期間限定

武海 進

期間限定

「ハア、ハア、一体どこにあるんだ!」


 息が荒くなり、何度もペダルを漕ぐ足が止まりそうになる。


 それでも俺は止まるわけにいかない。


 そう、あの期間限定のポテトチップスを見つけるまでは。


 出会いはスーパーにおやつを買いに行った時だった。


 何か変わった物が食べたかった俺はたまたま目に入ったスパイシーキャビア味という期間限定のポテトチップスを買って帰った。


 だがその日は結局食べず、しばらく放置してしまい、ふと買ってあったことを今日思い出して食べた。


「う、美味い!」


 一枚食べた瞬間俺の中に稲妻が走った。


 こんなに美味いポテトチップスは食べたことがなかった。


 すっかり虜になった俺はこのポテトチップスが期間限定だということを思い出す。


 慌てて俺はこのポテトチップスを買い占めるために自転車に飛び乗って出会ったスーパーへと急いだ。


 だがスーパーには既に置いていなかった。


 期間限定商品は入れ替わりが早いから仕方が無いのだが、諦める訳にはいかない。


 スーパーを出た俺はその後スーパーを5軒、コンビニを3軒回ったがどこも売っていなかった。


 結局自転車で回れる範囲の店全てを回ったが買うことが出来なかった。


 もっと早く食べておけばこんなに切ない別れをしなくて済んだのだと思うと後悔しかない。


「母さん帰ってたんだ」


 家に帰ると母が買い物袋から買ってきた食材を冷蔵庫に入れているところだった。


「あら遅かったわね。そうだ、隣町のスーパーでポテトチップス安かったからおやつ用に買っといたわよ」


 そう言われて買い物袋を漁った俺は泣きそうになった。


 母が買ってきたのは俺が探し回ったポテトチップススパイシーキャビア味だったのだ。


「母さん、ありがとう」


 こうして俺は再びスパイシーキャビア味を食べることが出来た。


 しかし期間限定という宿命からは逃れることは出来ない。


 最後の一枚を噛み締めながら再販してくれることを願い、スパイシーキャビア味に俺は別れを告げるのだった。

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期間限定 武海 進 @shin_takeumi

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