情報から守りたい

第1話

　人は他人と出会って変わっていく。しかも実際に会わなくても変わっていくのだからたちが悪い。

　もちろん実際に会い、言葉を交わした方が変化は大きいだろう。例え画面越しに言葉を交わしたとしても変化は促される。さらに言えばその他人が残した言葉を間接的にでも目にすることができたなら変化は促されてしまうだろう。

　変わらない美しさを保つのが難しい時代になった。そう思わざるを得ない。

「変えたくない」

　そんな思いが半ば強制的に無視される。その思いを守りたいなら未開の地にこもるぐらいしかないだろう。

　情報過多と言われて久しい現代。古代ローマ人が一生涯で受け取る情報を1日で受け取ってしまうなんて話もあるぐらいだ。それぐらい情報が氾濫している。

「守りたい」

　今の彼女が好きだから。だから情報から彼女を守りたいと思う。不可能であることは分かっているが諦めきれないのが人間という生き物だ。ナマケモノみたいに外敵に襲われたら力を抜いて諦めるぐらいの諦めの良さが身に着けられたらいいのだけれども。それもまた変わらないことと同じぐらいに難しい。難しいことを２つも抱えるなんて無理だから僕は情報から彼女を守ることを選ぶのだ。

　しかしながら方法はあるのだろうか。考えて考えて考えて。答えはなにひとつなく。今日もまた夜が更けていく。