魔】の3つを授かったて感じだ。


 そうして二つ名を授かって初めて、自分は【万能の天魔】ですって名乗ることが出来、世界に認知される。

 一回認知されたら、例え初対面でも相手に対して自分が天魔ですと名乗りたいそう思っただけで。相手がその天魔の二つ名がパッと頭に思い浮かび。

 相手が天魔だと認知できるようになる。


 まあ、もちろん自分が天魔だと周りに教えたくないと思えば周りは一切気が付かないけどな。


 ようは天魔の偽物を作らない為の処置と天魔というのをすぐに分からせて天魔がちょっかいをかけらないようにするための処置だ。


 前者は自分は天魔だと言って好き勝手に暴れる馬鹿を出さないようにすると共に天魔という存在の品位を下げないようにするためだ。


 そして後者の方は変に被害を出さない為だ。


 だって天魔の力というのは圧倒的だ。

 そんな天魔が自分の身分を証明するために力を振るったら人は死ぬわ地形が変わるわで大問題だからな。他にもちょっかいをかけられれば結構簡単にキレて暴れる天魔多いし。そんでまた地形が変わると。

 地図を作る人が超大変だよ。


 そんなわけで天魔連盟は新しく天魔が誕生すると。何処からともなくその情報をかぎつけて長くても1週間以内にはその本人の場所に訪れて二つ名を与えてくれるというわけだ。


 まあ、イトがどんな二つ名を授かるか多少は楽しみであるが、俺が変にその場に向かったら面倒くさそうだから止めておこうっと。


 それに多分イトは天魔連盟への加入の誘い事態を受けないだろう。


 何故ならイトはかなり珍しい主のいる天魔なのだから。

 天魔ってのは最強の存在であり。一人で国と戦える化け物だ。

 そんな存在が主を立てて、一人の人物に対して絶対的な忠誠を誓うというのは非常に珍しいというか基本はあり得ないことだ。


 そんな有り得ない天魔はもう既に主がいるんで新しく天魔連盟の創設者に加入して天魔連盟に忠誠を誓うのは、まあないよねって話だ。


 それにイトは俺の眷族なわけで俺がやろうと思えば今この場で念じただけでイトを殺すことも出来るしな。いやまあ絶対にしないけど。


「色々と考えたら眠たくなってきたな。寝るか」


 俺は一人そう呟くと、読んでいたページにしおりを挟んでベットの脇にある机の上に置くと布団にくるまり眠りについた。


 ――――――――――――――――――

「グレン様。おはようございます」

「ああ。おはようイト」

 寝ぼけた頭でイトの方を見る。


 その瞬間にイトが【剣舞の天魔】だと認知させられた。


「おめでとう。イト。いや【剣舞の天魔】イト」

「ありがとうございます。グレン様」


「どうやら。しっかりと二つ名を授かったみたいだね。ということはあの双子とも会ったみたいだね」


「はい。【真贋の天魔】と【空間の天魔】の力を持った双子の女の子ですね。いやでもメチャクチャそっくりでビックリしましたよ。違う点が髪が黒いか白いだけでしたからね。双子で天魔ってのは凄い奇跡な気もしますけどね」


「あ~あ。違う違う。というかイトは気が付かんかったか。あの双子は二人で一人。一人で二人の存在。そして天魔連盟の創設者にして。天魔連盟会長。佐天 真希だよ。因みに男ね」


「え?え~~~~~~~。待ってください。今日一番のビックリなんですけど。あの双子が天魔連盟の創設者であり会長というのも驚きですか。男の子だったんですか。だって身長140センチくらいでゴスロリ風の可愛らしい服着てて、髪型も腰に届くくらいの長さで、それにとても美しく輝いてて、あ。すみませんグレン様熱くなってしまって」


「いや。いいよ別に確かにあの双子が可愛いというの分かるから。まあ、それも【認知の天魔】としての力を使ってるだけなんだけどね」


「認知の天魔?ですか。え?あの双子の能力は真贋と空間ではないのですか?」


「いや。それもあるよもちろん。正確に言うならばあの双子、白髪の方は真贋の天魔であり【認知の天魔】黒髪の方は空間の天魔であり【分身の天魔】さ。そんでもってあの双子は、本当は今から300年以上昔に異世界にある日本という国から来た男子高校生?って存在らしく、所持している能力は【真贋】【空間】【認知】【分身】の4つで。それぞれ天魔と呼べるほど鍛えられており。普段は趣味で分身の力を使って可愛いらしい双子になっているが。本来の姿は何処にでもいる平凡な青年って感じだ」


「そうなのですか。よくそんなことを知っていますね?」


「ああ。色々あって本人から聞いた。一応多少は交流が合ってイトが気が付いてないだけで。イトが部屋にいる状態でよく本の貸し借りとかしてたよ」


「え?そうなんですか?私が気が付いていないって、あ。もしかして私の認知を操作されてたのですか?」


「あ、おしい。認知と同時に空間も操作されてた。まあ、ぶっちゃけ天魔でも気が付かないレベルの技術だからイトが気が付かなかったのも無理はない。気にせんでくれ。俺も気が付かないし」


「そうだったのですね。分かりました。それで?どうしてそんな人とグレン様は交流を持ってるんですか?」


「ああ。それはな、イトも知ってると思うが俺が6歳の時何がきっかけかは忘れたのだが万能の天魔に覚醒したんだよ。そして程なくして消滅の天魔にも覚醒した」


「これは確か愉快犯の呪術の天魔に消滅の呪いを掛けられて必死に耐えたら反転して俺の力となってたって話だ。まあ多分だけど。何かここら辺の記憶が曖昧なんだよな。まあ思い出すのは面倒やしええけど」


「そんで。万能の天魔・消滅の天魔に覚醒してから数日後にアイツっていうか、真希がやってきて。俺に二つ名と共に天魔連盟に加入しないかって言ってきた訳だ。まあ俺は面倒だからって断ったよ」


「そしたら真希は大爆笑。どうやらそんな理由で断ったやつは初めてらしく、それから色々と話すようになって、本っていう共通の趣味を持ち。結構話弾んでいって。怠惰の天魔を得た後は。俺が面倒くさがって多少交流は減ったものの。何だかんだで年に二、三回くらいは本の貸し借りするって感じの仲だな」


「そうだったのですか。グレン様にも友人って呼べる人がいたんですね。私は嬉しいです」


「いや。酷いな。まあ確かに基本引きこもってるから。そう考えられるのも無理はないか。まあ、いいや。取り敢えずイト改めて剣舞の天魔おめでとう。まあこれからもよろしくな」


「はい。もちろんですグレン様。私はグレン様に命を救われグレン様に力を授かりグレン様に生きる理由と意味を教わったのですから」

 俺に向かって忠誠を捧げるように跪ずくイト。


「相変わらず忠誠心高いな。まあ、俺としては嬉しい限りだけど。あ、そうだ今日は久しぶりに俺がご飯を作ってやろう。まあ面倒だとは思うがそう言う日があってもいいだろう」


「じゃあ。私もお手伝いしますグレン様」

「お。ありがとうイト。じゃあ一緒にご飯作るか」

「そうですね」


 そう言ってニコっと笑うイトと少し面倒くさそうにしながらも何処か楽しそうに部屋に備え付けてある台所に向かう二人の姿はまるで初々しくも非常に仲の良い息の合った新婚さんのようだった

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