ぼくのサンタさん
山広 悠
第1話 ぼくのサンタさん
あのね。ぼくね。
サンタさんにあったんだよ。
だれにもナイショだよ。
クリスマスの夜。
いつもなら一度寝てしまうと絶対起きないのに、その日はうれしくて、うれしくて、何度も目が覚めてしまった。
あれは何時頃だったのか。
また目が覚めかけて、ぼんやりしていた時、部屋の隅から何やらガサゴソ音が聞こえてきたんだ。
「サンタさん?」
僕がそう尋ねると、赤い服を着たおじさんがギョッとして振り向いた。
おじさんは右手の人差し指をしーっと口の前に立てて、左手を後ろに回したまま、こちらに歩いてきた。
白いおひげもないし、太ってもいないけど、赤い服を着ているし、枕元には待ちに待っていたプレゼントが置いてあったので、この人は間違いなくサンタさんだ。
「サンタさん。プレゼントありがとう! あのね。ぼくね。サンタさん大好き‼」
僕はそう言ってサンタさんに手紙を差し出した。
サンタさんは手紙を受け取ってくれた。
「ねえ、読んで」
僕がそうお願いすると、クリスマスツリーの点滅する光の下、サンタさんは震える手で黙って僕の手紙を読んでくれた。
僕が一所懸命書いたお手紙。
サンタさんの似顔絵も描いてある。
お父さんがいない僕には、サンタさんがお父さんみたいなもの。
読み終わったサンタさんの頬には一筋の涙があった。
よかった。喜んでくれたみたい。
安心すると、また眠くなってしまい、僕は
「おやすみなさい。サンタさん。ホントはずっといてほしいけど、他の子が悲しんじゃうといけないもんね。おそとは寒いだろうから、かぜひかないように気を付けて頑張ってね」
と言って、また目を閉じた。
サンタは何か言いかけたが、軽く頭を振ると、黙って窓から外へ出ていった。
サンタのズボンの後ろポケットには大きなナイフが入っていた。
【了】
ぼくのサンタさん 山広 悠 @hashiruhito96
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