ネトゲ廃人に美少女vチュバーは務まらない!~VRMMORPGのβテスト参加で1,000万円獲得~
@29daruma
初対面のJKからの相談
「君のゲームの腕を見込んで頼みたいことがあるんだ。ゲームで私の兄の
「へ?」
目の前に座る女子高生が口にしたのは、随分と重い言葉だった。
もしかすると、からかわれているのかもしれない。
そう思って顔を上げ、彼女の目を見てみれば、長いまつげに縁取られた目は真剣そのもの。
というかこの子。改めて見るとかなり可愛い。
切りそろえられた前髪からのぞく目は大きく、鼻や口は小ぶりでそれぞれの配置が完璧だ。
若干化粧が濃い気はするけれど、整った骨格のお陰なのか、汚らしい感じは全くない。それどころか、背伸びしている感じが可愛らしいとすら思える。
そんな彼女の名前は真宮エリカ。
ロングな焦げ茶色の髪は艶やかで、髪の一部をピンクに染めている。髪色もそうなのだが、着崩した制服と爪に塗られている黒のネイルカラー(?)のせいで遊んでそうな雰囲気がある。
ギャルと表現したらいいんだろうか?
普段俺が話したりすることのないタイプの女だ。
彼女と何故関わることになったかというと、唐突な接触があったからだ。
昨日Twitterに知らない人間からのメッセージが入り、興味を惹かれる内容だったから、ついつい会うことを承諾してしまった。
『バイト代を払うから新作ゲームのテスターを家族の代わりにやってほしい』というふざけた内容だったから、メッセージの相手は男だとばかり思っていた。
しかし待ち合わせ場所に現れたのはこの女。
派手な見た目に驚き、逃げだそうかと思った。
制服から判断するに、近くの高校に通っていそうなので(っていうか、俺の母校だ)、誰かを金で雇うような年齢ではない。
やはり、この女。言葉たくみに俺から金をだまし取ろうとしているんじゃないか?
「私の話、ちゃんと聞いてた? 昨日のメッセージにも書いたけどさ、報酬はちゃんと払うよ」
「聞いてたけど、”
エリカさんは意外にも「それもそうか」と素直に頷き、説明を付け足し始める。
「だいぶ込み入った話になるんだけど、いい?」
「あー、18時から友達とランク回す予定あるから、17時までで」
「分かった。えーとね。ゲーム中にさぁ、私の兄が倒れたんだ」
「ほー」
「すぐに医者に診てもらったのに、全然目覚めなくて、木、金、土……だいたい1週間くらい寝たまま」
「日数アバウトだな。…………エリカさんの兄が寝たままなのって、何かの病気だから?」
「兄を診てくれたお医者さんは、ゲーム中に強いショックを受けて失神したんじゃないかーって言ってた」
「うーん……」
「だとしても、こんなに長く目覚めない状態は異常でしかないらしいね」
「ちょっと待て」
「なになにー?」
それなりに長い話を聞き、俺はちょっとした違和感に気がついた。重要な説明が抜けてはいないか??
「今のエリカさんの話って、俺への依頼に関係ある? どこに”兄の仇をうってほしい”理由があるんだよ?」
「今から話そうとしてたんだって!」
「思ったよりも本題まで長いな……はぁ」
「込み入った話になるって、断りいれたでしょ?」
「分かってるよ。続きどーぞ」
「私さー。倒れた時に兄がやってた配信に、違和感があったんだよ」
「エリカさんの兄はゲーム配信者なんだな」
「そそ。一回これを見てもらおうかな」
エリカさんがバッグの中をごそごそとやっている間、俺は再びコーヒーカップを口に運ぶ。
なんていうか、不思議な子だ。
喋り方はギャルそのものなのに、コミュニケーションが取りやすい気がする。
しかし、……普段母親以外の女と接する機会が殆ど無い俺がそこそこ話せている時点で、何かがおかしい。やっぱりこれは詐欺目的の接触なのか?
俯くエリカさんは俺の疑いに気づくことなく、タブレット端末を取り出す。
それを操作し、俺の方に画面側を向けてくれた。
開かれていたのはTwitch。俺も普段から利用する動画配信サービスアプリだ。
「このチャンネル知ってるよ。それなりに有名な人だよな?」
エリカさんは”マミヤ”というVチューバーのチャンネルページを表示している。
チャンネル登録者数10万人。同接は1,000前後。彼女がよく配信するFPSは、俺も時々観ていたし、”マミヤ”とはそのゲームで数試合マッチしていたりする。
彼女の配信が終わった後にアーカイブを観に行ってみたら、俺をベタ
「マミヤちゃんがどうかしたのか?」
「このマミヤは私の兄なんだ。ボイスチェンジャーで女の子の声に変えてるんだよ」
「はぁ!?」
俺は頭を抱えた。
好意を寄せていたVチューバーが、実はボイチェンで女の声にしていただけの男だったなんて、悪夢みたいじゃないか。
「お、女のガワを被ってたから、中身も女だとばかり思ってた……」
「最近は男が女の子のガワを被ること多くね? ボイチェンで女の子の声に変えてるだけ良心的だって」
「ただ騙されただけにしか思えないんだが……」
(オレの砕け散った恋心はさておき……、”マミヤ”がエリカさんの兄で、しかもヤバイ状況になっているのか)
急に他人事に思えなくなった俺は、コーヒーカップを置き、姿勢を正す。
協力するかどうかは別として、真面目に聞いておきたい。
エリカは”マミヤ”のアーカイブの中から直近の配信を選び、再生する。
するとちょうど、猫耳のキャラクターと青髪ロングのキャラクターが激しいバトルを繰り広げていて、猫耳の方がホワホワなエフェクトを放ったかと思うと、急に画面が暗転した。
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