第19話嫉妬④

「ああ、それは俺が他の人とあんまり連まないからだよ」


生徒会が終わった後、他の生徒を帰らせて、輝は柊に片づけを手伝わされていた。


その時に、今朝あった出来事を話すと、柊は当たり前のように、そんな言葉を放った。


「だから、それがなんであんなみんなから敵視されないといけないんだよ」


「それは僕がみんなの憧れの的だから」


柊は天使の笑顔を満面に浮かべて、輝の前に分厚い資料を乗せた。


この男…

呆れて怒りも込み上げてくる。


「俺だって、別に特別に見てくれなんて言ったことはない。勝手にみんながそう崇めてくるからさ」


柊の表情は自嘲のようにも見えた。


成績優秀で、何をやらせても器用にこなしてしまう彼の唯一の弱点はきっと、人付き合いなのかもしれない。


「男にもモテモテだな。天川先輩って彼女とかいないの?」


ふいに聞いた内容に、柊は少し顔を赤らめる。


その反応を見て、輝は聞かなきゃよかったと、何故か胸の奥がチクチクするのを感じた。


「いるんだー?どんな人?綺麗?」


おどけて笑っているけれど、本当はこれ以上柊の恋愛の話を聞きたくないと思っていた。


「まあ、顔はいいんじゃない?」


否定せずに、素直に答えられてしまい、動揺が隠せない。


そんな自分が恥ずかしくなってきて、輝は自分の鞄を握りしめた。


「あーあ、疲れたから帰るわ。じゃあな先輩」


そう言って、輝は走って生徒会室を出ていった。


残された柊は悲しそうに俯いた。


自分には、素也がいるのは事実だし、隠すこともないのに、輝には話したくないと思ってしまった。


でも、嘘もつきたくなくて、あんな答え方になってしまった。


なんだろう、自分でもよく分からない。

どうして自分が、輝を特別扱いしてしまうかも…


特別扱いしている自覚はもちろんある。

なぜかと聞かれたら、一緒にいて楽だから。それ以外の理由はない。


着飾ることもしなくていい、みんなみたいに、熱い眼差しで自分をみてこないから。


でも、それが理由で輝が目をつけられるのは、申し訳ない。


「本当に、ただの先輩後輩を楽しんでるだけなのに…」


柊は残りの片付けが終わり、昇降口へ行くと、素也もちょうど帰るところだった。


「柊」


素也はすぐに柊に気づき、笑顔で手を上げた。


「部活お疲れ、素也」


「今帰りか?」


「うん、帰りが一緒なの久しぶりだね」


素也も普通に接してくれるけど、それは恋人だからだ。


もし、自分があの時、素也と寝なければ、素也もみんなと同じ分類としてしか見なかったのかな。


告白をされて、自分じゃ支えきれない自分を、素也に委ねた。



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