第42話 やっと来た!コミケ一日目①

今日は待ちに待った(?)コミケの日だ。そして、初めて僕は売り子として参加する。まぁ、コミケも行ったことないけど。今は、午前8時。開始は10時ちょうどだから一時間後に事務所に着けばいいのか。少しだけ、ワクワクしながらも準備をした。


~30分後~


「あぁっ!今すぐいかないと遅れる!!」


僕は、集合時間の30分前だと気づいた。集合時間に間に合わないとどうなるか分からない。急いで荷物を持ち、僕は家を出て走り始めた。


「やばいやばい!!遅れる~!」


荷物が重いからなのか、運動不足なのかはわからないが、すぐに疲れてしまう。でも僕は、疲れよりも遅れる方が怖い。虹お姉ちゃんとか涼香お姉ちゃんとか風原さんとか……怒っちゃう……。その様子を想像すると、とても怖かった。すると、隣に見たことがあるような……いや、乗ったことがある車が止まった。車の扉が開き出てきたのは……桜さんだった。


「流君!今から、事務所行くんでしょ?乗って!」


桜さんは、時計を確認しながら言った。まさに救世主だ!


「はい!ありがとうございます!」


そして、車に乗せてもらった。


~5分後~


「ありがとうございました!」


事務所の前に泊まった車から降りて、僕は桜さんと執事さんにお礼を言った。すると桜さんはいやいや、と首を振ってこう言った。


「こちらこそありがとうだよ?流君とたくさん話せてよかったよ~。」


気を使ってくれたのかもしれない。でも、とても嬉しくなり思わず笑顔になった。そして、僕たちは事務所の会議室に向かった。


「おっ、やっと来てくれたか。」


会議室に入ると、風原さんと花音さんとお姉ちゃんと後、一期生のマネージャーさん?がいた。風原さんは早速、と今日のタイムスケジュールを教えてくれた。


「今日のスケジュールはだな。まず、コミケ開始時間から10分間は心が売り子。そこから、10分間ずつルラル、涼香、まだ来ていない虹、と続いていく。自分の担当が終わったら、あとは自由にしていいぞ。」


ん?何で僕が一番最初?そう、不思議に思い質問した。


「あの……風原さん。デビューしたのが一番遅い僕が何で最初なんですか?一番最後でよくないですか?」


すると、風原さんに聞いたはずの質問を花音さんが答えた。


「それは、絶っっっっ対心ちゃんがすごく伸びてるからだと思うよ!」

「私もそう思う!」

「そうだな。心はものすごく伸びてるからな。もちろん、一番混む最初の時間だろ。」


桜さんと風原さんも納得してる……。


「……嬉しいけど、人沢山は嫌だぁ……」


そんなこんなで話をしていると、いつの間にか今すぐ準備しないと間に合わない時間になっていた。

そしていつも通り、小さな機械を沢山取り付けて動きの確認をした。ちなみにこれは特殊な機械を使って会場とつながっているらしい。すごいなぁ~。あっ!後は、いつもと違う機械も付けた。耳にはヘッドフォンらしきもの。あと、ゴーグル。会場の音と見えるようにとしてくれたものらしい。


そして、コミケ開始の合図の音が鳴った。

色々な部類のオタク、リスナーの足音が耳から聞こえてくる。迫力もすごい……。流石コミケ……。僕は一生懸命売り子として頑張った。ずっと続いていそうな人の列。毎年こんな大変なことをしていたのか……!僕は感動してしまった。そう思っている間にもお客さんが来る。


「心ちゃんのグッズ一式ください!」

『は~い!ありがとう!ここ姉!合計で29000円だよ!』

「うぐっ……可愛い……どうぞ。」

『ちょうどだね!グッズ一式はあのスタッフさんから受け取ってね!』

「はい!」


次の人!


「ルラルのグッズ一式と心ちゃんのグッズ一式ください!」

『は~い!ありがとう!ここ兄!合計で58000円だよ!』

「凄い破壊力……!はい!58000円!」

『ちょうどだね!グッズはあそこのスタッフさんから受け取ってね!』


つ、次の人……時間的にこの人が最後かな?


「ヴィクセントのライバー全員のぬいぐるみと、心ちゃんのグッズ一式下さい!」

『は~い!ここ姉!43000円だよ!……えっ!?世奈さん!?』


時間的に最後のお客さんは、世奈さんだった。


「えへへ。びっくりした?はい。43000円!」

『あ、ありがとう……。あそこのスタッフさんから受け取ってね!』


どうにか、我を取り戻し心ちゃんを保った。世奈さんがスタッフさんの方へ向かっていくのを見送り僕の番は終わった。次はルラルお姉ちゃんだっけ?ルラルお姉ちゃんに待っててって言われたから、会議室に戻って待つか。そう思い、僕は機械を外しスタッフさんに挨拶して会議室に向かった。疲れたなぁ……と思いながら角を曲がると、


ドンっ


「だ、大丈夫ですか!?ごめんなさい!!」


誰かにぶつかってしまった。顔をあげると目の前に……妹の美波がいた。


「あ、」

「え、ええええええええええぇぇぇぇぇぇ!?!?」

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