己の技量を計られてるような世界
『パラドックス13』東野圭吾(講談社文庫)
P-13現象。
ほとんどの人が理解できない出来事がある時間から13秒間だけ起こる。もちろん私もこのプロローグを読んだ時点ではことの重大さを理解することは不可能だ。要するに何が起こるのか。興味をそそる点ではこの辺りですでに読者を掴んだと言っても良いだろう。
大事件、大事故が発生しないよう最大限の注意をと、一部関係者には通達したが、事件の捜査に当たっていた捜査一課管理官久我誠哉は突然現場に現れた所轄の巡査に目を見開く。それは久我の弟の冬樹だった。そして、彼ら兄弟はその13秒の間に命を落とすことになる。
たった13秒。
しかし、事件や事故などは時間にすれば一瞬だ。つまりは間が悪かったということなのだろうが、ここで終わっては長編どころか掌編が関の山。つまりはここからが壮絶とも言える時間が始まるのである。
死んだと思った冬樹は生きていた。だが、目の当たりにした東京の街並みは東京と言えるものではなかった。おそらくこれを読んだとき、TVから流れる映像を思い浮かべた人も多いのではなかろうか。
廃墟と化した東京を冬樹は一人でさ迷い歩く。驚くことに人々は誰一人としていなかった。そんな時、冬樹はある人に遭遇する。電気も無い。通信も途絶えた。降り続く雨に道路は洪水と化す。
サバイバルという次元ではもはやないが、希望も見出せない世界に取り残された時、はたして自分ならどう行動するか、技量を計られてるような気がしてならない。
絶望して歩みを止めるのか、それでも先に進むのか、きっと誰しも迷うだろう。
平凡でも在り来たりな生活がどれだけ素晴らしいか気付かされる物語だ。
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