天使の棘

羽音衣織

第1話新学期①

 4月-

 桜が舞う季節。

 温かい晴天に恵まれた新学期が今日から始まる。


 この私立晴蓮男子高等学校では、他校の男女生徒問わず、憧れる生徒会長がいた。


 彼が歩けば、皆憧れの眼差しを向けて、挨拶をしていく。


 彼ももちろん、天使の笑顔と言われる笑顔を一人一人に向けて挨拶を返していく。


 そんな彼に会いたくてこの高校を選んだ生徒は少なくない。



「生徒会長だ」


 その言葉にみな振り向く。


 サラサラな黒く整えられた髪。


 スラっとした少し痩せ型の174cm


 色白で中性的な顔立ち。


 パンフレットに載ってそうな制服の身のこなし。


 見た目からしてすでに天使。


「生徒会長、おはようございます」


 緊張しながら震える声でいう、男子生徒に視線をしっかり送り。


「おはよう」


 笑顔で返す。


「うぉーーーっ」


 歓喜の雄叫びが舞う。



 そう、彼こそが生徒会長

 天川柊、高校3年生だ。


「やったぁ、朝から会えるなんて、俺ついてる!」


「いいなぁ、俺、びっくりしすぎて挨拶し忘れちゃったよ」


 そんな言葉が交わされる中、柊は颯爽と学校へ入り、朝の日課をこなすのだ。


 職員室にまず入る。


「失礼します。おはようございます、生徒会室の鍵お借りします」


「よう、天川今年度も生徒会長よろしくな」


 そう声をかけたのは体育担当の中山先生だ。


 彼の正装はいつだって、白い黒いラインの入ったジャージだ。


「はい、よろしくお願いします」


 柊は手慣れたように、生徒会長の鍵を取り、中山に笑顔を向け、颯爽と職員室を出て行く。


 そして、3階にある生徒会室へ入ると、まずは窓を開けて換気をする。


 そして、月初の4月のスケジュールを黒板に書いていく。


 その時、ふと窓から見える中庭に金髪頭が目に入った。


 この高校は、私立ということもあり帰国子女や海外からきた生徒もいるため、髪色にはうるさくないが、進学校なのでほとんどの生徒は黒髪だ。


 窓から見える金髪は、どう見ても根元が暗くなるのが見える。


 それが意味するものは、染髪ということだ。


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