第14話 オルナス バトルカーニバル
朝、東と通学路で合流する。
取り留めのない会話をしながら、毎朝と同じ道を歩いていく。
「アキト!アキト!」背後から大きな声で名前を呼ばれる。振り返れば美鈴が大きく手を振りながら笑顔で駆け寄ってくる。いつの間にか呼び捨てされるようになってしまったが、正直満更でも無かった。
「おはよう美鈴ちゃん、朝から元気だね」東がいる手前、少し抵抗があったが、軽く片手をあげて挨拶を返す。
「また、ちゃん付けで呼ぶ…」彼女は不服そうな顔をして頬を少し膨らませる。
「美鈴、おはよう」東が前髪を弾きながらポーズを決める。
「南君もおはよう、でも気分悪いから呼び捨てにしないでね」無表情のまま、東の顔も一別もしなかった。
「俺…、先に行くわ…」相当なダメージを受けたらしく東は目頭を赤くして走っていった。やはり、可愛い顔をしたサターンである。
「東…!」俺には彼を癒やす術はなかった。
「アキト、そんな事よりこれを見て!」美鈴が鞄からなにやら紙を取り出した。
「これは!?」紙を受け取った俺は少し目を見開いた。
第二回 オルナス バトルカーニバル開催
「大会があるみたいよ。アキトもチャンピオンなんだから出場するよね」美鈴は目をキラキラと輝かせている。
「えっ!…いや…俺達は…」返答に躊躇する。
「俺達…?」美鈴が少し不思議そうな顔をして見つめる。
(アキト、出よう!)頭の中にギルの声が聞こえる。
(何だよ、急に?)ギルが積極的に参加したいと言うとは予測していなかった。
(見ろ!優勝賞金…!)
「500万円!?」俺は食い入るように見る。
「そうなの、びっくりでしょう!きっと私が物にしてみるわ」美鈴は拳を天高く振り上げた。
(これだけあれば母上様に、少しは楽をさせてあげられるだろう)ギルのテンションが高い。コイツ、俺より親孝行だなと感心する。
「ちょっと、これ出場申し込みの締め切り…」
「そう、今日までよ」なんと急な…。
「じゃあ申し込みしなくちゃ」申し込み方法を確認する。
「大丈夫よ、私とアキトの分申し込んでおいたから!」なぜか出来る女のように光を放っている。
「なんじゃこりゃ!」彼女のスマホを覗き込むと、そこには
「うーん、ギルは私が勝手にリングネーム付けといたわ」なんだか恩着せがましい言いぶりであった。
「ギルで…、ギルガメシュ…、安易な…」俺は頭を抱える。
「いいでしょ!格好いいでしょう!?」
「そうだね…」俺は力尽きたような答えを送り返した。
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