永遠の少女と定命の少年と、永遠の果てに世界樹の:the Tower World

こたろうくん

第1話

 その少女の命は永遠と思えるほどに長く、寄り添えるものなど誰一人として存在しない。


 彼女は星を穿ち、次元セカイを支える“塔”のために生み出された。いや、創り出されたと言うべきだろうか。


 永遠の少女の名を、定命じょうみょうの者たちは“エル”と名付け、“塔”と結び付けると次元の永遠を願った。


 エルは外界と隔絶された“塔”の頂で星を見下ろし、生命の循環を管理し、果てしない暗黒に浮かぶ無数の星々に思いを馳せた。


 人々の願いの為に背負った孤独を彼女はそうして耐えていた。

 彼女の“創造者”の一族たちも彼女のために、彼女が誰かと強く結びつくことを許さなかった。


 誰かを想う事を知れば永遠の少女は壊れてしまうだろうから。


 しかし真に残酷なのは、何ものにも縛られることなき偶然ぐうぜん

 誰にも触れず、誰にも触れさせまいとしてきた彼らをその偶然という名の悪魔はことごとく嘲笑あざわらうのだ。


 くして永遠の少女エルは、一人の少年と出逢う。

 なにも知らない、愚かな定命の者の少年と。

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