3、明智秀頼の誰よりの憧れ

永遠ちゃんと付き合うことになった夜。

ラインで待ち合わせをするメッセージのやり取りをする。

駅前とありきたりな待ち合わせ場所で決まった。

もしかしなくてもデートと呼ばれるものだ。

最初だし王道に行こうと、寝る前にどんは私服のコーディネートで行くかを鏡で合わせる。

靴もいつも履いている古い物でなく、新品で仕舞っていたものにしようと準備をしていた。







次の日。

ソワソワしながら玄関で靴を履いていた。

服にシワがないかとか確認しながら自宅から駅までの道を歩いていく。

すれ違う人でカップルがいたらどんなことをしているのか、チロチロと見て参考にしながら待ち合わせ場所で永遠ちゃんを待つ。



「秀頼さーん、早いですね!」

「いやいや、エイエンちゃんも時間通りだよ」


15分くらいベンチの椅子で震えながら永遠ちゃん到着を待っていた。

心を落ち着かせるためであったが、15分程度の時間では特に緊張を和らげる効果は発揮できなかった。


そう!

こういう時は何も考えずに頭を空っぽにして緊張を抑えよう!


「秀頼さん?」

「…………」

「秀頼さん!」

「あ、あぁ!?ご、ごめん……」


永遠ちゃんの目の前で何も考えずにいても声を掛けられて正気に戻る。

意味のわからない奇行をしてしまっていた。

もっと、集中しないと!

前世での部活動であった剣道の試合前の気分を思いだしながらしゃきとする。


「じゃあエイエンちゃん、行きたいところとかある?」

「行きたいところ……ですか?…………デートばっかりが頭にあって何も考えてませんでした……」


かああ、と恥ずかしそうに赤面し目線が下に行く。


「大丈夫だよ。俺も君と同じだよ」

「秀頼さん……」

「じゃあ、ぶらっとまわろうか」


手を差し出すと永遠ちゃんは嬉しそうに俺の手を握る。

やや温かいくらいの体温の永遠ちゃんの手が握られて、彼女の恥ずかしさも伝染するみたいだ……。


「ふふふっ。エスコートお願いします、秀頼さん」

「う、うん!俺もデートとか慣れてないからドンドンダメ出しとかして良いからね」

「むしろ私はデート慣れしてない方が嬉しいな。秀頼さんと一緒に慣れていきたい」

「エイエンちゃん……」


憧れの永遠ちゃんから『一緒に慣れていきたい』なんて声を掛けられて気恥ずかしい……。

嬉し過ぎて、もうなんて表現したら良いのかわからない。

もうすでにお持ち帰りしたい気分だ……。


ダメだ、ダメだ!

変な空気に当てられ過ぎだ!

普段の俺はもっと冷静な判断を下せるはずだ!

心で自分の頬を殴り、「しっかりしろ!」と呼び掛ける。


「じゃあ、行くよ」


駅前の道路を手を繋ぎながら歩いていく。

無難かとも思ったが、王道なデパートに向けて歩く。

昨日、俺の師匠である常に女にモテモテであろう遠野達裄からラインでレクチャーしてもらっていた。

彼からは『とりあえずデパート行っとけばハズレはないから』とそっけないアドバイスをもらっていた。

その言葉を信じて行動に移していた。


「私、秀頼さんとこうして歩いているだけで幸せです……」

「俺もだよ。憧れで、手を伸ばしても届かないような雲の上くらいの存在がエイエンちゃんだったから」

「ふふっ。低い雲で私も嬉しいですよ」


言葉で伝えようとしても、全部の気持ちは伝わらない。

だからこそ、いくらでも言葉で嬉しさを表現したかった。


俺は、ずっとずっと宮村永遠推しで、誰より憧れていたんだから……。

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