決死
「さあどうする? ラムの、おじさんよぉ」
「俺に構うな、早く撃っちまえ」
「キサラズ・・・すまない」
バンッ
銃声が響き渡った。暗く沈む中、大量の血がコンクリートを濡らす。
キサラズは額を貫かれ、バタッと地面に倒れた。脳を突かれて即死だった。
これで俺の策は完全に潰えた。
「これで終わりか」
「はぁはぁ、ぐっ・・・・・・万事休すかッ」
「蒼馬カイリ、やっぱラムを呼ぶ前にお前を殺す」
ガチャっと目の前の男は引き金を引く。
既に俺は朦朧とする段々と体の感覚が失われていく。血は黒く染まり、ブリキのような動きのする身体から零れ落ちる。
「その前に、はぁはぁはぁっ一つ・・・いいか?」
「ああ」
「ラムさんは父親似か?母親似か?」
「っ!? なぜそんなことを聞く?」
最後の力を振り絞り、俺は芝浦に掠れ声で尋ねる。芝浦は動揺して、銃を持つ右手が小刻みに震えていた。
「ラム母も・・・教えて・・・・・・くれな・・・かったし。迷いが・・・あるのは・・・アンタの妹に・・・似ているんだろ?」
段々と身体が寒くなってきた。この問いの答えを聞いた後、俺の命は燃え尽きる。
大量の血とアザや傷だらけの身体、気絶して横たわる男と絶命したキサラズの二人を、俺が倒した。
ポンコツでも凡人でも、ここまで爪痕残せたのはよかったと思う。
少しだけ視界が良くなり、芝浦の顔が映る。
その表情を見て、俺は話を続けることにした。
「どうせ、冥土・・・の土産・・・・・・になるんだし。話して・・・くれ」
「
「そ・・・か」
「それとアイツの名前は、ラムじゃねぇ。
「ああ・・・覚・・・えておく・・・よ」
次の瞬間、俺の脚に力が入らなくなり、視界が真っ黒になった。
「キサラズ、不甲斐ない先輩で悪かったな。荒川もキサラズの息子・・・いや、後悔しても遅いか」
男は仰向けに倒れた青年の右手に両手を添える。まだ脈はあるが、もう時間の問題だということは、すぐに分かった。
「カイリくんっ!ねぇ、カイリくんってば!」
東京湾のコンテナ前で女の子が大きな声で叫んでいた。一箇所一箇所、コンテナやその付近を調べていた。
男は振り返って、少女の方に目を向けると少女は真っ赤な鼻と目には大量の涙が流れていた。スカートはこの付近をあちこち探したせいか、何箇所か切れていて、手は真っ黒だった。きっと色々なものを探したせいで、
この時の男はどう思ったのか、定かではない。目の前にいる男の手から両手を離した男は、右手に銃を持ち東京湾を背に向けて、身体を一切震わせず立つ。
右手に構えた銃をこめかみに当てて、最後に大切な家族のことを見る。
「これで・・・俺も解放される。アスの連中もざまあーねーな、最大の敵だと思ったあの子が、こんなに恋してるなんて」
男は目を閉じて、最期にニコッと笑う。
「ラン・・・ラム、絶対に幸せになれよ」
バンっ
再び銃声が響き渡った。男は大切な家族を失った罪と悲しみとともに深い海に沈んだ。
これがラムの叔父だった。
ラムはぜぇはぁと息を荒らしながら、銃声があった方向に向かうとカイリは倒れていた。
「カイリくんっ!ねぇ、目覚ましてよ」
慌ててかけよったラムは、カイリの身体を力一杯抱きしめた。
「ひゅ・・・・・・う」
「脈がある!」
一瞬だけホッとしたラムはすぐに病院に通報しようとしたが、スマホを止めてしまう。
(今、カイリくんを連れてっても助からない・・・どっちにしたって、医者でも無理よ)
ラムの目から再び涙がこぼれ落ちた。
「あ、そうだわ!?アンプルがあった」
ラムが慌てて身体をジャンプし、上下に揺らしてほぐす。
「一か八かね。初代アンプルの僕の一部と、カイリ君の血をベースにすれば、肉体は治癒できる」
(アンプルのトリガーは死にかけることだから、今なら間違いなく効果を発揮できる。ただアンプルの使用には、副作用があるのよね・・・)
「今、少しだけ話そうよ」
ラムはカイリの身体から血を繊維で拭き取って、キットに採取しながら話すことにした。
「僕は君が心配してくれたこと、実はめちゃくちゃ嬉しかったよ!でもさ、なんで君が巻き込まれてるの?おまけにコイツらを倒したみたいだけど、叔父さんは居ないし、どういう状況!?ちゃんと後で説明してよねっ」
返事はない。血を採取した後、ラムは内ポケットから紫の液体の入った注射を取り出した。
「これを撃てば・・・いや、迷うな僕」
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