第12話 研究室

「北島博士、研究の成果はどうですか?」高級なスーツを身に纏った紳士が研究室に入ってくる。


「そうじゃのう、やはりギルを超えるオルナスはなかなかおらんよ」頭部の毛が薄く髭を蓄えた老人。北島は度の強そうな眼鏡をかけている。彼は大きなモニターに極端はほど顔を近づけ作業をしながら答えた。


「また、ギルの話ですか。あれは危険な存在だ。計画の障害になる、我々には、あんな高度な自立思考型ヒューマノイドは必要ないのです。」


「だからと言って破壊する必要はないだろう。私の最高傑作を…!」北島はヒステリックに机を叩いた。しかし、視線はモニターに向けられたままであった。


「我々の計画に障害になるものは全て排除しなければならないのです。まさにあのギルというオルナスがそれでした」男は動かないオルナスを掴んで眺めた。


「そう言いながら、自分の子供には自立思考型のオルナスを与えるとは、どういう了見かの」少し吐き捨てるように北島は呟いた。


「あれはギルほど危険なものではありません。ロボット三原則を継承しつつ開発させたAIですよ。我々の命令に逆らわずに作戦を実行します」先ほどのオルナスを机に戻した。


「ふん、原君のチームが作ったオルナスだったな。所詮、ギルの設計を元にした二番目煎じじゃ。ワシのギルには敵わん」言いながらキーボードを叩いて作業を続ける。


「彼らがいうには、博士の作ったオルナスの設計を改良して更に進化させたものだそうですよ」棚に積もったホコリを指で軽く拭き取り、汚れた先を見て少し不愉快そうな顔をした。精密機械があるにしては、掃除が行き届いていないようであった。


「言うだけなら何とでも言えるわい」やはりホコリが凄いのか、ティシュをつまみ取ると勢いよく鼻をかんでから、ゴミ箱に放り投げた。そのゴミ箱は、大量のティシュに埋め尽くされている。


「まあ、自立思考が出来ないオルナスの販売が順調で、我が社の業績は鰻登り、生産が間に合わないくらいですよ」男は嬉しそうにニヤリと微笑む。


「その金をもっと研究費に回して欲しいものじゃ。」北島は男の顔を見ることは一度も無かった。



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