第5話・短剣は指でへし折る物です
「グレン様。国王様とのお話はどうでしたか?」
俺が王の間から出ると外で待機していたイトが話しかけて来る。
「ああ。イト。俺ちょくら戦争に行ってくるわ」
俺はいつもと変わらない様子であっけらかんと言い放った。
「え?ちょっと何を言ってるのですかグレン様」
俺の言葉に驚きつい声を荒げるイト。まあ気持ちは分からなくもないわ。だって怠惰でグウタラない俺が戦争だもんな。
「何を言ってるのって、戦争に行くんだよ。まあ、戦争と言っても同盟国の援軍の将軍を務めるのと神器を使ってちょちょいと敵部隊を全滅させるだけだから」
「いや。おかしいですって。神器の存在は知ってます。その効力も知ってます。今現在同盟国が危機で万の兵を率いることの出来る人材が必要なのも知っています。それでもおかしいですって。グレン様はグウタラ王子で怠惰な王子で戦争のせの字も戦いのタの字も知らないじゃないですか」
イトが少し涙目になりながら俺に抱き着くようにして止めてくる。こんなに心配してくれるとはイトは優しいな。
というか待て?イト神器のこと知ってるのかよ。マジかよ?そこ驚きなんだけど。誰から教えて貰ったんだ。まあいっか問い詰めるのは面倒だし。
「まあ。そうだな。でも安心しな。俺は最強だから。それに俺の怠惰な生活の為にはこういうごたごたは邪魔でしかないからな。言わば俺がぐうたらする為の努力って奴だ」
俺は無駄に明るくそう言いながらグッと親指を立てる。
「でも、でも。もしグレン様にもしものことがあったらあったら私耐えられません」
「そうか。でも大丈夫だから、もしもなんて絶対ないから、言っただろ俺は最強だって」
「最強ですか。ではこの攻撃を避けれますか」
イトがそう言っていきなりスカートの中に潜ませている短剣を取り出して俺に向かって振り上げて来る。
もちろん俺の【万能の天魔】の持つ動体視力はそれが絶対に当たらない位置だと分かったし、すぐにでも寸止め出来る速度だと気が付く。
まあ普通の人は目視出来ない位の速度で振り下ろされているけど。
その上で俺は短剣を指2本でつかみ。そのまま指の力だけでへし折った。
「その程度の武器じゃあ。俺は傷ひとつつかないよ」
「そうみたいですね。・・・・・・グレン様。いつの間にその様な力を獲得したのですか?」
イトはあっけにとられたような。ポカンとした表情を浮かべながらも冷静にそう聞いてくる、いや問い詰めてくる。
「まあ、生まれた時からだね。因みに力の詳細は長くなって話すの面倒だから割愛するね。まあでもこれで分かったでしょ。俺は簡単には死なないから。それこそな逃げるだけなら戦闘型の天魔が10人とかで襲ってこない限りは余裕で逃げれるから。まあそんなことは絶対ないから。無事に帰って来るよ」
「でもやはりグレン様を一人で戦場にはいかせられません。私も一緒に行きます」
お、わざわざ俺が一緒に行こうっていう手間省けたラッキー。
「それはもちろんよろしく頼むよ。いやまあ俺自分で身の回りの事出来なくはないけど、そういうのするのは面倒だからね。やっぱり俺のグウタラ生活にはイトがいないと駄目だよ。俺にとってイトはなくてはならない存在だよ」
「グレン様そんなに私のことを大切に思ってくれてたのですか。私はとっても嬉しいです」
今日一番の笑顔で微笑んでくれるイト。
あれ?これ告白と勘違いされてね。いや。まいっか気にするのは面倒だし。
「ハハハ。そうだな。じゃあイト一緒に行くか」
「はい。一緒に行きましょう」
「じゃあ。俺は今から部屋にこもって本を読んでるから。準備が出来たら多分父上からの使いが来るから教えてくれ」
「分かりました。では私は今からグレン様が戦争先でもぐうだら出来るように準備をしてきますね」
「お。流石イト。気が利くねえ。ありがとう」
「いえいえ。グレン様のメイドですから。このくらい当然です」
そうして部屋に戻り本を読むこと3時間後。
「グレン様準備が全て完了致しました」
「オッケー。イト。じゃあちょっくら戦争に行ってきますか」
そうして俺は万の兵と先ほど父上から預けられた神器と共に同盟国の為に初めて戦争へと向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます