第5話
再度、祖母のうちに到着してね。
ギリギリまで縁側に行きたかったけど、叔父が置いてる車があるし、割れたガラスが散乱しとったから、それ以上は近づけらんなくて。
ここまで、祖母、歩けるかな・・・無理なら、おんぶするしかねぇな・・・
そう思って、また開きづらい縁側から入って。私が移動してる間の余震でまたやられたのか、最初に来た時より、ガラス障子が粉々になってて。
だめだ、もう、靴のまま入ろうって思い直した。
ここの意識って、けっこう小さいようで大きいんだよね。「祖母の家」か「被災した住居」の違いって言うか。
既に「被災住居」の意識になってたんだよね。
靴のまま入って、まずは玄関に向かって、祖母の靴と杖を取ってさ。祖母の寝室に行って、なんとか立ち上がろうとしてる祖母を、置いてあるソファに座らせて、靴を履かせて。
祖母はもう、耳がめちゃくちゃ遠い。常に耳元で大声を出さないと、聞こえないんだよね。以降の会話はもう、あたしが一方的に叫んでるようなもんだよ。
「なんでここで靴履くの?」みたいな顔してる祖母に、「もう、ガラスや破片がすごくて、色々散らかってる。ここは普通に住めないんだよ。あたしんちに避難するんだよ。」って言い聞かせて。
母も父も、何かはしてるんだろうけど見当たらず。
大声で「ばーちゃん、うちに連れてく!先に行くから!」って言うたら、台所の方から母が「おねがいしますー!」って言うたのが聞こえてきた。
玄関に行こうとする祖母に「そっち、開かなくなったからダメだよー!縁側から出るよ!」って言って止めたんね。
少し驚いて「そんな事になってるのか?」って、祖母にボソリと聞かれてさ、「そうだよ」って真顔で答えた。「そうなんだ」って呟かれた。
杖を持たせて、いつも祖母が肌身離さない貴重品が入ったバッグを代わりに持って、ガタガタしてる縁側から出た。祖母はゆっくりしか歩けないから、おんぶしようも思ったけど、なんか嫌がられた。仕方ないからゆっくり歩いて。
ガラスが散乱してる狭い場所を通る時だけ、「足を思いっきり上げて、辛いけど、頼むからそうして、あぶねぇから」って言って、なんとか乗り越えた。
そこを抜ければ、ギリまで近づけた自車。
引いてた手を少し離して、パパっと後部座席のドアを開けてさ、そのまま乗ってもらって。祖母は動きがゆっくりだから、ある程度乗ったら、横から抱き抱えるようにして補助して、もう少し奥に座ってもらう。そうしないと、ドアが閉められないんだよね。
まあ、いつもやってるから、手馴れてますわい。
祖母がちゃんと乗ったのを確認してドアを閉めて、ササっと運転席に小走りで回って乗り込んで。もうなんの感慨もなく、自宅に走らせた。
100mしかないって言っても、直線距離じゃないからね。見通しが悪い細い道を抜けて、一旦公道に出る。出たらすぐに十字路で、信号が1つある。もう慣れてるけど、パニックの時は相当、あぶねぇ場所だろうと思うもんで。
ここで事故ったら誰も助けてくれねぇって思ったからさ。こーゆーときだけ何故か、逆に冷静な頭になって、クソほど慎重になるよね。
とりあえず自宅に着いて、祖母に車から降りてもらう。ここでも手を引いてゆっくりと動くけど、本人は「杖があるから大丈夫だから!」ってなんか意固地になるんやな。
「も~、わかったから~」ってなだめながら、とりあえず家ん中に入ってもらってさ。
まだ片付けきれてない真っ暗な居間に行って、懐中電灯で出らしながら、コタツがある所に座ってもらって。とりあえずiPhoneのライトをまた上向きに点けて、部屋をぼんやり明るくした。
その隣の和室はもう片付けてたから、ちょうど崩れ落ちてきてた布団を引っ張りだして、手早く広げてさ。
祖母がまたボーっとしてきたから、「ばーちゃん、疲れたやろ? ここに寝ていいよ、物とか片付けたから、落ちてこないから、大丈夫なとこやから。」言うてね。でもなんか「あたしはいいから!」って、意固地になるんよな。まあ、いつもの事なんだけどさ。
「ここ安全だから、いてもらった方が安心なんだよ、頼むよ」って言うたら、寝てくれたんで、まあ良かったけどな。
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とりま、ここまで
次回~!
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