1、宮村永遠は目撃する(後編)
「そ、その……、絵美の家に遊びに来ていてその帰りなんです……。ひ、秀頼さんの家が気になりおばさんから中に入れてもらいました……」
「おばさん……」
なんで毎回毎回来客のことを俺に告げないで人をあげるのかな……。
「そ、それで……サプライズで秀頼さんを驚かそうとしたら私が驚かされました……。秀頼さんからの逆サプライズです……」
「変に上手いこと言わなくていーよ!?」
スゲー気持ち悪いところ見られたじゃん……、と本気でヨルを召喚され、討伐されるのではないかとびくびくしてしまう。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………入りなよ」
「……お邪魔します」
赤い顔をしながら永遠ちゃんを俺の部屋に招き入れる。
憧れの推しキャラを部屋に入れたドキドキ感よりも、気まずくてドキドキしている。
これがタケルか山本ならほぼノーダメだが、なぜ世界は痛恨の一撃を俺に繰り広げるのか……。
この世界にもし神なんていう存在がいるのであるならば『クハッ!クハッ!』と嗤ってバカにしているところだろう。
「…………その、ごめんなさい」
「なんで秀頼さんが謝るんですか……?部屋で寛いでいた時間にお邪魔した私が悪いんです……」
「ち、違うよ!俺が悪いんだよ!」
「わた……、私……。秀頼さんに嫌われましたよね……」
「き、嫌ってないよ!?そ、それどころかエイエンちゃんが俺のこと……、き……嫌いになったよね……」
男の気持ち悪いシーンをもう少しでエイエンちゃんは見てしまう直前だったのだ……。
ホラー番組以上にホラーに決まっている……。
「私……、秀頼さんが嫌いになんかなるわけないです」
「え?」
プリプリと可愛いんだけど怒っているというのが声と表情から伝わる。
うわっ!?
原作で主人公のタケルに対しあざとい仕草を見せる姿にそっくりだ。
それをわざわざ俺に対してその仕草を見せられて、凄くドキドキしてしまう。
「…………秀頼さん。私のこと、可愛いって思ってたんですね」
「そ、そりゃあ当然だよ……。エイエンちゃんは宇宙一可愛いし……。俺の憧れで、俺の推しだし。彼氏の男が出来たらずっとそいつに嫉妬するだろうし……」
というか、エイエンちゃんに彼氏とか考えたらノイローゼになると思う……。
タケルならギリ許せるけど、タケル以外の男が永遠ちゃんの髪に触ったり、胸を揉んだりとか考えると気が狂いそうになる。
俺が原作永遠ちゃんみたいに目からハイライトが消えた人生になっているだろうね……。
「ひ、秀頼さんの憧れが私……?」
「うん。…………まぁ、エイエンちゃんにしてみれば良い迷惑だよね……。だって俺、ずっとずっとずぅぅぅっとエイエンちゃんが大好きで大好きで……。君のこと考えると、何も出来なくなる……」
「秀頼さん!」
「……え?」
永遠ちゃんの冷たい手が両方の頬に当たる。
まるで永遠ちゃんから体温を奪われているみたいで、身体が動かなくなっていく。
「同じ気持ちなんですね」
「え?……、エイエンちゃん……?」
宮村永遠が俺の唇に彼女の唇を当ててくる。
彼女の胸も、俺の胸に当たっている。
わからない、これは本当に現実なのかな……?
「好きです。ずっとずっとずぅぅぅっと……、私も秀頼さんが好きなんです……」
泣きながら彼女は俺の胸に抱き付いてきた。
彼女の冷たい体温がところどころから感じる。
「秀頼さん……。私がどれだけ誘惑しても気付いてくれないし……。女にすら見られてないんじゃないかって……」
「ちがっ、違うよ。……君を女として意識をし過ぎるから、……直視が出来なかったんだよ……」
俺は小さくなっている宮村永遠に抱き付いた。
本当は誰にも永遠ちゃんを渡したくない。
男全員、本当はタケルにも、彼女を渡したくない。
「…………秀頼さん。付き合ってください」
「…………俺で良ければ」
くすぐったい告白。
だけど俺は永遠ちゃんを自分の手で幸せにしたいんだと抱き付いて気付いた。
前世のゲームの推しヒロインとか関係ない。
ゲームなんかより、よっぽど目の前の宮村永遠が大好きなんだ。
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